軽度認知障害(MCI)と主観的認知機能低下(SCD)の高齢者を対象にした臨床試験抹茶による社会的認知機能(顔表情からの感情知覚)と睡眠の質への効果を確認

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プレスリリース:2024年09月02日 報道関係者各位

軽度認知障害(MCI)と主観的認知機能低下(SCD)の高齢者を対象にした臨床試験抹茶による社会的認知機能(顔表情からの感情知覚)と睡眠の質への効果を確認

8月30日(金)学術雑誌PLOS ONEに掲載 株式会社MCBI(社長:徳美喜久 本社:東京都千代田区)と国立大学法人筑波大学(学長:永田恭介

所在地:茨城県つくば市)、医療法人社団創知会メモリークリニックとりで(理事長:朝田隆 所在地:茨城県取手市)、株式会社伊藤園(社長:本庄大介

本社:東京都渋谷区)は、認知症の前段階である軽度認知障害(MCI)(※用語1)と主観的認知機能低下(SCD)(※用語2)の高齢者を対象にした臨床試験「抹茶の認知機能低下抑制効果を評価する試験」を共同で実施し、

抹茶を継続摂取することによる社会的認知機能の改善及び睡眠の質の向上傾向を確認しました。この試験結果は8月30日付、学術雑誌PLOS ONE※に掲載されました。

主要研究者:株式会社MCBI取締役会長 研究開発担当 内田和彦、国立大学法人筑波大学 医学医療系精神医学 教授 新井哲明医療法人社団創知会

メモリークリニックとりで 理事長 朝田隆、株式会社伊藤園 中央研究所長 瀧原孝宣※ Uchida K. et al., Effect of matcha

green tea on cognitive functions and sleep quality in older adults with

cognitive decline: A randomized controlled study over 12 months. PLOS

ONE|Published: 30 August 2024

https://doi.org/10.1371/journal.pone.0309287.

抹茶は古くから日本人に親しまれてきた飲み物であり、その主な成分である「テアニン」には、ストレス緩和、睡眠改善、さらにはワーキングメモリー(※用語3)の改善などの効果があることが、また、「カテキン」には、血中コレステロールの低下、体脂肪の低下、さらにはワーキングメモリーの改善などの効果があることが報告されています。また、中高齢者を対象に抹茶を1日2gずつ12週間、継続摂取した効果として、「注意力」および「判断力」の精度を高めることが報告されています。

本臨床試験では、抹茶の長期摂取の介入前後に、試験参加者への認知機能検査、睡眠調査、血中バイオマーカー測定、脳イメージングなどを実施し、抹茶の効果を総合的に解析しました。

○臨床試験の方法

60歳から85歳の高齢者を939名募集し、そのうち、認知症の前段階である軽度認知障害(MCI)およびプレクリニカル期にあたる主観的認知機能低下(SCD)と診断された99名を対象に、抹茶の長期摂取による認知機能等への影響を、二重盲検プラセボ対照ランダム化比較試験により検証しました。試験食品は、抹茶群では抹茶2gを充填したカプセルを、プラセボ群では着色コーンスターチを充填したカプセルをそれぞれ用いました。使用した抹茶の1日あたりの摂取量は、薄茶お点前一杯相当量にあたります。試験開始時から12か月間の各評価項目の変化を混合効果モデル(※用語4)により統計的に検証しました。

○抹茶による「社会的認知機能(顔表情からの感情知覚)」と「睡眠の質」への効果を確認

認知機能に関しては、認知症やMCIのスクリーニング等に用いられる神経心理学的検査(MMSE-J、MoCA-J等)での得点で抹茶群とプラセボ群の間に差はみられませんでしたが、コグニトラックス検査(CNS

Vital Signs日本語版)(※用語5)による認知機能の領域別の評価では、抹茶群はプラセボ群に比較して、表情認知テストで表される社会的認知、具体的には

顔表情からの感情知覚の精度が有意に改善

することが確認されました(図・左)。また、睡眠の質についてピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)(※用語6)を用いて評価した結果、抹茶群でPSQIスコアが低下し、

