腸内フローラと免疫の相関関係についての考察レポート:コロナ後遺症患者の腸内フローラの特徴が判明
~腸内フローラの多様性や健全性をチェックできる腸内フローラ検査を活用し、免疫力維持強化につなげよう~ 世界で唯一、
遺伝子と腸内フローラの検査結果を統合したレポートを提供しているパーソナライズドヘルスソリューション企業、 アトラスバイオメッド(本社:英国 ロンドン、
CEO:セルゲイ・ムシエンコ、 子会社:アトラス日本合同会社(住所:東京都渋谷区、 代表者:セルゲイ・ミュシエンコ、 以下 アトラスジャパン <
https://atlasbiomed.co.jp/>は、 アトラスバイオメッドに所属する、
人と微生物の関係を研究しているロス・カーヴァー・カーターが3月25日に執筆した、
「腸内細菌叢と免疫の相関関係:腸内細菌は免疫の健康にどのような影響を与えるのか?」と題する考察レポート
https://atlasbiomed.com/blog/the-microbiota-immune-axis/の抄訳を発表しました。
このレポートでは、 腸内細菌が免疫細胞とどのように相関しているのか、 また、 それがコロナ後遺症や炎症性疾患のリスクにどのように影響するかを考察しています。
私たちの腸内には何百万もの微生物群、 いわゆる腸内フローラが存在します。 これらは脳と同じ重さを持ち、 免疫の健康にも影響を及ぼします。
腸内細菌の多様性とバランスによって、 腸内フローラは免疫系を円滑に機能させることも、 免疫反応を引き起こすこともあります。
腸内細菌のバランスが崩れた状態を「腸内毒素症」と呼びます。 これは慢性炎症と関連しており、 クローン病や潰瘍性大腸炎のリスクを高める可能性があります。
免疫システムのバランス
私たちの免疫システムは、 臓器、 細胞、 組織が互いに連携して侵入者を撃退し、 損傷を修復する複雑なネットワーク機能を有します。
体が外傷に対して免疫反応を起こすことを「急性炎症」といい、 怪我を治し回復させるために不可欠な機能です。
しかし、 修復すべき傷害や戦うべき抗原がないにもかかわらず、 体が免疫反応を起こし続けている場合があります。 これは「慢性炎症」と呼ばれ、 心臓病、 脳卒中、
潰瘍性大腸炎、 クローン病など、 さまざまな病気に関連しています。
健康な免疫システムは、 良性の物質を受け入れる一方で、 病原菌やウイルスを攻撃することで、 バランスを保っています。 このバランスが崩れ、
免疫系が過剰に働くと、 喘息や湿疹、 アレルギーの原因となります。 これは、 免疫系が無害な抗原に過剰に反応し、 不釣り合いな免疫反応を起こしているのです。
さらに、 アレルギーや自己免疫疾患の発症に腸内フローラが関与しているという新たな研究成果も出てきています。
一方、 免疫系の働きが弱いと、 外敵に感染しやすくなります。 例えば、 「重症複合型免疫不全症」は、 重要な白血球を生まれつき持っていない子供たちの病気です。
こうした遺伝のほか、 喫煙、 過度の飲酒、 栄養不良などが免疫系を低下させます。 また、 薬物療法、 特に化学療法も免疫系を弱め、
抗原からの攻撃に対して脆弱になります。
ヒトの腸には、 体の免疫細胞の70%が集まっている
消化管は食物を体に取り入れる入り口であり、 免疫システムの出発点です。 私たちの腸には、 体内のリンパ系免疫細胞の70%が集まっており、
腸管関連リンパ組織(GALT)の腸管内壁に沿って存在しています。 これらの免疫組織は、
有害な病原体に対する炎症反応を調整する一方で無害な微生物に対する耐性を促進します。
GALTにある細胞が、 腸のバリアを通して通過する粒子をチェックします。 このシステムがうまく機能しているとき、 これらの細胞は無害な粒子を許容し、
有害な侵入者を排除するという微妙なバランスを保っています。 私たちの腸は、 どの細菌を受け入れ、 どの細菌を攻撃すべきか判断できるよう、
腸内細菌は免疫細胞を訓練します。
腸内フローラによる免疫細胞の訓練
免疫は遺伝子に組み込まれているわけではなく、 1~5歳頃から腸内細菌がGALT免疫細胞を訓練して、 有益な細菌や常在菌を許容し、
不必要な炎症を防いでいるのです。
(
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/imm.12896)
腸内フローラが多様であればあるほど、 免疫細胞は有害な病原体と無害な細菌を区別する能力が高まると考えられています。 多様性が高いほど、
免疫細胞は幅広い訓練を受けることができ、 それが後々役立ってくるのです。 また、 腸で起こったことは腸にとどまらず、 全身の免疫系に影響を及ぼします。
初期の腸内フローラの乱れが大人になってからの健康問題につながるのではないかと推測する研究者がおり、 この考えを「Hegiene
hypthosesis(衛生的偽性)」と呼んでいます。
赤ちゃんの腸内フローラとアレルギーの関係
胎児は妊娠中、 羊膜の袋に包まれて母親の子宮の中にいます。 子宮の中で、 胎児は母親の免疫システムによって浄化された血液と食物によって生命を維持しています。
羊膜が破けると、 赤ちゃんは膣の中にいる何百万ものバクテリアの洗礼を受けることになります。 生まれてから3年間は、 赤ちゃんの腸内フローラが徐々に形成され、
その後安定してきます。 この間、 赤ちゃんは母乳や環境から微生物を取り込みます。 土で遊んだり、 おもちゃを噛んだりするたびに、 新種の細菌が体内に入ってきて、
免疫システムの強化を促します。 新種の細菌は大腸に届く前に死滅しますが、 ほんの一部の細菌が新しい細菌の集合体を形成します。
一般的に1~3歳児の腸内フローラ発達期に多様性とバランスが低下すると、 アレルギーや自己免疫疾患のリスクが長期的に高まる可能性があることを示す証拠があります。
例えば、 帝王切開で生まれた子どもは、 経膣で生まれた子どもと比較して、 微生物の構成が著しく異なることが観察されています<
https://www.nature.com/articles/d41586-019-02807-x>。 さらに、
喘息やアレルギーの発症率も高くなるようです<
https://aacijournal.biomedcentral.com/articles/10.1186/s13223-019-0367-9>。
欧米では、 科学の発展と技術革新により、 感染症の発生率は低くなっていますが、 アレルギーや自己免疫疾患が劇的に増加しています。 その原因として、
帝王切開による出産の増加、 清潔志向の高まり、 抗生物質の過剰使用が考えられます。 これらはすべて、 発達中の腸内フローラ、
ひいては適切な免疫訓練を乱すものであると考えられています。 <
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4056765/>
帝王切開での出産や哺乳瓶での授乳がアレルギーのリスクを高めたかもしれませんが、 その後に免疫力の強化に取り組むことでリスク回避は可能です。
腸内細菌の多様性とバランスを保つことで、 免疫力を高めることができます。
腸内フローラと慢性炎症
私たちの腸内フローラのバランスと多様性は、 体内の炎症に影響を与え続けています。 例えば、
善玉菌は植物性繊維を発酵させる際に酪酸(短鎖脂肪酸(SCFA)を生成し、 腸壁を強化し、 免疫バランスの維持に役立つだけでなく、 慢性的な炎症からも守ります<
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/imm.12933>。 さらに、 酪酸は、
私たちの体の免疫反応を媒介する免疫鎮静化細胞を刺激することもできます。
健康な腸では、 上皮内膜(腸壁)がほとんどのエンドトキシンのGALT免疫細胞への活性化を防ぎますが、 腸内フローラの多様性が低いと、 腸管透過性が高まり、
より多くのLPS(リポ多糖)が体内に入り込み、 免疫受容体から体内の炎症を引き起こす可能性があります。
ダイエット、 腸内フローラ、 免疫性の関係と健全な免疫のための食事
腸内フローラの健康状態を示す重要な指標は多様性とバランスです。 逆に、 多様性の低さとバランスの悪さは、 クローン病や潰瘍性大腸炎など、
多くの炎症性疾患と関連しています。 例えば、 森ではたくさんの種類の細菌が協力してシステムの安定性を保っていますが、 ある種が多すぎたり、
他の種が少なかったりすると、 森のバランスが乱れます。 多様性は、 生態系をより強固にするため有益です。
あなたの腸内フローラも森と同様です。 自分の中のジャングルの中で、 天候をコントロールし、 生態系を形成しているのです。 腸内フローラの構成が乱れ、
多様性が損なわれる要因は数多くあり<
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31628992/>主なものは以下の通りです。 * 過剰な抗生物質
* ストレス
* 食生活の乱れ(特に食物繊維の不足)
* 座りっぱなしの生活
植物性繊維、 全粒穀物、 果物、 豆類を豊富に含む食事は、 善玉菌にとって堆肥のようなものです。
これらの食品はすべて酵素が分解するのに苦労する難消化性の繊維質(レジスタントスターチ)を含んでいます。 そのため、 消化されないまま大腸に到達し、
そこでプロバイオティクス(腸内の善玉菌が増えやすい環境に整える役目をするもので、 糖質や乳製品、 食物繊維などを含む食品)のエサになります。
グロニゲン大学の研究<
https://gut.bmj.com/content/70/7/1287>では、 消化器内科医のチームが、 試験対象者をクローン病群、 潰瘍性大腸炎群、
過敏性腸症候群、 一般人という4つのグループに分け、 1,425人の腸内フローラを分析しました。 その結果、 豆類、 パン、 魚、
ナッツ類を含む食事パターンは、 日和見菌の数、 エンドトキシン、 便中の炎症マーカーが少ないことが明らかになりました。
慢性炎症は以下の疾患と関連があることがわかっています。 * うつ病
* 心臓病
* 癌
* 関節炎
* 炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、 クローン病など)
地中海沿岸の人々の食習慣に基づき、 植物性繊維、 豆類、 全粒穀物、 果物、 ナッツ類を多く摂取する食事法を地中海食と呼びますが、
これは腸内フローラと健康全般にとって最適な食事といえます。 この食事法を実行すると、 心臓病、 脳卒中、 肥満、 2型糖尿病のリスクが低下することが、
数多くの研究により明らかにされています。 <
https://www.hsph.harvard.edu/nutritionsource/healthy-weight/diet-reviews/mediterranean-diet/
>
酪酸の産生を促進するプレバイオティクス食品の例 * 大麦、 オーツ麦、 ライ麦、 ふすま、 全粒粉
* キノコ類、 りんご、 柑橘類、 ベリー
* 玉ねぎ、 にんにく
腸内フローラ、 免疫、 コロナ後遺症の関係性
コロナ禍が長期化する中、 コロナに感染した人は、 感染後数週間から数ヶ月間にも渡りコロナ後遺症を発症し、 疲労感、 脱力感、 不眠を体験した人が多いようです。
研究者らは、 一部の人々がコロナ後遺症が長くなる原因は定かではないが、 免疫反応の過度な増大や細胞損傷が関与している可能性が高いと推測しています。
そこで研究者らは、 コロナ後遺症が長期化している患者さんにおいて腸内フローラが関与しているかどうかを分析しました。 科学者チームは、
さまざまな程度のコロナ感染者106人と感染していない68人について、 腸内フローラの多様性を測定しました。 この結果は、 権威ある専門誌「British
Medical Journal」に掲載されました。 <
https://www.bmj.com/company/newsroom/make-up-of-gut-microbiome-may-be-linked-to-long-covid-risk/
