「難病患者さんと医療従事者のコミュニケーションと連携に関する意識調査」実施

指定難病患者さんの看護をしたことがある看護師の過半数が「看護師、医師、患者の三者で直接コミュニケーションをできる場が少ない」と回答

アストラゼネカグループの希少疾患部門アレクシオン・アストラゼネカ・レアディジーズ(本部:米国マサチューセッツ州ボストン)の日本法人であるアレクシオンファーマ合同会社(本社:東京都港区、社長:笠茂公弘)は、指定難病の患者さん500名および指定難病患者さんの看護をしたことがある看護師464名を対象に、「難病患者さんと医療従事者のコミュニケーションと連携に関する意識調査」を実施しました。

その結果、

「医師と難病患者さんとのコミュニケーションサポートができているか」の問いに対し、「できている」および「おそらくできている」と回答した看護師は3割にとどまり、7割以上が「できていない」「おそらくできていない」または「どちらともいえない」と回答しました。その理由として、看護師の過半数が「看護師、医師、患者の三者で直接コミュニケーションをできる場が少ない」と回答するなど

、医療現場において、難病患者さんをサポートするためのコミュニケーションや連携体制に課題があることが示唆されました。

また、難病患者さんの看護の困難さにおいては「専門的な知識やスキルの高さが求められる」「心理的なサポートとカウンセリングが難しい」ことが挙げられました。一方、難病患者さんは看護師に対して「精神面についての支え」を求めており、嬉しかったこととして「親身に接してくれた」という回答も多く見られました。

■主な調査結果

看護師に対する調査結果のトピックス

* 難病患者さんの看護において、看護師が感じる困りごとや大変さ

1位「専門的な知識やスキルの高さが求められる」(52.8%)

2位「心理的なサポートとカウンセリングが難しい」(34.7%)

3位「症状・状態を、看護師が理解することが難しい」(30.0%)

* 看護師は、症状や治療に関することだけでなく、日常生活や就労、結婚・出産など、難病患者さんのさまざまな相談対応を行なっている一方で、相談を受けている看護師の約6割が、病気に関すること以外の相談について、対応が難しいと感じている

* 「医師と難病患者さんとのコミュニケーションサポートができているか」の問いに対し、看護師の7割以上が「できていない」「おそらくできていない」または「どちらともいえない」と回答

* 看護師が「医師と難病患者さんとのコミュニケーションサポート」をするための課題

1位「十分な時間を割くことが難しい」(60.1%)

2位「看護師、医師、患者の三者で直接コミュニケーションできる場が少ない」(56.3%)

3位「看護師の指定難病に関する情報・知識の不足」(49.4%)

難病患者さんに対する調査結果のトピックス

* 難病患者さんの約6割が「医師とコミュニケーションがとれている」、同じく約4割が「看護師とコミュニケーションがとれている」と回答

* 難病患者さんの約4割が「医師と看護師の連携はできていない」と回答

* 難病患者さんが、これまで看護師の看護で嬉しかったこと/助かったこと、4人に1人が「親身に接してくれた」と回答し、もっとも多い結果に

本調査を監修いただいた、東京都医学総合研究所 社会健康医学研究センター

難病ケア看護ユニットユニットリーダー中山優季先生は、調査結果について次のように述べています。

「本調査を通じて、難病患者さんが、看護師に対して専門的な知識やスキルだけでなく、治療における精神面での支えや情報提供など、多岐にわたるサポートを求めていることがわかりました。一方で、医療従事者間の連携が必要とされながらも、看護師の方々が「十分な時間を割くことが難しい」「医師・看護師・難病患者さんの三者で直接コミュニケーションできる場が少ない」などの課題を感じており、医療現場の仕組みや体制面からも、難病患者さんのサポートを考える必要があることがわかりました。」

~難病患者さんが望む“理想の看護師”は「ごく普通の人」~

今回の調査で、難病患者さんだけでなく、指定難病に関わる看護師も難病患者さんの看護において、難しさやさまざまな悩みを抱えていることがわかりました。また、難病患者さんが望む“理想の看護師”のタイプを探るために一般に広く使われているアーキタイプ※に基づいて回答を求めたところ、およそ3人に1人が「ごく普通の人」と答え、もっとも多い結果となりました。その理由として、「身の回りのことを専門分野の知識を持った人に相談できると安心感が得られる」「普通の感覚の人の方が気持ちをわかってもらえる」「気兼ねなく話せる方が良い」などが挙げられました。

難病患者さんが、看護師に対して、医師とはまた異なる、より自分自身に近い存在として、看護だけでなく、精神的な支えやサポートを求めていると推察されました。

※アーキタイプ:似たような性格の人々が共通して持つ思考や目標、欲求の一般的なパターン。人間心理学によると、12種類のアーキタイプがあると言われ「ごく普通の人」のほかには、「世話好き」「純粋な人」「愛にあふれた人」「ムードメーカー」「賢者・賢人」などがある。

