アストラゼネカのリムパーザ、BRCA遺伝子変異陽性HER2陰性高リスクの早期乳がん患者さんの術後薬物療法として、米国において優先審査に指定される
術後薬物療法として臨床的ベネフィットを示した、BRCA遺伝子変異を標的とする最初の薬剤
本資料はアストラゼネカ英国本社が2021年11月30日に発信したプレスリリースを日本語に翻訳し、 みなさまのご参考に提供するものです。
本資料の正式言語は英語であり、 その内容・解釈については英語が優先します。
アストラゼネカ(本社:英国ケンブリッジ、 最高経営責任者(CEO):パスカル・ソリオ[Pascal Soriot])は、 米国において、
リムパーザ(R)(一般名:オラパリブ、 以下、 リムパーザ)の一部変更承認申請(sNDA)が受理され、 優先審査に指定されたと発表しました。 対象は、
術前または術後のいずれかに化学療法歴のあるBRCA
遺伝子変異陽性かつヒト上皮成長因子受容体2(HER2)陰性の高リスク早期乳がんの患者さんに対する術後薬物療法です。
FDA(米国食品医薬品局)による優先審査は、 安全性または有効性の改善、 重篤な症状の予防、 患者コンプライアンスの向上によって、
現在使用が可能な治療選択肢よりも著しい有用性をもたらす医薬品に付与されます(1)。
処方箋医薬品ユーザーフィー法(PDUFA)に基づくFDAが目標とする審査の判断期日は、 2022年第1四半期中です。
現在、 乳がんは世界中で最も多く診断されているがんであり、 2020年には、 推定230万人が乳がんと診断されました(2)。 全乳がんのうち、
91%近くが早期に診断され、 乳がん患者さんの約5%にBRCA遺伝子変異が認められたとの報告があります(3-5)。
本sNDAは、 2021年米国臨床腫瘍学会年次総会で発表され、 同時にThe New England Journal of Medicine(
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2105215)誌に掲載された第III相OlympiA試験の結果(
https://www.astrazeneca.co.jp/content/az-jp/media/press-releases1/2021/2021061001.html
)に基づいています。
OlympiA試験において、 リムパーザは、 浸潤性乳がんの再発、 二次がんまたは死亡のリスクを、 プラセボと比較して42%低下させ(ハザード比[HR]=
0.58、 99.5% 信頼区間[CI] 0.41~0.82、 p<0.0001)、
統計学的に有意かつ臨床的に意義のある浸潤性疾患のない生存期間(iDFS)の延長を示しました。 この試験におけるリムパーザの安全性および忍容性プロファイルは、
過去の臨床試験のプロファイルと一致していました。
リムパーザは、 第III相OlympiAD試験結果に基づき、 化学療法歴のある生殖細胞系列BRCA
遺伝子変異陽性かつHER2陰性の転移性乳がん患者さんに対する治療薬として、 米国、 EU、 日本およびその他数カ国で承認されています。
※BRCA遺伝子変異陽性乳がんにおける術後薬物療法に対するリムパーザの適応は、 本邦では未承認です。
以上
*****
早期乳がんについて
早期乳がんは、 局所リンパ節転移の有無にかかわらず乳房に限局し、 遠隔転移性疾患がない疾患として定義されます(6)。 5年生存率は、
限局性乳がん(乳房領域のみに認められるがん)で99%、 局所乳がん(乳房から、 隣接する組織やリンパ節に広がったがん)で86%です(3)。
早期乳がん治療の進歩にもかかわらず、BRCA遺伝子変異陽性などハイリスクの臨床的および/または病理学的特徴を有する患者さんの最大30%が、
数年以内に再発します(7,8)。
乳がんは生物学的に最も多様な腫瘍タイプの1つであり、 その発症と進行の背景には、 様々な因子が存在します(9)。 乳がんの発症におけるバイオマーカーの発見は、
この疾患の科学的な理解に大きな影響を及ぼしています(10)。
OlympiA試験について
OlympiA試験は、 生殖細胞系列BRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性の高リスク早期乳がんで、
根治的な局所治療および術前または術後補助化学療法を完了した患者さんを対象に、
術後薬物療法として投与したときのリムパーザの有効性および安全性をプラセボと比較検討する、 二重盲検、 プラセボ対照、 多施設共同第III相試験です(11)。
本試験の主要評価項目は浸潤性疾患のない生存期間(iDFS)であり、 無作為化から最初の局所領域再発、 遠隔再発、 新規がん発現、
または死因を問わない死亡までの期間と定義しています(11)。
第III相OlympiA試験は、 Breast International Group(BIG)がFrontier Science & Technology
Research Foundation(FSTRF)、 NRG Oncology、 アストラゼネカ及びMSDと提携し、 主導しています(11)。
BRCA遺伝子変異について
BRCA1およびBRCA2(乳がん感受性遺伝子1/2)は、 損傷したDNAの修復を担うタンパクを生成する遺伝子であり、
細胞の安定性維持に重要な役割を果たします(11)。 これら遺伝子のいずれかに変異があるとBRCAタンパクが生成されない、 または正常に機能せず、
DNA損傷が適切に修復されず細胞が不安定になる可能性があります。 その結果、 細胞はがん化につながるさらなる遺伝子異常を起こす可能性が高くなり、
リムパーザを含むPARP阻害剤への感受性を高めます(12-15)。
リムパーザについて
リムパーザ(一般名:オラパリブ)はファーストインクラスのPARP阻害剤であり、BRCA1および/またはBRCA
2遺伝子変異などの相同組換え修復(HRR)の欠損を有する細胞または腫瘍のDNA損傷応答(DDR)を阻害する標的治療薬です。
リムパーザによるPARP阻害は、 DNA一本鎖切断に結合するPARPと結合し、 複製フォーク停止と崩壊を惹起することで、
DNA二本鎖切断を起こしがん細胞を死滅させます。 リムパーザはDDR経路に異常をきたした一連のPARP依存性の腫瘍タイプにおいて試験が進行中です。
リムパーザは、 白金製剤感受性再発卵巣がんの維持療法として、 現在EU諸国を含む多くの国で承認されており、 白金製剤ベースの化学療法に奏効後のBRCA
遺伝子変異陽性進行卵巣がんの初回治療後の維持療法としても米国、 EU、 日本、 中国およびその他数カ国において承認されています。
米国、 EUおよび日本においては、 相同組換え修復欠損を有する(BRCA
遺伝子変異陽性および/またはゲノム不安定性)患者さんに対するベバシズマブとの併用療法が初回治療後の維持療法としても承認されました。
また、 化学療法による治療歴のある生殖細胞系列BRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性の転移性乳がんの適応症でも米国、
日本を含む複数の国々において承認されています。
さらに、 米国、 EU、 日本、 およびその他数カ国においては、 生殖細胞系列BRCA遺伝子変異陽性転移性膵がんの治療薬としても承認されています。
また、 米国においては、 HRR関連遺伝子変異を有する転移性去勢抵抗性前立腺がん(BRCA
遺伝子変異陽性およびその他のHRR関連遺伝子変異陽性)の治療薬として承認されており、 EUおよび日本においてはBRCA
遺伝子変異陽性転移性去勢抵抗性前立腺がんに対して承認されています。
加えて、 卵巣がん、 乳がん、 膵がんおよび前立腺がんに関する薬事承認審査が他の国において進行中です。
アストラゼネカとMSDが共同で開発と商業化を行っているリムパーザは、 全世界で4万人を超える患者さんの治療に使用されています。
リムパーザはPARP阻害剤として最も広範かつ最先端の臨床試験開発プログラムを有しており、 アストラゼネカとMSDは、 さまざまながん種にわたり、
リムパーザが単剤療法および他の薬剤との併用療法としてPARP依存性腫瘍に及ぼす影響を解明するために協業しています。
リムパーザはDDRを標的治療とした薬剤であり、 アストラゼネカのポートフォリオを牽引する基盤となる薬剤です。
なお、 本リリースに記載の効能・効果(適応症)については本邦で承認されている記載と異なる場合があります。 本邦における承認状況については、 こちら(
https://www.astrazeneca.co.jp/media/press-releases1/2020/2020122802.html
)をご確認ください。
アストラゼネカとMSDのがん領域における戦略的提携について
2017年7月、 英国アストラゼネカ社とMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J.,
U.S.A(北米およびカナダ以外ではMSD)は、 世界初のPARP阻害薬であるリムパーザおよび現在開発中であるMEK阻害剤セルメチニブについて、
複数のがん種において共同開発・商業化するがん領域における世界的な戦略的提携を発表しました。
両社は、 リムパーザおよびセルメチニブを他の可能性のある新薬との併用療法および単剤療法として共同開発します。 なお、 リムパーザおよびセルメチニブと、
各々の会社が保有するPD-L1またはPD-1阻害薬との併用療法は各々の会社で開発します。
アストラゼネカにおける乳がん領域について
アストラゼネカは、 乳がんの生物学的な理解が深まってきていることから、 より効果的な治療を患者さんに提供するべく、
乳がんの分類や治療に対する現在の臨床的パラダイムへの挑戦、 再定義を始めており、 乳がんによる死亡をなくすことを目標に掲げています。
アストラゼネカは、 生物学的に多様な乳がんの腫瘍環境に対応するべく、
異なる作用機序の既承認および開発中の有望な化合物からなる包括的なポートフォリオを有しています。
アストラゼネカは、 フェソロデックス(フルベストラント)およびゾラデックス(ゴセレリン)、
ならびに次世代の選択的エストロゲン受容体ダウンレギュレーター(SERD)および新薬候補のcamizestrant(AZD9833)によって、
HR陽性乳がんの転帰を継続的に変革することを目指しています。
リムパーザ(オラパリブ)は、BRCA遺伝子変異を有する転移性乳がん患者さんに対する標的治療薬です。 アストラゼネカとMSDは、BRCA
遺伝子変異を有する早期転移性乳がんの患者さんにおけるリムパーザの研究を継続しています。
悪性度の高い乳がんであるトリプルネガティブ乳がん患者さんに必要な治療選択肢を提供するために、
アストラゼネカは免疫療法のイミフィンジ(デュルバルマブ[遺伝子組換え])と、 リムパーザおよびエンハーツを含む他のがん治療薬との併用試験を行い、
化学療法との併用でAKTキナーゼ阻害薬であるcapivasertibの可能性を評価しています。 また、
第一三共と共同でTROP2指向性ADCであるdatopotamab deruxtecanの可能性を探索しています。
アストラゼネカにおけるオンコロジー領域について
アストラゼネカは、 あらゆる種類のがんに対して治療法を提供するという高い目標を掲げ、 がんとその発見にいたるまでの複雑さを科学に基づいて理解し、
患者さんの人生を変革する医薬品の開発および提供を通じて、 オンコロジー領域の変革をけん引していきます。
アストラゼネカは治療困難ながん種に注力しています。 当社は持続的なイノベーションにより、 医療活動および患者さんの医療経験を一変させる可能性のある、
製薬業界でもっとも多様なポートフォリオと開発パイプラインを構築しています。
アストラゼネカはがん治療のパラダイムを再定義し、 将来的にはがんによる死亡をなくすことをビジョンに掲げています。
アストラゼネカについて
アストラゼネカは、 サイエンス志向のグローバルなバイオ・医薬品企業であり、 主にオンコロジー、 希少疾患、 循環器・腎・代謝疾患、
