本バイオイメージング学会でベストイメージング賞を受賞
株式会社ファンケルは、2024年9月に開催された「第33回日本バイオイメージング学会」(於:東京理科大学葛飾キャンパス)で、「ヒト摘出皮膚組織における表皮真皮境界部のタイムラプスイメージング」をテーマに研究発表を行い、ベストイメージング賞(カールツァイス賞)を受賞しました。
ベストイメージング賞とは、学会参加者による投票により優れた発表として選出された研究者に授与される賞です。
当社では今後も皮膚における種々の不調のメカニズム解明に努め、肌の美と健康を改善する製品の開発を進めてまいります。
受賞研究員 東ヶ崎 健
【チオレドキシンを摘出皮膚に添加し、弾性線維の伸長過程をタイムラプス※3で観察】
独自に開発した摘出皮膚※4の4Dイメージング技術を用い、摘出皮膚を生体に近い状態で保ちながら、皮膚内部の表皮と真皮の境界部を、立体的かつ経時的に観察しました。観察には、細胞内の核や細胞膜を染色すると共に、弾性線維の自家蛍光※5を共焦点レーザー顕微鏡※6を用いて検出しました。
その結果、抗酸化タンパク質として知られる「チオレドキシン」※7を添加した際に、皮膚内部の弾性線維が伸長していく様子を、経時的に捉えることに成功しました(参照:画像/動画)。
青:細胞核 緑:細胞膜 赤:弾性線維
摘出皮膚内で弾性線維が伸長する様子 :
なお、同学会では、線維伸長のほかに、皮膚組織内を細胞が動く様子や、表皮基底膜と真皮がコミュニケーションする様子など、表皮と真皮の境界部における活発な生命現象を捉えた結果も同時に発表しました。
【研究背景】
当社では、加齢による皮膚機能の変化について知るため、皮膚内部を観察する技術を基に研究を進めています。これまでシワやたるみに重要な弾性線維の加齢変化の実態を調べるため、摘出皮膚内部の線維を立体的に観察および解析する技術を開発し†1、弾性線維の加齢変化について調べてきました†2-3,
‡1。また、抗酸化タンパク質として知られる「チオレドキシン」に、弾性線維を伸長させる作用があることも発見しました†4,
‡2。一方、これまでの研究方法では弾性線維を観察する際に組織固定※8をする必要があるため、その形成過程の詳細を知ることはできませんでした。
そこで本研究では、摘出したヒト皮膚の新しい培養方法を考案し、摘出皮膚を生体に近い状態に維持しながら経時観察を可能とする技術を確立しました‡3。さらに、同観察技術を用い、摘出皮膚の表皮と真皮の境界部を観察した結果、「チオレドキシン」を添加した際に、線維が伸長する過程を捉えることに成功しました。
【受賞者コメント】
株式会社ファンケル
総合研究所 基盤技術研究センター 生体機能分析グループ
主任研究員 東ヶ崎 健 (とうがさき たけし)
このたびは日本バイオイメージング学会ベストイメージング賞を賜り、大変光栄に感じております。また選出して下さった先生方、これまでご指導いただきました先生方に深く御礼を申し上げます。
本研究で用いた4Dイメージング技術は、「チオレドキシン」による弾性線維の伸長過程の観察にとどまらず、皮膚内部で生じるさまざまな現象を観察し、さまざまな肌不調の原因のメカニズム解明につなぐことができると考えています。
本受賞を励みに、将来の美と健康につながる研究開発を推進してまいります。
【用語説明】
※1 弾性線維/皮膚真皮に存在し、肌の弾力を保つのに働く線維。
※2 4Dイメージング技術/対象物を立体的(3D)に加え、動的な変化を観察するための技術。
※3 タイムラプス/一定間隔で撮影した静止画をつなぎあわせる動画。皮膚内部構造の経時的な変化を観察することができる。
※4
摘出皮膚/切除されたヒトの皮膚。本研究では、美容整形などで切除された余剰皮膚を使用。また、試験実施にあたっては、ヘルシンキ宣言を遵守し、倫理的配慮のもと入手した皮膚組織を用いて行っています。
※5
自家蛍光/弾性線維は、光を浴びた(吸収した)際に、そのエネルギーを発散するために光る性質(蛍光)を持っています。そのため、本研究では、弾性線維を染色せず、線維が自然に発する光を検出して観察しました。
※6 共焦点レーザー顕微鏡/被写体を立体的に観察することができる光学顕微鏡。
※7 チオレドキシン/植物や動物の生体内に幅広く存在し、抗酸化能を有して生体の防御機能に関わる重要なタンパク質。
※8 組織固定/生体試料の構造を観察するために生命現象を停止させる処理。
<引用文献>
†1. Tohgasaki T et al. Skin Health and Disease. 2021:e58.
†2. Tohgasaki T et al. J Histochem Cytochem. 2022;70(11-12):751-7.
†3. Kondo S et al. J Cosmet Dermatol. 2022;21(10):4796-804.
†4. Tohgasaki T et al. Int J Cosmet Sci. 2024. Apr 29
<関連するニュースリリース>
‡1 ニュースリリース「皮膚の透明化技術を応用して弾性線維の立体構造を解析」
https://www.fancl.jp/laboratory/pdf/20170519_hadanodanryokuiji.pdf
‡2 ニュースリリース「チオレドキシン」が皮膚内部の線維構造を改善することを発見
https://www.fancl.jp/news/pdf/20200624_chioredokishin.pdf
‡3 ニュースリリース「摘出皮膚の長期培養技術と立体的かつ動的な変化の観察(4Dイメージング)に成功」
https://www.fancl.jp/news/20240049/pdf/202406274dimejing.pdf
<研究開発ストーリー>
https://www.fancl.jp/laboratory/rdstory/beauty-10/index.html
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