~減塩食をよりおいしく、「健康」課題の解決に向けた大きな一歩~世界初※1!電気刺激の活用で塩味が約1.5倍に増強される効果を確認

―「味を調整できる食器」の開発につながる新技術― キリンホールディングス株式会社(社長 磯崎功典、 以下キリン)と明治大学(学長

大六野耕作)総合数理学部先端メディアサイエンス学科の宮下芳明研究室は、 共同研究の結果、 減塩食品の味わいを増強させる電気刺激波形と箸型デバイスを開発しました。

さらに、 減塩の食生活を送る方々を対象にした臨床試験で、 キリンと宮下研究室が共同開発した箸型デバイスを用いると、

減塩食を食べたときに感じる塩味が1.5倍程度に増強されることを世界で初めて確認しました※2。 本共同研究では、 電気刺激を用いて塩味を増強する効果を、 箸、

スプーン、 茶わんなどの日常的に用いる食器に活用することで、 薄味の減塩食に対する味の満足度を高められる可能性を見いだしました。

※1 減塩の食生活を送る方々に対して、 電気味覚での塩味増強効果を確認した研究として世界初/キリン調べ(2022年3月1日(火)時点の公開情報に基づく)

※2 一般食品を模したサンプルと、 食塩を30%低減させたサンプルでの塩味強度に関する評価の変化値

なお、 キリンと宮下研究室は、 本共同研究成果を「減塩生活者を対象とした電気味覚による塩味増強効果の調査」として、

2022年3月2日(水)にインタラクション2022(第26回 一般社団法人情報処理学会シンポジウム)で発表しました(筆頭演者:明治大学大学院先端数理科学研究科

鍜治慶亘)※3。

※3 開催期間:2022年2月28日(月)~3月2日(水) ※本演題は3月2日(水)に発表

発表者:鍜治慶亘(明治大学)、 安蔵健司(明治大学)、 佐藤愛(キリン)、 宮下芳明(明治大学)

日本人の1日当たりの食塩摂取量は成人男性で10.9g、 成人女性で9.3g※4と、

WHO(世界保健機関)が掲げる食塩摂取基準と比較しても非常に多い※5ことが分かっています。 塩分のとり過ぎは、

高血圧・慢性腎臓病をはじめとした生活習慣病の発症や重症化を招きやすく、 「健康」に関する大きな社会課題となっています。

厚生労働省が生活習慣病予防のために設定した目標量(成人男性で1日8.0g未満、 成人女性で1日7.0g未満※6)を達成するためには、

今の食塩摂取量を20%以上低減させる必要があります。 さらに、 生活習慣病の重症化を予防するには1日6.0g未満の食塩摂取量が望ましいと考えられていますが※7、

塩分を控えた食事(減塩食)に対して「味が薄い」と感じる方も少なくなく、 減塩食を続ける上での阻害要因となっていました。

※4 厚生労働省 令和元年 国民健康・栄養調査

※5 5.0g/日 未満(2012年、 WHOガイドライン)との比較

※6 厚生労働省 日本人の食事摂取基準(2020年版)

※7 日本高血圧学会 高血圧治療ガイドライン。 日本腎臓病学会

エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018

2019年から、 キリンと宮下研究室は、 人体に影響しないごく微弱な電気を用いて、

塩味の基となる塩化ナトリウムやうま味の基となるグルタミン酸ナトリウムなどが持つイオンの働きを調整し、

疑似的に食品の味を濃くしたり薄くしたりすることで味の感じ方を変化させる「電気味覚」の研究を共同で行ってきました。

このたび、 微弱な電流で塩味をコントロールし、 減塩食の味わいを増強させる電気刺激波形を開発しました。 さらに、 この技術を搭載した箸型デバイスを作成し、

実際に減塩の食生活を行っている方を対象に臨床試験を実施した結果、 減塩食を食べた際に感じる塩味が1.5倍程度に増強される効果を確認しました。

●研究概要図1:微弱な電気刺激が付与される箸型デバイス

図1:微弱な電気刺激が付与される箸型デバイス

<研究方法>

40歳~65歳で現在減塩をしている、 または過去にしていた経験のある男女36名を対象に、 微弱な電気刺激が付与される箸型デバイス(図1)を用いて、

一般食品を模したサンプル(食塩を0.80%含有するゲル)と減塩食を模したサンプル(食塩を0.56%含有するゲル、

食塩含有量は一般食品を模したサンプルとの比較で30%低減)を試食した後、 感じた塩味強度について評価する試験を行いました。 同じデバイスを用いて、

減塩味噌汁の塩味強度や風味の変化についても評価しました。

<研究結果>

減塩食を模したサンプルを試食するときに、 開発した電気刺激波形(図2)を箸型デバイスに付与することで、

電気刺激を付与しない条件と比較して塩味が1.5倍程度増強される結果が得られました。 また、 電気刺激を付与したときの減塩食を模したサンプルの塩味強度は、

一般食品を模したサンプルと同等であることを確認しました(図3)。 これにより、 食塩を30%低減した食品を摂取する際に、 本技術を搭載したデバイスを用いると、

通常の食事と同等の塩味を提供できることが示唆されました。

また、 減塩味噌汁を用いた実験においても、 塩味の増強効果が確認され、 コクやうま味、 全体のおいしさの向上を感じたという意見が得られました。

図2:開発した電気刺激波形

図2:開発した電気刺激波形

図3:電気刺激による塩味増強効果

図3:電気刺激による塩味増強効果

●今後の展開

お客様の食生活をよりおいしく、 より楽しく、 より健康にすることができるよう、

食生活の満足度を高めて「生活習慣病予防」をサポートする新たなサービスの開発を進めていきます。 キリンと宮下研究室は将来的に、 本共同研究成果を活用し、

おいしさによる精神的な満足感と栄養面から導かれる健康の両方を、 減塩の食生活を送る方々に提供することを目指します。

キリングループは、 長期経営構想「キリングループ・ビジョン2027(KV2027)」の達成に向けて、 「価値創造を加速するICT」の実現を掲げ、

その中核としてDXによる新たな価値創造に挑戦しています。 また、 「食から医にわたる領域で価値を創造し、 世界のCSV※8先進企業となる」ことを目指しています。

その実現に向けて、 ICTを活用したグループ全体のDXを加速させ、 新たな価値を生み出すとともに、 長年培ってきた高度な「発酵・バイオ」の技術をベースにして、

人々の健康に貢献していく「ヘルスサイエンス領域」(ヘルスサイエンス事業)の立ち上げ、 育成を進めています。

キリンは、 生活習慣病の発症や重症化の予防に貢献できるよう、 「健康」に関する社会課題の解決を目指した新たなサービスの開発を推進していきます。

※8 Creating Shared Valueの略。 お客様や社会と共有できる価値の創造

キリン

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