アレクシオンファーマは、多くのステークホルダーと協働しながら、既存の枠組みにとらわれず、難病患者さんを取り巻くさまざまな課題の解決に寄与したいと考えています。本調査もその一環の活動として位置付けています。難病に関わるステークホルダーの一員としてこれからも難病患者さんと医療従事者の方々のコミュニケーションの場づくりや連携を推進する活動を続けてまいります。

アレクシオンファーマ合同会社について

アレクシオンファーマ合同会社は、2021年のアストラゼネカとアレクシオン・ファーマシューティカルズとの統合により生まれた、アストラゼネカグループの希少疾患部門アレクシオン・アストラゼネカ・レアディジーズ(本部:米国マサチューセッツ州ボストン)の日本法人です。アレクシオンは30年にわたり、希少疾患のリーダーとして、患者さんの生活を一変させるような治療薬を発見、開発、販売することで、希少疾患ならびに深刻な症状の患者さんとご家族への貢献に注力しています。

アレクシオンは、補体カスケードの新規分子と標的を対象に研究を行っており、血液、腎臓、神経、代謝性疾患、心臓、眼科、および急性期の治療薬を開発し、世界50ヵ国以上で患者さんに提供しています。また、アレクシオンファーマは、2022年より「難病・希少疾患の患者さんの環境を変えるためのプロジェクト」を展開しています。

アレクシオンファーマ合同会社に関する詳細については

http://www.alexionpharma.jp/

をご覧ください。また、「難病・希少疾患の患者さんの環境を変えるためのプロジェクト」の関連情報については、日本におけるサステナビリティ活動 | アレクシオン

ファーマ (alexionpharma.jp)をご覧ください。

アストラゼネカについて

アストラゼネカは、サイエンス志向のグローバルなバイオ医薬品企業であり、主にオンコロジー領域、希少疾患領域、循環器・腎・代謝疾患、呼吸器・免疫疾患からなるバイオファーマ領域において、医療用医薬品の創薬、開発、製造およびマーケティング・営業活動に従事しています。英国ケンブリッジを本拠地として、当社は100カ国以上で事業を展開しており、その革新的な医薬品は世界中で多くの患者さんに使用されています。詳細については

https://www.astrazeneca.com

または、ソーシャルメディア@AstraZeneca(英語のみ)をフォローしてご覧ください。アストラゼネカ株式会社については

https://www.astrazeneca.co.jp/

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意識調査詳細

■調査概要

名称 :難病患者さんと医療従事者のコミュニケーションと連携に関する意識調査

調査方法:インターネット調査

調査対象:直近半年間に通院または入院歴のある20~69歳の指定難病の患者500名

直近半年間に通院または入院歴のある20~69歳の指定難病以外の病気の患者500名

指定難病患者さんの看護に関わったことのある20~69歳の現職の看護師464名

調査期間:2023年7月21日~8月22日

監修:

中山 優季 (なかやま ゆき)

東京都医学総合研究所 社会健康医学研究センター 難病ケア看護ユニットリーダー

副参事研究員・看護師・保健師

東京女子医科大学看護短期大学、東京医科歯科大学(編入学)を卒業。東京女子医科大学病院脳神経センター勤務後、東京都立保健科学大学大学院に進み修士・博士課程修了する。

その後、東京都医学研究機構 東京都神経科学総合研究所*に研究員として勤務し、公益財団法人東京都医学総合研究所

副参事研究員、難病ケア看護プロジェクトリーダーを経て、2020年より同研究所のユニットリーダーを務める。学生時代より、ALS療養者のボランティア活動に携わっている。

*東京都医学総合研究所の前身施設

■調査結果詳細

難病患者さんの看護について

看護師が感じる困りごとや大変さは「専門的な知識やスキルの高さが求められる」が最多で過半数を占める。また、3人に1人は「心理的なサポートとカウンセリングの難しさ」を挙げる。

難病患者さんの看護に携わったことがある、全国の20~69歳の現職の看護師に対して、指定難病以外で通院・入院している患者さんと比べ、難病患者さんの看護においてどのような困りごとや大変さがあるかを尋ねたところ「専門的な知識やスキルの高さが求められる」(52.8%)がもっとも多く、次いで「心理的なサポートとカウンセリングが難しい」(34.7%)、「症状・状態を、看護師が理解することが難しい」(30.0%)が挙げられました。

さらに、病状ステージごとの看護の困りごとや大変さを尋ねたところ、最多項目に変化はなかったものの、<(難病患者さんが)体に異変を感じてから病名が判明するまで>では、「症状をわかりやすく説明するのが難しい」(39.9%)、<(治療を開始後)症状が安定している状態>では、「次の病期ステージの心構えなどを伝えるタイミングが難しい」(31.0%)が2位に上がりました。難病では専門的な知識が求められるため、症状の説明や時期などにおいて、看護師が患者さんとのコミュニケーションの難しさを感じていることが読み取れます。

難病患者さんと看護師のコミュニケーションについて

難病患者さんの約6割が「医師とコミュニケーションがとれている」、同じく約4割が「看護師とコミュニケーションがとれている」と回答。看護師は、症状や治療に関することだけでなく、日常生活や就労、結婚・出産など、難病患者さんのさまざまな相談対応を行なっている一方で、相談を受けている看護師の約6割が、そうした病気に関すること以外の相談については、対応が難しいと感じている

看護師に対して、難病患者さんにどのような情報提供や相談対応を行っているか尋ねたところ、「症状の変化・状態」「治療内容・治療の方向性」「日常生活の過ごし方」「精神面(心持ち)」「保険・制度活用」「医療費」については約5割、「就学・就労」「結婚・出産・介護」「患者団体」については約3割の看護師が対応していると回答しました。看護師が、難病患者さんに病状や治療に関することだけでなく、日常生活、就労や結婚・出産など、さまざまな相談対応を行っていることがわかります。

一方で、相談を受けているなかで対応が難しいものを尋ねたところ、「精神面(心持ち)について」「医療費」「保険・制度活用」「就学・就労」など、病気そのものに関すること以外が上位を占めました。難しいと感じながらも、看護師が難病患者さんとさまざまな事柄についてコミュニケーションをとっていることがわかりました。

図1 看護師が難病患者さんに行なう情報提供サポートと対応が難しいと感じること

「医師と難病患者さんとのコミュニケーションサポートができているか」の問いに対して、看護師の7割以上が「できていない」「おそらくできていない」または「どちらともいえない」と回答

看護師に対して、難病患者さんの診療において「医師と患者のコミュニケーションサポートができているか」を尋ねたところ、「できていない」(19.2%)、「どちらともいえない」(52.4%)と回答し、看護師の7割以上が課題を感じていることがわかりました。さらに、「医師と患者とのコミュニケーションサポートをするために、医療現場にどのような課題があるか」を尋ねると、「十分な時間を割くことが難しい」(60.1%)が最多、次いで「看護師、医師、患者の三者で直接コミュニケーションできる場が少ない」(56.3%)が挙げられました。

図2 看護師は、医師と難病患者さんとのコミュニケーションサポートができているか

難病患者さんと医師、看護師のコミュニケーションについて

難病患者さんの約6割が「医師とコミュニケーションがとれている」、約4割が「看護師とコミュニケーションがとれている」と回答

ここ半年間で通院または入院歴のある、全国の20~69歳の難病患者さん500名(潰瘍性大腸炎 17.8%、全身性エリテマトーデス 8.4%、クローン病

7.4%など)に、ご自身の病気に関して、診察時に「医師・看護師それぞれと納得できるコミュニケーションがとれているか」を尋ねたところ、約6割が「医師と納得できるコミュニケーションがとれている」(63.8%)と回答し、同じく約4割が「看護師と納得できるコミュニケーションがとれている」(38.0%)と回答しました。「医師と納得できるコミュニケーションがとれていない」(10.0%)、「看護師と納得できるコミュニケーションがとれていない」(20.8%)と比べると、難病患者さんは、看護師とのコミュニケーションに、より課題を感じていると考えられます。

なお、日常生活介助の要否と病状により、3つに類型化したところ、「看護師と納得できるコミュニケーションがとれている」は、類型3が34.7%、類型2が38.2%、類型1が46.8%と次第にスコアが高くなり、症状や日常生活障害の程度が重くなるほど、看護師とのコミュニケーションの満足度が上がっていることが推測できます。

今回の調査で使用した類型化分類:[類型1 (要介助、病状不安定・悪化)、類型2 (自立、病状不安定・悪化) 、類型3 (自立、病状安定)]/中山優季ほか

「難病患者の生活実態による新たな指定難病の類型化とその特徴~平成29年難病患者の生活実態全国調査から~」, 日本難病看護学会誌, 第26巻2号, 2021年

図3 難病患者さんと医師・看護師とのコミュニケーション

難病患者さん、約4割が「医師と看護師の連携はできていない」と回答

難病患者さんに、ご自身の治療や看護において、医師と看護師の連携がとれているかを尋ねたところ、約6割(61.8%)が「よく連携できている」および「連携できている」と答えた一方で、約4割(38.2%)が「あまり連携できていない」および「まったく連携できていない」と回答しました。これは、同質問を行った難病以外の病気で通院または入院した患者さんの回答「あまり連携できていない」および「まったく連携できていない」(25.2%)と比べると、13ポイント高い結果でした。

このことから、難病患者さんと看護師どちらも医療従事者の連携に関して疑問や課題を感じていることがわかります。

図4 難病患者さんからみた医師と看護師の連携

難病患者さんの看護師への期待

難病患者さんが、これまで看護師の看護で嬉しかった/助かったこと、4人に1人が「親身に接してくれた」と回答し、もっとも多い結果に。

最後に、難病患者さんに、看護師に求めること、これまで看護師の看護で嬉しかった/助かったことを尋ねたところ、看護師に求めることは「精神面(心持ち)について支えてほしい」(17.6%)、「症状の変化・状態について相談にのってほしい」(15.2%)、「治療内容・治療の方向性について(薬の効果や、副作用など含む)説明して欲しい」(13.8%)などが挙げられました。また、これまで看護師の看護で嬉しかった/助かったことは、「親身に接してくれた」(24.0%)がもっとも多い結果でした。

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