>
測定結果で分かったことは、 長期のコロナ後遺症に悩む患者さんは、 腸内フローラの多様性と量が少なかったということです。
一方で後遺症を発症していない患者さんの腸内細菌叢は、 コロナを発症していない患者さんと同様でした。 コロナ後遺症を発症した人の腸内フローラを分析した結果、
以下のような免疫力を高めることが知られている細菌が枯渇していることを発見しました。 * Bifidobacterium
pseudocatenulatum(ビフィドバクテリウム・シュードカテニュレイタム)(ビフィズス菌の一種)
* f. prausnitzii(フィーカリバクテリウム
プラウスニッツイ)酢酸を消費して、 健康に有益な酪酸を産生
* roseburia
hominis(ローズブリア・ホミニス)炎症性腸疾患に関係のある腸内細菌叢
まとめ
腸内細菌は免疫細胞の訓練に重要な役割を果たすだけでなく、 細菌やその代謝産物は、 私たちの免疫反応を刺激したり和らげたりすることができます。 さらに、
多様性に欠け、 病原性細菌が優勢な腸内フローラでは、 炎症性疾患のリスクが高まります。 逆に、 バランスがとれており、
プロバイオティクス細菌が豊富な腸内フローラでは、 慢性炎症と疾患リスクから身を守ることができるのです。
遺伝子とは異なり、 腸内フローラは動的で、 食事やライフスタイルに反応します。 このことを念頭に置き、 プレバイオティクスを多く含む植物性繊維や、
低脂肪の食事をすることで、 私たちの免疫力をサポートすることができます。 これにより酪酸のような抗炎症性代謝産物を生み出すことにつながります。
免責事項:この記事は情報提供のみを目的としたものです。 専門的な医学的アドバイス、 診断、 治療の代わりとなるものではありません。
「アトラス遺伝子検査」
ユーザーの唾液サンプルから遺伝子データを解析・解釈・可視化します。 予防・改善可能な疾患発症リスクにフォーカスした検査です。 この検査によって2型糖尿病、
クローン病、 パーキンソン病などの13の多因子疾患発症リスクを評価するとともに個人特性・形質を判定します。
科学的根拠に基づいたパーソナライズされた健康増進アドバイスを提供します。
「アトラス腸内フローラ検査」
ユーザーの糞便サンプルから微生物遺伝子を解析、 解釈、 可視化します。 この検査でユーザーの腸内フローラの酪酸・ビタミン合成能力、 食物繊維の分解能力、
腸内フローラの多様性、 プロバイオティクスと善⽟菌の状態を評価します。 さらに2型糖尿病、
クローン病などの5の疾患の発症リスクから腸内フローラがどの程度保護してくれているかを評価します。 さらに腸内フローラのタイプを判定し、 検査結果を基に、
パーソナライズされた食事に関するアドバイスを提供します。
ユーザーの唾液、 糞便サンプルはアトラスバイオメッドに送られ、 分析されます。 Atlas検査を受けたユーザーは、
アトラスバイオメッドがオンラインで提供するパーソナルアカウントにアクセスし、 検査結果、
健康状態の改善に結びつくことが科学的に証明されているパーソナライズされたアドバイスやお勧めの食品を確認することができます。
アトラスバイオメッドについて
アトラスバイオメッドは、 2016年にイギリスで設立されたパーソナライズドヘルス企業です。 遺伝子および腸内フローラ領域の最先端技術と、 ユーザーの遺伝子、
腸内フローラ、 ライフスタイルデータを組み合わせることで、 健康状態を多面的に把握します。 それらをもとにパーソナライズされたアドバイスを提供し、
健康に関する意識向上及びデータに基づいた意思決定を支援します。 アトラスバイオメッドの検査キットは、 英国、 欧州16か国および日本で提供しています。
アトラス合同会社はアトラスバイオメッドの日本の子会社です。
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