ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)のヒトでの安全性・代謝への影響を解明、学術雑誌に掲載されました。

(本社:東京都千代田区、 代表取締役社長:岸本 好司、 以下「当社」) では、 健康機能素材の研究開発を進めています。

ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)のヒトでの安全性と代謝への影響を解明することを目的とした臨床試験を富山大学との共同研究にて実施しました。

この研究成果が学術雑誌 Frontiers in Nutritionに掲載されました。

当社は、 引き続きライフサイエンスの技術の力で世界の人々に生きる喜びと豊かな生活をお届けできるよう努めてまいります。

■発表のポイント * 健常成人を被験者としてニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+、 注1)の前駆体であるニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN、

注2)を1日250mg、 12週間連続して経口摂取した際の安全性および代謝への影響を検討しました。

* 12週間のNMN経口摂取で、 血液、 尿検査および医師による検査において重篤な有害事象は認められませんでした。

* 生体内における代謝経路を網羅的に解析した結果、 NMNの摂取が血液中のニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD、

注2)の量を大きく増加させることを明らかにしました。

■発表内容

研究背景

近年、 さまざまな研究手法の発展により、 老化のメカニズムに関する研究が非常に盛んになってきました。

その中で栄養・代謝と老化との関連は大きな注目を集めています。 例えば、 食事の摂取カロリー制限は、 様々な生物において、

寿命の延長効果や老化の抑制効果がみられることが知られています。 カロリー制限では、 長寿遺伝子と呼ばれるサーチュインの活性化が、

抗老化作用のメカニズムの一つと考えられていますが、 サーチュインを活性化するために必要な物質がNADです。 しかしながら、 ヒトやマウスでは、

加齢によって体内のNAD量が減少することが知られおり、 これが老化の原因の一つであると考えられています。 そのため、

加齢によって減少するNAD量を補充する目的でNADの材料となる前駆体であるNMNを摂取する試みがなされております。 ヒトにおいてもいくつかの臨床試験が実施され、

抗肥満、 エネルギー代謝改善作用や高齢者の運動機能改善効果を示すことが報告されています。 一方で、 ヒトでの安全性、

血液中の代謝物濃度変化への影響については十分なデータが得られておらず、 臨床研究における知見の蓄積が課題となっています。 そこで、

健常成人がNMNを摂取した場合の安全性と代謝への影響を明らかにするために、 無作為化プラセボ対照二重盲検並行群間比較試験(注3)を実施いたしました。

研究内容

日本人の健常な成人男女30名を対象として、 1日250mgのNMNまたはプラセボ(注4)を12週間にわたって連日摂取していただき、 安全性、

代謝への影響を検討しました。 血液検査においては、 総蛋白、 クロライド、 鉄及び総コレステロールにおいて群間有意差が認められましたが、

基準値内の変動範囲内でした。 尿検査において懸念事項は認められませんでした。 また、 NMN摂取による重篤な有害事象は認められませんでした。

質量分析計という代謝物を精密に計測できる機器を用いて、 血液中の代謝物濃度の変化をNMNまたはプラセボ摂取開始前、 摂取開始後4週、 8週、 12週、

摂取終了後4週(摂取開始後16週)に測定したところ、 NMN摂取群では摂取開始後4週より血液中NAD量が増加することが確認されました。

またこの血中NAD濃度の上昇は摂取終了後、 4週(摂取開始後16週)の時点で摂取開始前と同濃度に戻っており、

摂取時状態の血中NAD濃度を維持するためには継続摂取が必要であることが示されました。

■発表雑誌

雑誌名:Front Nutr. 2022; 9: 868640.

論文タイトル:Oral Administration of Nicotinamide Mononucleotide Is Safe and

Efficiently Increases Blood Nicotinamide Adenine Dinucleotide Levels in Healthy

Subjects

著者:Keisuke Okabe, Keisuke Yaku, Yoshiaki Uchida, Yuichiro Fukamizu, Toshiya

Sato, Takanobu Sakurai, Kazuyuki Tobe, Takashi Nakagawa

DOI番号: 10.3389/fnut.2022.868640

■用語説明

(注1)ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)

生物の主な酸化還元反応において必須の成分であり、 酸化的リン酸化の中心的な役割を担う。 一方で、

特定の遺伝子の機能を調整して老化に関わることが知られるようになった。

(注2)ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)

NAD+合成の前駆体となることが知られており、 ビタミン B3 群に属する。 食品ではブロッコリー、 枝豆、 アボカド、 マッシュルーム、

肉の赤身などに多く含まれる。

(注3)無作為化プラセボ対照二重盲検並行群間比較試験

被験者は対照群と摂取群のいずれかにランダムに割り付けられ、 各群間における差をみることで、 有効性と安全性が検証される。

どちらのグループにどちらを投与しているかを、 臨床試験実施に関わるすべての人間が一切知らずに行われる。

(注4)プラセボ

評価対象の機能成分を含まずに見た目や味・香りに違いがないもの。

■添付資料図1 試験期間中の血中NAD+濃度の推移

図1 試験期間中の血中NAD+濃度の推移

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