睡眠の質が向上する傾向が示されました(図・右)。

本研究チームは、お茶の価値を科学的に捉え、「人生100年時代を豊かに生きる」ための生活改善提案に向けて研究を進めてきました。本研究では、抹茶が新たに「社会的認知機能(顔表情から感情知覚)」を改善する効果を有することが示されました。

この社会的認知はDSM-5(Diagnostic and Statistical Manual of Mental

Disorder;精神疾患の診断・統計マニュアル第5版/米国精神医学会発行)にある認知症診断基準にある項目であり、高齢者の認知機能としてだけでなく、コミュニケーション能力や日常生活、さらには社会参加においても重要と考えられます。また、カフェインを含有する抹茶の摂取にもかかわらず、「睡眠の質」に悪影響がなく、むしろ改善傾向がみられた点も注目に値します。睡眠の質の維持が認知機能の維持にもつながることが期待されるため、これらの知見は非常に重要であると考えます。

今後は、前述の「社会的認知機能」の改善効果やそのメカニズムの解明、「睡眠の質」との関連性、その他の検査結果の解析を進め、高齢者にとって有益な活用方法の提案を目指すとともに、高齢者のウェルビーイングな生活の実現に向けて研究を続けていきます。緑茶・抹茶は、日常的に摂取でき、多くの高齢者にとって身近な存在であることから、さらに研究を重ねることで、自治体や様々なコミュニティで行われている認知症予防プログラムなどに活用されることが期待されます。

用語の説明(※用語1)軽度認知障害(MCI: Mild Cognitive Impairment)

アルツハイマー病など認知症の前駆状態です。物忘れは目立つものの、日常生活には支障はありません。MCIの40%が4年後にアルツハイマー病などの認知症を発症すると言われています。

(※用語2)主観的認知機能低下(SCD: Subjective Cognitive Decline)

軽度認知障害(MCI)の前段階とされ、客観的には認知機能の低下は認められないですが、物忘れの自覚がある自分だけが気づいている段階です。

(※用語3)ワーキングメモリー(作業記憶、作動記憶)

ワーキングメモリーは、外界から入ってきた感覚情報などを、それが消えた後に数秒から数十秒の間、短期記憶として保持し、それを用いて他の認知機能を実行する為の、脳の機能です。短期記憶の意味で用いられる事が多いですが、本来は純粋な短期記憶ではなく、それを用いて他の認知機能を実行したり、記憶内容に操作を加えたりする為の機能を指します。(脳科学辞典より)

(※用語4)混合効果モデル(Mixed‒Effects Model)

混合効果モデルとは、データが階層的またはクラスタリングされている場合に、固定効果とランダム効果の両方を考慮して、全体的な傾向と個別の変動を同時にモデル化する統計モデルです。

(※用語5)コグニトラックス(CNS Vital Signs日本語)

全10項目のテストで構成されるパソコンを用いた認知機能検査。本研究では他の神経心理学的検査との重複を避けるため、ストループテスト(文字の色と意味が合っているか判断します。例:青という文字が黒い色で書かれている)・注意シフトテスト(提示図形△□に対してランダムに切り替わる指示「色が同じ」「形が同じ」に合う図形を選ぶ)・持続処理テスト(ランダムに表示される文字の中で特定の文字が出たときのみキーを押す)・表情認知テスト(写真に表示された表情と下に書かれた感情の説明表現(穏やか・幸せ・悲しみ・怒り)の意味が一致しているか判断する)の4種を実施しました。

(※用語6)ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI-J ; Pittsburgh Sleep Quality Index 日本語版)

総合的な睡眠の質について自記式で回答し採点・評価を行うことができる、最も多くのエビデンスが集積されている睡眠評価尺度です。過去1か月間の睡眠について尋ね、6点以上で睡眠障害がありとされています。

利益相反本研究は、筑波大学附属病院・株式会社MCBI・株式会社伊藤園・株式会社島津製作所の共同研究契約に基づいて行われました。 当リリースの詳細について

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