呼吸器・免疫疾患からなるバイオ・医薬品において、 医療用医薬品の創薬、 開発、 製造およびマーケティング・営業活動に従事しています。
英国ケンブリッジを本拠地として、 当社は100カ国以上で事業を展開しており、 その革新的な医薬品は世界中で多くの患者さんに使用されています。 詳細については
http://www.astrazeneca.comまたは、 ツイッター@AstraZeneca(
https://twitter.com/AstraZeneca
)(英語のみ)をフォローしてご覧ください。
References
1. US Food and Drug Administration. Priority Review. Available at:
. Accessed November 2021.
2. GLOBOCAN. Breast Cancer. Available at
https://gco.iarc.fr/today/data/factsheets/cancers/20-Breast-fact-sheet.pdf.
Accessed November 2021.
3. Cancer.org. Survival rates for breast cancer. Available at
. Accessed November 2021.
4. De Talhouet S, et al. Clinical outcome of breast cancer in carriers of BRCA1
and BRCA2 mutations according to molecular subtypes. Scientific Reports.
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5. Cancer.gov. Early-stage breast cancer. Available at
https://www.cancer.gov/publications/dictionaries/cancer-terms/def/early-stage-breast-cancer
. Accessed November 2021.
6. WHO. Early stage breast cancer. Available at
https://www.who.int/selection_medicines/committees/expert/20/applications/EarlyStageBreast.pdf?ua=1
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7. Johnston S, et al. Abemaciclib Combined With Endocrine Therapy for the
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8. Smith KL, Isaacs C. BRCA mutation testing in determining breast cancer
therapy. Cancer J. 2011;17(6):492-499. doi:10.1097/PPO.0b013e318238f579
9. Yersal O, and Barutca S. Biological Subtypes of Breast Cancer: Prognostic and
therapeutic implications. World J Clin Oncol. 2014;5(3):412-424
10. Rivenbark A, et al. Molecular and Cellular Heterogeneity in Breast Cancer:
Challenges for Personalized Medicine. Am J Pathol. 2013;183(4):1113-1124.
11. ClinicalTrials.gov. Olaparib as Adjuvant Treatment in Patients with Germline
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at
https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT02032823. Accessed November 2021.
12. Roy R, et al. BRCA1 and BRCA2: Different Roles in a Common Pathway of Genome
Protection. Nat Rev Cancer. 12(1):68-78.
13. Wu J, et al. The Role of BRCA1 in DNA Damage Response. Protein Cell.
2010;1(2):117-123.
14. Gorodetska I, et al. BRCA Genes: The Role in Genome Stability, Cancer
Stemness and Therapy Resistance. J Cancer. 2019;10(9):2109-2127.
15. Li H, et al. PARP Inhibitor Resistance: The Underlying Mechanisms and
Clinical Implications. Mol Cancer. 2020;19:107.
プレスリリースは以下よりダウンロードできます。
https://prtimes.jp/a/?f=c-24308-2021120713-6cba89a13340c3752bf95d6ff343020f.pdf
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