早期アルツハイマー病治療薬「ケサンラ(R)点滴静注液350mg」アルツハイマー病による軽度認知障害及び軽度の認知症の進行抑制を効能又は効果として承認を取得

日本イーライリリー株式会社(本社:兵庫県神戸市、代表取締役社長:シモーネ・トムセン、以下、日本イーライリリー)は、本日、厚生労働省より、早期アルツハイマー病(AD)治療薬「ケサンラ(R)点滴静注液350mg」(一般名:ドナネマブ、以下「ケサンラ」)について、「アルツハイマー病による軽度認知障害及び軽度の認知症の進行抑制」を効能又は効果として、日本における製造販売承認を取得しましたことをお知らせ致します。

ケサンラは、アミロイドβプラークを標的とする早期AD治療薬です。4週間隔で、少なくとも30分以上かけて点滴静注することにより、脳内に過剰に蓄積したアミロイドβプラークを除去します。ケサンラは、アミロイドPET検査によりアミロイドβプラークの除去が確認された時点で投与を完了します(アミロイドβプラークの除去が確認されない場合であっても、本剤の投与は原則として最長18ヵ月で完了します)。ケサンラの投与完了により、当事者および介護者の身体的、精神的な負担を軽減することが期待されます(*1,*2)。

ケサンラは、アミロイドβ病理を示唆する所見が確認された60~85歳の早期ADの方を対象に、安全性および有効性を評価したTRAILBLAZER-ALZ

2試験の結果に基づいて承認されました。

TRAILBLAZER-ALZ

2試験では18ヵ月にわたり、参加者の臨床的進行を評価しました(*3,*4)。主要評価解析は、早期ADの中でもより早い段階にある参加者(脳内タウ蓄積レベルが軽度~中等度、Mini-Mental

State Examination (MMSE)

スコア平均値約23)と、より進行した段階にあることを示す脳内タウ蓄積レベルが高度の参加者を含む参加者全体(MMSEスコア平均値約22)を、ケサンラ投与群とプラセボ投与群の2群に分けて行いました。

その結果、ケサンラを投与した両集団において、臨床症状の悪化が有意に抑えられました。また、ケサンラの投与を受けた脳内タウ蓄積レベルが軽度~中等度の参加者は、認知機能と日常生活機能を総合的に評価する統合AD評価尺度(iADRS)において、プラセボ群と比較して35%の有意な進行抑制がみられました。高度のタウ蓄積を有する方を含めた参加者全体においても、ケサンラを投与した参加者のiADRSは22%と、統計学的に有意な臨床的進行抑制を認めました(*5)。また、タウ蓄積レベルが軽度~中等度の参加者では、ケサンラの投与群においてプラセボ投与群と比較して、次の臨床病期に進行するリスクが39%低下しました(*6)。TRAILBLAZER-ALZ

2試験に参加した日本人集団でも、参加者全体と同様の結果が確認されました(*7)。

TRAILBLAZER-ALZ

2試験では、ケサンラを投与した試験参加者において、アミロイドβプラークが試験開始時と比較して6ヵ月で平均61%、12ヵ月で平均80%、18ヵ月で平均84%減少しました(*8)。試験参加者は、アミロイドβプラークがアミロイドPET検査の視覚読影で陰性と判定される最も低いレベルまで除去されたことが確認された場合、ケサンラの投与を完了し、残りの試験期間をプラセボ投与に切り替えました。なお、試験開始から12ヵ月後に、ケサンラを投与した試験参加者の66%において、アミロイドPET検査の視覚読影で陰性に相当するアミロイドβプラークの除去が確認されました(*1)。

TRAILBLAZER-ALZ

2試験では、アミロイドβを標的とする治療に共通する副作用であるアミロイド関連画像異常(ARIA)のうち、ARIA-Eがケサンラの投与を受けた参加者の24.0%に発現し、6.1%に症候性のARIA-Eが発現しました(*1)。Infusion

reactionは、ケサンラを投与された参加者の8.3%*に発現しました。

*ケサンラ(R)点滴静注液350mg添付文書より

日本イーライリリー研究開発・メディカルアフェアーズ統括本部 薬事本部長 高田

渉は次のように述べています。「リリーは35年以上にわたり、中枢神経領域における研究開発への投資を継続的に行い、認知症の研究開発における包括的なエコシステムの構築に努めてまいりました。認知症基本法の制定をはじめ、共生社会の実現に向けて国を挙げた取り組みの中で、このたび、投与を完了できる可能性のある薬剤であるケサンラを、新たな早期AD治療薬の選択肢として当事者の方々にお届けできることを、大変嬉しく思います。リリーは、認知症への理解を深め、スティグマ(偏見)を取り除き、診断と治療へのアクセスを高めるため、今後も尽力してまいります」。

以上

参考資料

製品概要

販売名

ケサンラ(R)点滴静注液350mg

一般名

ドナネマブ

効能又は効果

アルツハイマー病による軽度認知障害及び軽度の認知症の進行抑制

用法及び用量

通常、成人にはドナネマブ(遺伝子組換え)として1回700mgを4週間隔で3回、その後は1回1400mgを4週間隔で、少なくとも30分かけて点滴静注する。

用法及び用量に関連する注意(添付文書から一部抜粋)

