ビタミンD代謝物の新たな測定技術「ビタミンDバイオセンサー」を開発
以下「富山県立大学」)と共同で、
ビタミンの一つであるビタミンDの代謝物(25-ヒドロキシカルシフェロール「25(OH)D」など)を高感度に測定する技術「ビタミンDバイオセンサー(※1)」の開発を行いましたので、
お知らせします。
ビタミンDの代謝物は、 ビタミンDが体内に供給された後に肝臓や腎臓で変換される代謝物で、 ビタミンDの充足を測定する指標として活用されています。 本技術により、
これまで測定が困難であった微量なビタミンD代謝物の測定が可能となります。 将来的に、
「尿や唾液を用いたビタミンDの栄養状態の判定」に対して本技術の活用を目指します。 <研究方法・結果>
ビタミンD代謝物は、 血液だけでなく、 (※2)を伴わずに採取できる尿や唾液にも含まれていますが、 その量はごく微量であることが知られています。 従来、
微量なビタミンD代謝物を測定するためには、 質量分析装置(※3)を用いる必要があり、 限られた機関でしか測定することができませんでした。 そこで当社では、
富山県立大学 工学部医薬品工学科の榊利之教授・真野寛生特定助教と共同で、 質量分析装置を必要とせずに、
微量なビタミンD代謝物を測定する技術の開発に着手しました。 この測定技術は、 生体内でビタミンD代謝物を特異的に認識する「ビタミンD受容体(以下、
VDR)」というタンパク質をヒントに開発しています。 VDRは、 ビタミンD代謝物が結合すると構造が変化します。 今回開発したビタミンDバイオセンサーは、
このVDRの特徴を生かし、 ビタミンD代謝物が結合するとビタミンDバイオセンサーの構造が変化して発光する仕組みとなっています(図1)。
その光の強さでビタミンD代謝物の量を測定することができ、 図2は、 測定結果のイメージです。
なお、 本技術については特許を出願しております。
<研究背景・目的>
ビタミンDは、 食品摂取や日光を浴びることで皮膚で合成され体内に供給されます。 さらに肝臓や腎臓でビタミンDの代謝物に変換され、
さまざまな生理作用に影響を与えることから、 ビタミンDの代謝物が不足すると、 さまざまな疾病に関与することが知られています。
ビタミンDの代謝物の一つである25(OH)Dは、 ビタミンDの充足状態の指標として用いられます。
日本内分泌学会・日本骨代謝学会で発表された「ビタミンD不足・欠乏の判定指針」の基準値に基づくと、 血液中の25(OH)Dが低めの方が、 男性で72.5%、
女性で88.0%に達するという報告もあります。 このことから、 ビタミンDの過不足状況を簡単に測定できる方法を開発し、
より多くの方にご自身のビタミンDの充足状態を把握していただくことを目的とした「ビタミンDバイオセンサー」を開発しました。
<今後の展開>
本技術を用い、 血液中のビタミンD代謝物濃度と尿や唾液中のビタミンD代謝物濃度の相関性について詳細な研究をさらに続けてまいります。 将来的には、
非侵襲的に採取した尿や唾液サンプルからビタミンDを対象とした「栄養素の充足状態の判定」に対して本技術の活用を目指します。
<用語解説>
(※1) ビタミンDバイオセンサー:ビタミンD代謝物の濃度を発光で検出する評価技術。
(※2) 侵襲性:注射や手術など生体に傷を付けたり、 負担をかけること(非侵襲はその逆)。
(※3) 質量分析装置:物質の質量を測定する分析装置で、 ライフサイエンスのさまざまな分野で応用されている。
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