次世代医療「リハビリロボット」普及率8%
重症な患者に対応する「急性期病院」の経営コンサルティングなどを行う株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC ※1=本社・東京都新宿区、
代表取締役社長・渡辺幸子)はこのほど、 退院後の「生活の質(Quality of Life)」向上が期待される次世代医療「リハビリロボット
※2」(図参照)の利用実態を調査しました。 これによると、 リハビリロボットを利用する病院は全国で8%と1割に満たない状況が明らかになりました。
リハビリロボット活用による病院への報酬要件と、 リハビリ現場での使用実態とにズレが生じていることが、 普及を阻んでいる可能性があります。 出典:中央社会保険医療協議会「20190918 個別事項(その1)」
出典:中央社会保険医療協議会「20190918 個別事項(その1)」
■退院後の「生活の質」を向上
現在、 リハビリロボットの保険適用症例は脳卒中(脳血管リハビリテーション料対象疾患)などで、 2020年4月から上肢・歩行訓練支援、
電気刺激を行うリハビリロボットが全国の医療現場で利用されています。 入院早期に最適なリハビリをすることで、
退院後の自立歩行や地域生活への復帰を高めるとの調査結果(※3)があり、 それをさらに推進する有力な手段としてリハビリロボットの活用が期待されています。
■利用最大でも入院症例のわずか1%
今回の調査は当社が保有する735病院の退院症例(2020年4月から2021年3月)の匿名加工DPCデータ(※4)を分析。
このうち脳卒中などでリハビリロボットを利用しているのは62病院と全体の8.4%でした(※5)。 また、 リハビリロボットを利用する病院であっても、
最大で入院症例のわずか1%でしか利用されていないことが分かりました。利用は最大で入院症例のわずか1%
利用は最大で入院症例のわずか1%
■中小の民間病院が利用傾向
リハビリロボットを利用する病院の属性を見ると、 主にリハビリを行う「回復期リハビリテーション病棟」を保有する199床未満の中小病院で、
設立母体としては民間病院が多い傾向でした。
■「ボトルネック解消で普及に弾みを」
調査を担当した理学療法士でGHCアナリストの穴田周吾は、 「リハビリロボットのメリットは、 療法⼠による技術や手法のばらつきが少なくなることで、
退院後の生活の質向上に寄与する可能性があることです。 脳⾎管リハビリテーション料の対象疾患は脳卒中などを含み、 リハビリ提供で国内1、
2位を争うボリュームがあるので患者数は多いです。 国が掲げる『ロボット×医療・介護』の各政策や輸出戦略などともマッチします。 ただ、
リハビリロボット活用による加算の報酬要件が発症2月以内であるため、 加算対象外の利用ケースが相当数出ている可能性が少なくないです。 これは加算の算定実績がある、
リハビリロボット等をすでに備えている病院においてもデータ上で使用率が高く出ない理由に繋がったと思います。
また、 高額な機器に対する診療報酬の点数は現在は月に1度1500円と低いので、 経営面のインセンティブが少ないのですが、
まずは算定症例のポテンシャルがないかの確認と、 加算の算定フローについて職員の共有が必要です。 そして、
導入による医療の質の向上や適切なPRでの増患効果や職員の採用など、 直接的な収益以外にも大きなメリットはあると考えています」とコメントしています。
本分析のレポート詳細は「
https://www.ghc-j.com/document/reha_2206/」からダウンロードできます。
当社では今後も医療の質向上や病院経営の効率化に関するテーマを軸に医療ビッグデータを分析し、 情報発信してまいります。
(※1)株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン
医療専門職、 ヘルスケア企業出身者、 IT専門家らで構成される経営コンサルティングファーム。 急速な高齢化で社会保障財政の破たんが懸念される中、
「質の高い医療を最適なコストで」の理念を実践する具体的な手法として、 米国流の医療マネジメント手法「ベンチマーク分析」を日本に初めて持ち込み、
広めたパイオニアです。
(※2)リハビリロボット
リハビリテーション分野でのロボット活用によるエビデンスに基づき、
2020年度診療報酬改定で新設された「運動量増加機器加算」の算定対象となる上肢・歩行訓練支援ロボットおよび機能的電気刺激(FES=Functional
Electrical Stimulation)を活用したリハビリを本記事内では指す。 リハビリテーション料に対して複数機器が対象の報酬としては初めて。
ロボットの医療・介護活用としては、 2012年度診療報酬から保険適用された手術支援ロボット「ダ・ヴィンチ」、
2016年度診療報酬からの歩行支援ロボットスーツ「HAL」などがある。
(※3)リハビリが医療の質向上に寄与するとの調査結果
『脳卒中高度専門病院における急性期から安定期までの脳卒中リハビリテーションによる帰結–連続症例1,189例の調査』によると、
「入院早期に医師が診察し理学療法、 作業療法を開始すると、 若年者の64.2%、 高齢者の42.2%は歩行が自立し、 若年者の60.2%、
高齢者の52.8%は地域生活へ復帰した」と報告されている。
https://cir.nii.ac.jp/crid/1570854174647855744
(※4)匿名加工DPCデータ
包括支払い方式で入院医療費を請求する「DPC(診療群分類別包括払い)制度」の対象病院が作成を義務付けられている「DPCデータ」にある個人情報を匿名加工したもの。
DPC制度は、 従来型の出来高制度と比較して、 1日当たりの報酬が決まっているため、 過剰な診療の抑制や必要なコスト削減を促すことが期待できる。
主に病床数が多く、 重症患者を診療する急性期病院の多くが導入している。 対象病院は1730病院。
(※5)リハビリロボットの利用実態に関する調査方法
当社が保有する735病院の退院症例(2020年4月から2021年3月)の匿名加工DPCデータについて、 多職種でリハビリの総合実施計画書を作成し、
共に実施・効果検証をした際に報酬を得られる「リハビリテーション総合計画評価料」を算定した症例かつ「脳血管リハビリテーション」の算定症例のうち、
「運動量増加機器加算」の算定症例を抽出した。
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