本剤投与中にアミロイドβプラークの除去が確認された場合は、その時点で本剤の投与を完了すること。アミロイドβプラークの除去が確認されない場合であっても、本剤の投与は原則として最長18ヵ月で完了すること。

製造販売承認取得日

2024年9月24日

製品画像

ケサンラ(R)点滴静注液350mg

ケサンラ(R)(一般名:ドナネマブ)について

ケサンラは、アミロイドβ病理を示唆する所見が確認された、軽度認知障害(MCI)および軽度認知症の段階の早期ADに対するアミロイドプラークを標的とした治療薬です。

ケサンラの副作用について

ケサンラを投与することにより、アミロイド関連画像異常(ARIA)およびinfusion

reactionなどの重大な副作用を引き起こすことがあります。ARIAは抗アミロイド抗体療法に共通する副作用で、多くは無症状のため、定期的な核磁気共鳴画像(MRI)検査によって検出します。発生した場合は、脳の一部または複数の領域の一時的な浮腫として発現することがありますが、通常は時間の経過とともに消失します。

また、脳の表面や脳内の小さな出血として認められることもあり、より広範囲な脳の領域で出血が起こることもあります。ARIAは、まれに重篤となり、生命を脅かす事象となる可能性もあります。また、ケサンラの投与により、アナフィラキシーを含むinfusion

reactionsを起こす可能性があり、中には重篤で生命を脅かすこともあります。これらが起こる場合は通常、投与中または投与後30分以内に発現します。頭痛も多く報告されている副作用の一つです。

TRAILBLAZER-ALZ 2試験について

TRAILBLAZER-ALZ

2試験(NCT04437511)は、ADの神経病理の存在が確認された、軽度認知障害(MCI)および軽度認知症の段階を含む早期ADを有する方を対象にドナネマブの安全性および有効性を評価する、第III相二重盲検プラセボ対照試験です。この試験では、ADの病理と認知機能評価に基づいて選択された8ヵ国の1,736例が登録されました。この試験に登録された試験参加者のCDRグローバルスコアは、全体集団において0.5の方がケサンラ投与群で60.8%、プラセボ投与群で61.2%、1の方がケサンラ投与群で36.0%、プラセボ投与群で35.4%であり、脳内タウ蓄積レベルが軽度~中等度の集団もおおむね同様でした。また、アミロイドβプラーク量は、いずれの群においても100センチロイドを超えていました。

TRAILBLAZER-ALZ試験の結果は、Journal of the American Medical Association(JAMA)に掲載(

https://jamanetwork.com/journals/jama/article-abstract/2807533)されました。

日本イーライリリーについて

日本イーライリリー株式会社は、米国イーライリリー・アンド・カンパニーの日本法人です。日本の患者さんが健康で豊かな生活を送れるよう、日本で50年にわたり最先端の科学に思いやりを融合させ、世界水準の革新的な医薬品を開発し提供してきました。現在、がん、糖尿病、アルツハイマー病などの中枢神経系疾患や自己免疫疾患など、幅広い領域で日本の医療に貢献しています。詳細はウェブサイトをご覧ください。

https://www.lilly.com/jp

(*1) Sims JR, Zimmer JA, Evans CD, et al. Donanemab in Early Symptomatic

Alzheimer Disease: The TRAILBLAZER-ALZ 2 Randomized Clinical Trial. JAMA.

2023;330(6):512-527. doi:10.1001/jama.2023.13239.

(*2) Mattke S, Ozawa T and Hanson M. Implications of Treatment Duration and

Intensity on the Value of Alzheimer’s Treatments. Clinical Trials on Alzheimer’s

Disease. Oct. 24-27, 2023.

(*3) Bucci M, Chiotis K, Nordberg A; Alzheimer’s Disease Neuroimaging

Initiative. Alzheimer’s disease profiled by fluid and imaging markers: tau PET

best predicts cognitive decline. Mol Psychiatry. 2021 Oct;26(10):5888-5898. doi:

10.1038/s41380-021-01263-2.

(*4) Boccalini C, Ribaldi F, Hristovska I, Arnone A, Peretti DE, Mu L, Scheffler

M, Perani D, Frisoni GB, Garibotto V. The impact of tau deposition and

hypometabolism on cognitive impairment and longitudinal cognitive decline.

Alzheimers Dement. 2023 Aug 9. doi: 10.1002/alz.13355.

(*5) Data on File. Lilly USA, LLC. DOF-DN-US-0053.

(*6) Data on File. Lilly USA, LLC. DOF-DN-US-0055.

(*7) Sato S, Hatakeyama N, Fujikoshi S, et al. Donanemab in Japanese Patients

with Early Alzheimer’s Disease: Subpopulation Analysis of the TRAILBLAZER-ALZ 2

Randomized Trial. Neurol Ther. 2024;13(3):677-695. doi:

10.1007/s40120-024-00604-x

(*8) Data on File. Lilly USA, LLC. DOF-DN-US-0029.

【プレスリリースはこちらのPDF版でもご覧になれます。】

https://prtimes.jp/a/?f=d5823-148-484faed40461b2343c30126dd0931a95.pdf

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