文春新書『なぜ日本は原発を止められないのか?』が第3回脱原発文学大賞を受賞!
社長:飯窪成幸)から刊行された、文春新書『なぜ日本は原発を止められないのか?』(青木美希著)が、第3回「脱原発社会をめざす文学者の会文学大賞」
のノンフィクション部門を受賞しました。
『なぜ日本は原発を止められないのか?』(文春新書)
同賞は、2021年3月、福島第一原発事故発生から10年という節目に、脱原発社会をめざす文学者の会(初代代表・加賀乙彦氏、現共同代表・川村湊、村上政彦、森詠の三氏)が創設し、核災(原発事故)や原水爆被災をはじめとする、核兵器や核エネルギーに関する諸問題をテーマにした文学、ノンフィクションの二部門の作品を対象に授与するものです。
9月27日には、日本文藝家協会(文藝春秋ビル新館)で青木美希さんのトークイベントが開かれ、表彰状と記念品の贈呈が行われます。取材可。詳細は、事務局にお問い合わせください。
事務局長・村上政彦氏:070-5373-1468■青木美希さんの受賞コメント地震が多い日本に、原発がなぜあるのか――?
私は電力会社に勤めた祖父と、大学教授としてエネルギー研究を続けた父のもとで育ち、幼いころから父の研究室に出入りする中、ずっとこう疑問に思ってきました。
自宅で購読していた朝日新聞は記事で原発の安全性を万全にするように指摘しているものの反対しているようには見えず、さらに原子力のコラム広告も連載していました。一方で、地元の原発反対デモに関する記事はほとんどありませんでした。こうした原発キャンペーンを目の当たりにして、私の疑問はさらに大きくなったことをよく覚えています。
私はこの問いを解くために、大学時代から30年かけてライフワークとして原発推進の背景について調べ続けてきました。その結果、浮かび上がったことは、政官業学メディアが作り上げた「原子力ムラ」という既得権益集団の存在です。本書は、関係者一人ひとりに取材を重ね、その既得権益の実態を明らかにしようとしたものです。
刊行にあたっては紆余曲折がありました。実は2022年2月に出版しようとしたところ、勤務先の会社に不承認とされてしまったのです。私はこれまで新聞社3社で記者を務め、記者職を外されたのちも、勤務時間外に個人のフリージャーナリストとして取材を続けてきたのですが、本書が「現在の勤務先に入社する前に得た情報」と「個人として得た情報」を主にする内容であるにもかかわらず、「勤務先の承認が必要である」として出版することすら許されませんでした。
しかし、「メディアに身を置いてきた人間として、メディアの罪を伝えなければ裏切り行為になる」と思い、プロフィールと原稿の文言から勤務先の社名を除いて出版することにしました。ありがたいことに、発売からわずか4カ月で5刷となり、また朗読版も発売され、今回、この賞をいただくことができました。これは必要な情報を届けられた証左だと思います。
原発を推し進めるということは私たち国民に負担を強いる人権問題、環境問題です。実際に、福島第一原発事故の影響で、13年5カ月たったいまでも数万人が避難を続けています。廃炉や高レベル放射性廃棄物の処理すら見通しがたちません。原発の建設費は数倍に跳ね上がりましたが、政府は国民負担を上乗せして進める検討をしています。
物事の是非を考えるにはまずは情報を「知る」ことが重要です。しかし、仲間の記者たちからは、原発に限らず様々な問題で報じるのをとめられたという声をよく聴きます。これでは、本当のことを知ることができませんし、建設的な議論も行えません。報道の役目は「調べ、伝える」ことであり、そうした当たり前のことができる世の中に少しでも近づくことを願います。
この本は、被ばくした方々の思いを継いだものでもあります。元東京都立大学総長の佐野博敏さんは、広島の被ばく者で、東大で放射能研究を行っていた方です。出版を勤務先にとめられたことに驚き、何とか実現するよう励まし続けてくれました。待ち望みながら出版前に亡くなってしまいました。ほかにもお見せできないまま亡くなった方々が複数いらっしゃり、忸怩たる思いです。申し訳ありませんでした。
様々な事情を踏まえつつ、この本の必要性を見出し、出版を決断してくれた文春新書の西本幸恒編集長、担当編集者の織田甫さん、喜田村洋一弁護士がいなければ出版できませんでした。感謝の念に堪えません。日々支えてくださっている皆様方のお陰でなんとか生きています。
南海トラフ「巨大地震注意」が発表されました。地震大国日本が原発に行うべき最大の対策は、原発をとめることです。なぜ日本政府は現実を見ないのか、なぜ日本は落ちていくのか、どうしたらいいのかを取材中です。今後もさまざまな事実を伝え続けていきたいと思います。どうぞ、よろしくお願いいたします。
脱原発文学大賞を受賞した青木美希さん■プロフィール青木美希(あおき みき)
ジャーナリスト、作家。札幌市出身。1997年、北海タイムス入社。同紙の休刊にともない、1998年9月に北海道新聞入社。札幌での警察担当のときに北海道警裏金問題を手がける。2010年9月、大手紙に入社。東日本大震災では翌日から現場で取材した。現在も個人として取材活動を続けている。「道警裏金問題」取材班として菊池寛賞。同取材班と、のちの原発事故検証企画「プロメテウスの罠」、「手抜き除染」報道の両取材班で、新聞協会賞を3度受賞。
初の単著『地図から消される街』(講談社現代新書)は福島第一原発事故の実情を描き、貧困ジャーナリズム大賞、日本医学ジャーナリスト協会賞特別賞、平和・協同ジャーナリスト基金賞奨励賞を受賞した。ほか単著に『いないことにされる私たち』(朝日新聞出版)。2023年から日本ペンクラブ言論表現委員会副委員長。
■書誌情報書 名:『なぜ日本は原発を止められないのか?』著 者:青木美希刊 行:2023年11月20日定 価:1210円(税込)判 型:新書判頁 数:288
ISBN:978-4-16-661433-2書誌URL:
https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784166614332 当リリースの詳細について
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000488.000043732.html
※このメールは自動送信されていますので、返信はご遠慮ください。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません