「困った」は「つくっちゃおう」のはじまり。障がいのある人もそうでない人も、みんなが心地よい居場所や働く場を「協同労働」で地域に生み出す。
ブラウザで見る [] []
労働者協同組合ワーカーズコープ・センター事業団 プレスリリース:2024年12月05日 報道関係者各位
「困った」は「つくっちゃおう」のはじまり。障がいのある人もそうでない人も、みんなが心地よい居場所や働く場を「協同労働」で地域に生み出す。
障がいのある子ども・人々の力を地域に生かし、誰もが幸せに暮らし続けるための取り組み ―岩手県遠野市の奮闘記―
遠野地域福祉事業所「わの里」
12月9日は障害者の日。「障害者の権利宣言」が国連総会で採択(1975年)されたことにちなんで設けられました。今では多様な個性を尊重する時代となりましたが、現実はまだまだ充分ではありません。
1980年代から障がい者の福祉と就労に取り組んできた労働者協同組合ワーカーズコープ・センター事業団では、地域の課題を解決するべく全国各地で障害者福祉・障害者就労事業に取り組んできました。今回は、岩手県遠野市にある遠野地域福祉事業所で立ち上げた放課後等デイサービス、障害者就労継続支援事業を通じて、自分たちの力で地域に根付いて課題を解決するチャレンジをご紹介します。
労働者協同組合ワーカーズコープ・センター事業団の障害者福祉事業の歩み遠野地域福祉事業所が属する労働者協同組合ワーカーズコープ・センター事業団(以下
ワーカーズコープ)は、1980年代から、清掃・物流などの分野で障がいのある仲間たちと助け合って仕事をしていました。やがて障がいのみならず様々な事情を抱えて就労が困難な方たちを迎えながら、全国での事業を広げていきました。
事業としての障害者福祉へのかかわりは、2003年、東京都立の養護学校と一緒に知的障害者の就労を促進する目的で「3級ヘルパー講座」を開講したことが始まりです。先生と保護者とともに企画し、毎週土曜、子どもと保護者と先生が一緒に学ぶ手作りの講座でした。しかし、講座修了生が一般の組織に就労したあとうまくいかないことも多く、様々な個性を認めあいながら働くことができる職場を独自につくる必要性を痛感。
講座運営にかかわったスタッフ、受講生らが話し合いを重ね、2007年に障害者自立支援法(現障害者総合支援法)の就労継続支援A型事業所として「自立支援センターまめの樹」をセンター事業団の事業所として立ち上げました。その後も同じような課題を感じる仲間が全国で生まれ、宮城県仙台市(ピアサポートセンターそら)などの事業所が立ち上がっています。
障がいのある子どもたちとその家族のための事業「放課後等デイサービス」については、2005年に栃木県那須塩原市・大田原市でワーカーズコープが開講したヘルパー養成講座を受講した人たちが、講座の実習中に障がい児の受け入れ先が地域にないことを知り、事業所を開設したことがはじまり(ひのきお・にじ)。その後、山口県下関市(きしゃぽっぽ)など、全国に続々と取り組みが広がっていきました。
3級ヘルパー講座の様子
きしゃぽっぽ開所式
「地域になければ自分たちでつくっちゃおう!」
障害者福祉の地域格差を、行動力とアイデアで解決 ―岩手県遠野市の奮闘記―
岩手県遠野市では、障がいのある子どもたちと家族、障がいのある人たちが適切な支援が受けられないでいました。地域には児童館はあっても放課後等デイサービスがなく、障がいのある子どもたちと家族は隣町の事業所まで通所しなければなりませんでした。そのうえ、障がいのある人たちが働く場所の選択肢も限られ、楽しく働けない、家族や仲間で集まれる場所がない、グレーゾーンといわれる人たちの居場所がない…。「ないないづくしを我慢するのはもう無理!」「ないなら自分たちでつくっちゃおう!」と当事者たちが立ち上がりました。
事業所ができる以前は、障がいのある子どもたちの保護者が結成した自助グループ「いっぽいっぽの会」で、保護者らが協力して長期休みの居場所活動などに取り組んでいました。当時、岩手県内ではワーカーズコープが5カ所で放課後等デイサービス事業(就学児~18歳)、児童発達支援事業(未就学児)を行っていましたが、ワーカーズコープが開所した事業所の開所式の新聞記事をみた「いっぽいっぽの会」のメンバーが、遠野市にも事業所をつくれないかと相談に訪れたことが事業所開設にすすむきっかけです。その後、何度も意見交換を重ねたり、ワーカーズコープの研修会にも会のメンバーが参加したりして互いに理解と親睦を深めていきました。
事業所がある遠野の風景
古い家屋も大切に維持されています
放課後等デイサービス「ぐんぐんはうす」「こむこむはうす」を設立
2018年7月、遠野市内で1カ所目の放課後等デイサービスとなる「ぐんぐんはうす」が開所。当初から2カ所が必要だと目論んでいましたが、まずは1カ所目を立ち上げ、その手応えと子どもたちの姿でその必要性を再認識し、急ぎ同年12月、2カ所目となる「こむこむはうす」を立ち上げました。事業所の立ち上げ資金(寄付や協力債)は地域につのり、その年の12月までに110人からご協力をいただきました。
「ぐんぐんはうす」「こむこむはうす」ではどちらも毎日5~10人前後の子どもたちが利用しています。遠野市では、「子育てするなら遠野」とのスローガンを掲げ、放課後の児童館利用の保護者負担を無料にしてきました。そこで、2つの放課後等デイサービスに市としても全面的に協力し、保護者負担を無料にしていただけました。
ハロウィンは地域とともに(ぐんぐんはうす)
事業所の前でかけっこ(こむこむはうす)
ワーカーズコープと共に、自分たちらしく、この地域ならではの事業所を模索
