拠り所のない時代に「こころの支え」となる、生きるための言葉。『永遠の詩2 茨木のり子』
「今だから響く」「元気が出る」「迷いがなくなる」「色あせない感性」・・・茨木のり子の詩が時を超えて愛される理由。
戦後を代表する女性詩人・茨木のり子の詩集が今、 売れている。 没後16年経っても尚、 人気を博している理由はなんなのか。
茨木のり子は、 1926年大阪に生まれた。 第二次世界大戦敗戦の年には19歳。 若い女性の視点から、 戦中・戦後の実相をすくい取った。
2006年に79歳で亡くなるまで、 多数の叙情詩を創作した。
本書で各詩の鑑賞解説をしている高橋順子は、 茨木のことを「生きかたについて示唆してくれる数少ない女性詩人」 と評す。
«荒廃した国土の中で誰もが萎縮していたときに、 自分と他人を勇気づける詩を書いた。 名詩「根府川の海」「わたしが一番きれいだったとき」などは、
時代を超えて人々の感銘を呼び、 心を揺さぶる。 »
(本書「時代を超えて、 りんと」より/高橋順子)
茨木の詩には弱った心を勇気づける力がある。 混迷する社会で格差や分断が進み、 己の環境を呪いたくなることもあるが、 茨木からの“檄”が、
みずからの弱さや甘えを浮き彫りにし、 凝り固まったマインドをリセットするきっかけをくれる。 ここに一部抜粋する「自分の感受性くらい」は、
人を“鼓舞する”茨木の象徴ともいえる詩だ。
«初心消えかかるのを
暮しのせいにはするな
そもそもが ひよわな志にすぎなかった
駄目なことの一切を
時代のせいにはするな
わずかに光る尊厳の放棄
自分の感受性くらい
自分で守れ
ばかものよ»
(本書「自分の感受性くらい」より抜粋)
弱さを乗り越えるために、 自分自身を奮い立たせているかのような彼女の言葉は、 まっすぐで力強く、 それでいてあたたかい。 先行き不透明な時代でも、
自分らしく生きるには何が必要かを教えてくれる。
ヒューマニズム溢れる名詩から、 亡夫を想う挽歌までの36篇を、 鑑賞解説付きで収録。
* 「嘘がつけない人だった。 詩においても、 生活においても」――谷川俊太郎(詩人)
* 「言葉が滅んだ時代に、 なお発光し続ける言葉がここにある」――後藤正治(ノンフィクション作家)
* 「よく生きたい――心底そう願うとき、 このひとの詩が背中を押す」――梯久美子(ノンフィクション作家)
〈目次〉
根府川の海
対話
方言辞典
見えない配達夫
ぎらりと光るダイヤのような日
六月
わたしが一番きれいだったとき
小さな娘が思ったこと
怒るときと許すとき
女の子のマーチ
汲む
一人は賑やか
みずうみ
握手
兄弟
吹抜保
自分の感受性くらい
知命
木の実
幾千年
落ちこぼれ
この失敗にもかかわらず
花ゲリラ
寸志
隣国語の森
答
さゆ
食卓に珈琲の匂い流れ
時代おくれ
倚りかからず
ある一行
夢
恋唄
急がなくては
(存在)
歳月
高橋順子「時代を超えて、 りんと」
天野祐吉「茨木さんの素顔」
主著・参考文献
茨木のり子年譜
——————————————————-
『永遠の詩2
茨木のり子
著/茨木のり子 選・鑑賞解説/高橋順子
定価:1320円(税込)
判型/頁:4-6/128頁
ISBN978-4-09-677212-6
小学館より発売中
本書の紹介ページはこちらです↓↓↓
https://www.shogakukan.co.jp/books/09677212
——————————————————-
【著者プロフィール】
茨木のり子(いばらぎ・のりこ)
1926年(大正15)~2006年(平成18)。 敗戦後、 結婚前後から詩を書き始め、 川崎洋とともに詩の同人誌「櫂」を創刊。
ヒューマニズムと批評精神溢れる詩で多くの読者の心を鼓舞した。 戦後を代表する女性詩人にして、 エッセイスト、 童話作家でもあった。
★「永遠の詩」シリーズ全巻はこちら↓↓↓
https://www.shogakukan.co.jp/books/volume/21482
永遠の詩シリーズは、 今日的に意義のある詩人をとりあげ、 代表作を厳選したものです。 わかりやすい解説で、 詩があなたにもっと近くなります。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません