ーン・パスリー著、小宮由訳『黒い蜻蛉――小説 小泉八雲――』出版記念 読書会&サイン会を開催

読書会&サイン会を開催 式会社佼成出版社(本社:東京都杉並区)は、『黒い蜻蛉――小説

小泉八雲――』(2024年)の刊行を記念して、9月28日、ジーン・パスリーさん、小宮由さんによる読書会とサイン会を開催しました。

佼成出版社にて、読書会の様子

本書は、小泉八雲の生涯をえがいた唯一の邦訳小説であり、史実にフィクションを織りまぜることで、ひとりの人間としての小泉八雲像を浮き彫りにした作品です。2021年に発刊されたジーン・パスリー著

Black Dragonflyを、当社では小泉八雲没後120年を期して、今年8月末に邦訳『黒い蜻蛉――小説 小泉八雲――』として刊行しました。

ジーン・パスリーさん(左)、田波舞さん(通訳)「八雲は、トンボになりたかったのではないかと思った」ジーン・パスリーさん

「様々な生き物がいる中、日本を〈トンボの島〉と表現し、タイトルをつけた思いを教えてください」という参加者からの質問に対して、パスリーさんは、「日本人はトンボが好きだということを、私は以前から知っていました。トンボは暗い水の中で卵からかえって、そこでしばらく過ごす。やがて羽化のために水面からでて、空を飛んでいく。暗い世界を抜け出して羽ばたいていくトンボは、小泉八雲の人生そのものだと思う。なので、タイトルを『黒い蜻蛉』にしました。また、トンボは複眼で、たくさんのものを見渡すことができる。自然を愛した八雲は、たくさんの目をもつトンボになりたかったのではないかと思います」と答え、小泉八雲への見解とタイトルに込めた思いを語りました。

「八雲を少しでも理解してもらえるように」ジーン・パスリーさん

また、参加者の、「正直に言うと、八雲のことが好きになれなかった。でも、読み進めていくうちに、彼のことが少しずつ理解できた」という感想に対して、パスリーさんは、「あなたの感想に、とても興味深いところがありました。特に、『八雲のことが好きになれなかった』という部分です。実のところ、作品を作り上げた当初、この本にプロローグがなかったのです。でも、プロローグのなかった

Black Dragonfly

を友達に読んでもらうと、その人もあなたと同じで、『八雲のことが好きになれない』と言っていました。私は、本を最後まで読んでもらうには、主人公を好きになってもらうことが大切だと考えています。そのため、八雲の人格が形成された経緯をえがくことで、彼を少しでも理解してもらえるように、プロローグを入れたのです」と述べ、創作の経緯と作品を読んでもらうための工夫

を話しました。

小宮由さん「〈蜻蛉〉は、小泉八雲の象徴」小宮由さん

「本文中では、〈トンボ〉と表記されていたのに対して、タイトルは〈蜻蛉〉と書かれている。これには、どういった意図を込められたのですか」という参加者からの質問を受け、小宮さんは、「ふつうの〈トンボ〉と、八雲の〈蜻蛉〉を分けて表現したかった。だから、本書では〈トンボ〉は生物としての表現とし、漢字の〈蜻蛉〉は、小泉八雲の象徴として表しました」と述べ、訳者として、タイトルに込めた意図を話しました。

「セツのような女性になれないからといって、苦しむことはない」小宮由さん

「八雲の妻・セツの姿が、理想的に思いました。セツは良妻賢母で、夫に尽くせる女性です。それが女性の魅力だとも感じる反面、私はそうなれない。その葛藤が少し苦しくも感じます」との参加者の感想に対して、小宮さんは、「八雲に尽くすセツの姿は、私としても思うところはありました。でも、それであなたが苦しく感じる必要はありません。なぜなら、セツのような女性像は、昔だったからこそ成立したものだからです。それと同じく、今の男性も、昔の男性とでは大きく違うところがあります。それは〈覚悟〉です。

昔の男性は、命をかけて家庭や地域を守り、一切の責任を負うという覚悟があった。それこそ、腹を切るほどに。だから、女性は覚悟をもった男性を信じて尽くすことができたし、『女性は男性を立てる』という価値観も存在し得た。つまり、覚悟をもった男性と、その男性に尽くす女性は相互関係にあったのだと思います。だけど、今はそういう時代ではなく、〈覚悟〉をもつ男性は少なくなったから、相互関係が成り立たなくなった。なので、セツのような女性になれないからといって、苦しむことはない。ましてや、その葛藤は女性だけが抱える問題ではないと、私は思います」と、作中と現代のジェンダー観を比較し、イベント参加者の悩みに答えました。

読書会の終盤、小宮さんは、「みなさんと内容の濃いお話しができて、良かった。『黒い蜻蛉』はまだ発刊されて一ヶ月ほどですが、こうして読者の方と直接触れ合うことができてうれしい。貴重な体験になりました」と参加者への感謝を述べました。また、パスリーさんは、「小泉八雲の伝記はたくさんあるけど、より多くの人に知ってほしいから、『黒い蜻蛉』はフィクションとしてえがいた。小泉八雲を知らない人でも、いきいきと読んでもらうことが私のミッションだった」と話し、続けて「楽しく読んでいただければとてもうれしい

」と日本語で、読者への思いを語りました。その後のサイン会では、読書会では伝えきれなかった感想を述べ合うなど、穏やかな空気が流れるイベントとなりました。

サイン会の様子【書籍情報】書名:『黒い蜻蛉──小説 小泉八雲──』著者:ジーン・パスリー翻訳:小宮由発行:佼成出版社発売日:2024年8月30日

ページ数:344ページ定価:2,750円(税込)内容紹介:Black Dragonfly

が待望の邦訳刊行。出生にコンプレックスをもっていたラフカディオ・ハーンが最後の地に決めたのは、日本だった。なにが彼を引きつけ、のちに『怪談』をうみだす小泉八雲となったのだろうか?

その真髄に迫った空想的伝記小説。

【特設サイト】

https://special.chieumi.com/029259

【著者プロフィル】

ジーン・パスリー脚本家。ニューヨーク大学ティッシュ芸術学部で映画制作を学び、日本語の学士号と映画学の修士号を取得。脚本の代表作に、小説家メイヴ・ビンチーの短編

How About You や、2020年、コーク国際映画祭で観客賞を受賞した共同脚本の The Bright Side

があり、2021年、自身が監督・脚本を務めた短編映画 Ship of Souls

精霊船は、アイルランド映画テレビ賞にノミネートされた。また、アイルランド放送協会のラジオ番組にもレギュラーで出演している。長年日本で暮らしていたが、現在はアイルランドのダブリンで、ラフカディオ・ハーンが幼少期に暮らしていた家の近くに住んでいる。本書が初の小説作品。

【訳者プロフィル】小宮由(こみや・ゆう)

翻訳家。東京都生まれ。出版社勤務や留学を経て、主に子どもの本の翻訳に携わる。2004年より東京・阿佐ヶ谷で家庭文庫「このあの文庫」を主宰。訳書に『さかさ町』『けんかのたね』(以上、岩波書店)『イワンの馬鹿』『キプリング童話集』『くるみ割り人形』(以上、アノニマ・スタジオ)など多数。祖父は、トルストイ文学の翻訳家、良心的兵役拒否者である故・北御門二郎。

【会社概要】株式会社佼成出版社TEL:03-5385-2311(代表)/FAX:03-5385-2395(代表)〒166-8535 東京都杉並区和田2丁目7−1

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