放課後等デイサービスの開所後も、「遠野にはどんな場所があればいいだろう?」と「いっぽいっぽの会」での議論が続きます。「みんなが『和』やかに笑顔でいられる場所!」「いっぱい『話』をして元気に!」「一人じゃない。人と人の『輪』を生む場所」、そんな思いを込めて「和・話・輪
構想」と名付けられた計画は、「誰もがしあわせを感じて活き活きと働ける居場所づくり」「古民家と周囲の自然環境・資源を活かせる就労場所を」「誰もが気軽に入れる、就労支援事業としての古民家カフェを営業したい」など、少しずつ具現化していきました。
障がいのある人も楽しく活き活き働ける、就労継続支援B型事業所「わの里」を開設
3つ目のチャレンジは、障がいのある人たちが安心して働ける就労の場づくりです。管理責任者の資格取得や場所の確保などについて検討を重ねながら、地域住民への説明と資金集めなどへの協力をお願いに回りました。
農福連携を打診した「地元の素敵な農業をする集団」宮守川上流生産組合からは、「現場の手が足りない。こちらが助けてもらいたい」と協力を快諾いただきました。地域の方々からは「詳しく話を聞かせてほしい」「地域の活性化につながる」と温かい賛同が寄せられ、カフェの話題では「お弁当が楽しみ」「カフェができたら絶対行く。カレー頼むよ」「よそから来た人ではなく地元の人たちが頑張ってくれることが、俺たち高齢者は嬉しい」など、期待に満ちた温かい言葉をかけられました。
努力の甲斐あって立ち上げ資金も集まり、2022年7月「就労継続支援B型事業所
わの里」がスタート。障がいがある人の就労継続支援B型事業や相談支援事業などを始めました。就労継続支援B型事業では、地元の農業法人からの業務委託(農福連携)をはじめ、敷地内での農作業、「カフェワノサト」での接客、スイーツ作りの補助など、障がいのある人たちが活き活きと働くことができる場を提供しています。
開所式は地域の協力者の皆さんと
カフェからの風景
トマトの収穫作業
それぞれの生き方、さまざまな仕事。地域と共に、地域と生きる。
「わの里」の事業所は立ち上げスタッフの実家をリノベーションして活用。事務所兼作業場でもある築50年の納屋は、地域の人たちもボランティアで改装に参加してくれました。
働き始めた利用者とその家族からは「仕事に対する意識が向上し、充実して過ごしている」「楽しい、行きたい」「毎日リズムのある生活ができ、家族の会話も弾むようになった」など嬉しい声が寄せられています。今後は、生活能力の向上をサポートする自立(生活)訓練の開設も検討しています。
仕事だけでなく、地域の方々も参加する「わの里マルシェ」などのイベントも開催。さらなる地域連携に向けて、誰もが気軽に集える古民家カフェを活用したレンタルスペースとしての活用や、地域の高齢者の皆様が集える場所づくりなど、さまざまな活用方法を検討中です。
わの里の外観
わの里マルシェ
障がいのある子どもたちや家族が集う場所がある、障がいのある人が働く場がある、それは地域と地域の人たちとつながり、心地よい自分たちの居場所をもつということ。就労することで収入を得ることは生きる喜びにもつながります。そうして地域にあふれていく活気は障がいの有無に関わらず、地域で暮らす人たちみんなの元気と喜びにつながっています。
労働者協同組合ワーカーズコープ・センター事業団では、これからもどんどん全国に障がいのある人と家族が活き活きと過ごせる場所を、地域の方々と共につくっていきます。
参考資料•自立支援センターまめの樹(東京都豊島区)
事業所ホームページ
ピアサポートセンターそら(宮城県仙台市)
SNS
https://www.facebook.com/piasora4961•
遠野地域福祉事業所 わの里(岩手県遠野市)
SNS わの里
https://www.instagram.com/wanosato.0701/
SNS カフェ専用https://www.instagram.com/cafe_wanosato/
労働者協同組合ワーカーズコープ・センター事業団 概要設立2001年9月代表代表理事 平本哲男所在地東京都豊島区東池袋1丁目44-3 池袋ISPタマビル7階
事業内容1 保健、医療又は福祉の増進を図る活動
2 まちづくりの推進を図る活動
3 子どもの健全教育を図る活動
4 前各号に掲げる活動を行う団体の運営又は活動に関する連絡、助言又は援助の活動ホームページ
https://workers-coop.com労働者協同組合法について(2020年12月成立、2022年10月施行)
労働者協同組合(ワーカーズコープ)にはこれまで農協・生協・漁協のような法人格がなく、「協同労働」の法制化をめざす動きが1998年から始まりました。協同労働の実践を全国で広げ、団体署名や意見書の採択に取り組む中で、与野党全会派一致で法制化が実現しました。
協同労働とは「協同の関係」で働くこと。働く人が自ら出資して組合員となり、話し合って事業を行う働き方です。企業組合やNPO法人と違い認可認証が不要で、NPO法人のように活動分野の規定もなく3人以上で設立ができます(NPO法人は10人以上、出資不可)。
法律では、出資額に関係なく「一人一票」の権利が認められています。「一人ひとりが出資して組合員となり、意見反映を通じて運営に参加し、自ら事業に従事する」、これが労働者協同組合の基本原理です。この法律を活用し、協同労働が社会を変えていく推進力となることを目指します。
当リリースの詳細について
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000146896.html
※このメールは自動送信されていますので、返信はご遠慮ください。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません