外線によりコラーゲン線維の柔軟性が失われることを発見
株式会社ファンケルは「原子間力顕微鏡1)」を用い、線維芽細胞2)が作り出したコラーゲン線維の「質」の一つ、「柔軟性」の評価法を世界で初めて開発しました。さらに、本評価法でコラーゲン線維に紫外線が当たるとコラーゲン線維が変形し、柔軟性が失われることを発見しましたのでお知らせします。
当社では、シワやたるみのメカニズムの解明の一つとして、加齢によりコラーゲン「量」の減少と、形など「質」の変化に着目して研究をしています。特に真皮内のコラーゲンは、皮膚の弾力を維持する役割を持つことが知られていることから、皮膚の弾力に対してコラーゲン線維の形状や量の関係性を調べてきました。その結果、コラーゲン線維を早く作り出すために重要な受容体や素材を発見し、コラーゲン線維の形状や量と皮膚の弾力の関連を報告しています(※)。
今回、コラーゲン線維の形状や量だけでなく、コラーゲン線維そのものの柔軟性が、皮膚の弾力性の維持に関わるのではないかと考え研究を行いました。本知見は、コラーゲン線維そのものの柔軟性を維持することでシワやたるみを防ぐといった新しいアプローチが期待されます。
※参考リリース
https://www.fancl.jp/laboratory/pdf/20180920_collargenjuyoutaiddr2.pdf
https://www.fancl.jp/laboratory/pdf/20210726_ekutoinwohakken.pdf
<コラーゲン線維を使用した研究方法と結果>
【紫外線ダメージによりコラーゲン線維の形状は変化することを確認】
皮膚の線維芽細胞を数日間培養してコラーゲン線維を作り出し、そこに紫外線(UVA)を照射した時のコラーゲン線維の形状を観察しました。
その結果、紫外線を照射することで細かいコラーゲン線維が消失し、コラーゲン線維自体が太く湾曲化することが分かりました(図1)。
【世界初 コラーゲン線維の柔軟性を評価する方法を開発】
次に、細胞が作り出したコラーゲン線維の柔軟性を評価する方法を検討し、原子間力顕微鏡を用いて観察しました。その結果、コラーゲン線維の表面形状の観察の成功と、コラーゲン線維の硬さの指標となるヤング率3)を計測することができました(図2)。
これらから、コラーゲン線維の原子間力顕微鏡によるヤング率測定からコラーゲン線維の柔軟性を評価することが可能であることが分かりました。
【コラーゲン線維は紫外線ダメージで柔軟性が失われることを発見】
コラーゲン線維は紫外線ダメージによってその構造が変化することが知られています。そこで、皮膚の線維芽細胞を数日間培養してコラーゲン線維を作り出し、紫外線(UVA)照射によるコラーゲン線維の柔軟性への影響を原子間力顕微鏡で評価しました。
その結果、
紫外線を照射することで、ヤング率が増加することが確認できました(図3)。ヤング率が増加するほど柔軟性が劣化することから、紫外線照射によりコラーゲン線維の柔軟性が失われる
ことが分かりました。
<今後の展開>
本研究で得られたコラーゲン線維の柔軟性を評価する方法は、当社の肌本来の機能を高めるコラーゲン研究において大きな進化と考えています。実際に日光を浴びた皮膚内部で起こり得る変化が確認できたことは、コラーゲン線維の柔軟性を維持してシワやたるみを防ぐという新しいアプローチにつながることが期待されます。今後もさらにコラーゲン研究を進め、コラーゲンの柔軟性に着目した新しいコンセプトのアンチエイジング化粧品の開発に向けて生かしてまいります。
【用語説明】
1)原子間力顕微鏡:ナノメーターサイズの尖った針で対象試料を走査して、表面形状と、針を対象試料に押し込んだ時の変形量から物理量を計算し、その分布をマッピングして観察できる顕微鏡。
2)線維芽細胞:真皮に存在し、コラーゲンやエラスチンなどを生み出す細胞。
3)ヤング率:物体の柔軟性を表す指数。縦弾性係数とも呼ばれヤング率が大きいほど変形しにくいことを表す。
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