大麦の摂取がビフィズス菌と酪酸産生菌の量と関係 日本人の腸内細菌叢との関係を横断研究で解析
日本人の腸内細菌叢との関係を横断研究で解析 200名規模の大麦×腸内環境コホート調査 穀物のリーディングカンパニー株式会社はくばく(本社:山梨県中央市、
代表取締役社長:長澤 重俊)は、
国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所ワクチン・アジュバント研究センターの國澤純センター長(ヘルス・メディカル連携研究センター併任)および山梨大学大学院総合研究部医学域社会医学講座山縣然太朗教授との共同研究により、
大麦の摂取量が多い日本人の腸内細菌叢において、 ビフィズス菌および酪酸産生菌の1つであるブチリシコッカス菌の量が多いことを横断研究にて明らかにしました。
日本人の集団において大麦の摂取量と腸内細菌叢の関係を200名を超える規模で評価した貴重な研究成果と言えます。
本研究成果は科学雑誌『BMC Nutrition』(BMC Nutr. 2022 Mar 14;8(1):23)に2022年3月14日に掲載されました。
<研究背景と目的>
大麦には水溶性食物繊維β-グルカン(1)が豊富に含まれており、 様々な健康機能があることが明らかにされてきました。 また、
腸内細菌叢が宿主であるヒトにもたらす健康上の機能も近年注目を浴びています。 しかしながら、
大麦の摂取が日本人の腸内細菌叢に与える影響について調べた報告はほとんどありませんでした。 そこで、
日常的に大麦を食べていると考えられる当社社員236名の健康診断の結果や腸内細菌叢、 大麦を含む食事習慣や居住環境、
疾患などのデータを調査・追跡したコホート研究を実施しました。 その結果、 日本人の集団において大麦の摂取は腸内細菌叢と相関があることを明らかにしました。
<研究方法>
精麦商品を取り扱う株式会社はくばくの社員272名を対象とし、 腸内細菌叢の16S rRNA解析を行い(2)、 身体測定値、 血圧、
生化学的マーカーなどの健康診断結果、 質問票を用いた大麦の摂取量や摂取頻度および簡易型自記式食事歴法質問票(BDHQ)を用いた食習慣のデータを収集しました。
コンプライアンスなどの理由から36名を除外した対象者236名から、 糖尿病や高血圧、
脂質異常症およびその予備群に該当する対象者を除いた94名を本研究の解析対象者としました。
大麦の摂取量に関する質問票およびBDHQのデータから大麦の摂取量(g/1000kcal)を算出し、 大麦の摂取量が0~3.5
g/1000kcalの対象者を低摂取群、 3.5~28.0 g/1000kcalの対象者を高摂取群としました。
<研究結果>
1.腸内細菌叢により3つのエンテロタイプ(3)に分類
解析対象者94名をA:Bacteroides型、 B:Blautia型、 C:Prevotella型の3つのエンテロタイプに分類しました。 (図1)
高摂取群ではAが10名、 Bが33名、 Cが4名、 低摂取群ではAが16名、 Bが23名、 Cが8名となりましたが、 両群間に有意差はありませんでした。
しかしながら、 主座標分析(4)においてPCoA2軸の正の方向に高摂取群、 負の方向に低摂取群が分布する傾向が見られました。 (図2)
2.ビフィズス菌(Bifidobacterium)とブチリシコッカス菌(Butyricicoccus)が大麦の摂取量と関係
高摂取群では、Bifidobacterium、Collinsella、Butyricicoccus、Dialister、Ruminococcus
2の相対存在比(%)が低摂取群と比べてFDR調整(5)前の比較で有意に高い結果となりました。 (図3)
BifidobacteriumとButyricicoccusは、 全参加者(236名)を対象に性別、 年齢、 糖尿病、 高血圧、
脂質異常症のリスクで調整した重回帰分析(6)を行った後も同様の関連がありました。
<今後の展望>
本研究の結果により、 大麦の摂取は日本人の腸内細菌叢に影響を及ぼすこと、
特に有用菌として知られているビフィズス菌や酪酸産生菌の1つであるブチリシコッカス菌が大麦の摂取と関係していることがわかりました。
腸内細菌がヒトの体に及ぼす健康機能は長年注目されています。 今後は同コホートのデータを用いて糖尿病や高血圧、
脂質異常症などの疾患と大麦の摂取がもたらす腸内細菌叢の変化がどのように関係しているのかを明らかにする予定です。
【用語解説】
(1) β-グルカン:水溶性食物繊維。 水に溶けてゲル状になる食物繊維。 腸内環境を整える機能を持つ。
(2) 16S rRNA解析:腸内細菌が持つ16S rRNA遺伝子をPCRで増幅し、 次世代シークエンサーを用いて解析する。
サンプル中の細菌の種類や構成比を解析する。
(3) エンテロタイプ:腸内細菌の構成から3つに分類した腸内細菌叢の型。
(4) 主座標分析:複数ある(多次元の)要素を2次元に落とし込んで視覚化する手法。
(5) 重回帰分析:複数の説明変数で目的変数を表す回帰分析。
(6) FDR調整:False Discovery Rate。 統計検定を繰り返すことによる間違いを回避するための調整方法。
* はくばくについて
当社の社名「はくばく」は白い大麦という意味です。 創業社長である祖父が「もっと麦ご飯を喜んで食べてもらいたい。 」という思いから、
大麦を一粒一粒半分に割って黒い筋を目立たなくした製品を開発しました。
以来、 我々はくばくは穀物とともに歩み、 精麦の他、 雑穀、 和麺、 麦茶、 穀粉、 米を事業として手がけるようになりました。
人類を太古から支えてきた大切な「穀物」を、 現代の食卓へもっと多く登場させ、 もっと楽しんで食べてもらうこと。 それは家族の笑顔が増えること。
またそれは家族が健康になることだと考えています。 これを実現するために、
我々はくばくは「穀物の感動的価値を創造する」ことを社員一丸となって本気で目指して参ります。
(株式会社はくばく 代表取締役社長 長澤 重俊)
社名 : 株式会社はくばく
所在地 : 〒409-3843 山梨県中央市西花輪4629
代表 : 代表取締役社長 長澤 重俊
設立 : 昭和16年4月15日
資本金 : 98,000,000円
事業内容: 食品製造および販売
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