ニキビの“繰り返し”に炎症関連タンパクが関与
ニキビの炎症を抑える成分とスキンケア製品の有効性を報告 株式会社ファンケルは、 ニキビが繰り返し発症する肌の改善を目的とした研究を、
当社独自の肌解析方法「角層バイオマーカー」1)で行っています。
今回、 繰り返すニキビと皮膚の炎症の関係について研究し、 皮膚の炎症に関わるタンパク「NGAL(ゼラチナーゼ関連リポカリン)2)」が、 ニキビ発生時のみならず、
肌の表面上にニキビ症状がない時にも、 皮膚内で過剰に増加していることを発見しました。 これによりニキビが発生していない状態でも、
皮膚の中では炎症が継続している可能性と同時に、 皮膚の炎症が繰り返して発症するニキビに関与することを明らかにしました。
さらに、 過剰に発生した「NGAL」を抑制する成分として、 皮膚細胞を用いた実験で「トラネキサム酸」を見いだし、
トラネキサム酸および抗炎症成分を配合したスキンケア製品を用いた連用試験において、 赤ニキビ(炎症性皮疹)の数が減少し、 ニキビが改善されることを確認しました。
なお、 本研究成果は第121回 日本皮膚科学会総会(2022年6月2日~5日 於:京都)にて発表しました。 <研究方法・結果>
【ニキビを繰り返す人は、 ニキビが消えている時も角層に含まれる「NGAL」量が多い】
ニキビを繰り返すと自覚のある人のうち、 皮膚科専門医3)による診断で炎症を伴うニキビであると判定された人(以降、 ニキビ群と表記)7人に、
ニキビの発症を繰り返す経過に沿って計5回、 角層中の「NGAL」量を「角層バイオマーカー」で測定しました。 同時に、 ニキビができにくいと自覚のある人(以降、
非ニキビ群と表記)6人からも計5回、 「NGAL」量を調べました。 その結果、 炎症を伴うニキビがある部分、 およびそのニキビと同じ部位でニキビがない部分、
そして頬部の各角層中にある「NGAL」量が、 ニキビができにくい人の頬部と比較して高値で推移していました(図1)。 また、
ニキビが肌の表面上から消えた7日後においても、 有意に値が高い結果でした(図2)。 つまり、 ニキビができやすい人は、
ニキビが消えている時も肌内部で「NGAL」が過剰に増え、 炎症状態であることが示唆されました。
【トラネキサム酸がアクネ菌(Cutibacterium acnes ,C.Acnes)4)で過剰に増加した「NGAL」を抑制】
炎症に関わる過剰な「NGAL」を抑制する成分の探索を行いました。 最初に、 表皮角化細胞にアクネ菌を添加し、
炎症性サイトカインの増加と「NGAL」の産生が連動することを確認しました。 そしてこの評価系を用い、 過剰に増加する「NGAL」を抑制する成分を探索しました。
その結果、 抗炎症効果が知られるトラネキサム酸5)に、 過剰な「NGAL」を抑制する効果を確認しました(図3)。 この結果により、
トラネキサム酸を配合した抗炎症のスキンケア製品は、 過剰な「NGAL」の抑制に有効であることが期待されます。
【抗炎症成分配合のスキンケア製品を連用することで、 ニキビの症状の改善を確認】
皮膚科専門医が軽症から中等症と判定した20歳から38歳の女性19人に、
トラネキサム酸および抗炎症成分を配合したスキンケア製品(洗顔料・化粧水・エッセンス・ジェル状乳液)の8週間連用試験を行いました。
使用の前後におけるニキビの状態を比較し、 使用後においては赤ニキビ(炎症性皮疹)の数が減少し、 ニキビが改善されることを確認しました(図4、 図5)。
<今後の課題>
さらに、 ニキビ発症機序への「NGAL」の関わりについて詳細を調べるとともに、 男性や思春期層のニキビにおける有効性評価などを行い、
より多くのニキビ悩みに寄り添う研究成果を創出していきます。
【用語説明】
1)角層バイオマーカー:頬に貼ったテープ1枚から取れた角層のタンパクの分析から、 一人ひとり異なる肌状態や老化リスクを解析するファンケル独自の測定技術。
2)NGAL:好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン。 尿中や血中のNGALは急性腎障害などの炎症性疾患のマーカーとして知られるタンパク。
皮膚では尋常性ざ瘡患者の角層に含まれる「NGAL」量が健常者より高値であることや、 角化で増加することが報告されている。
3)皮膚科専門医:皮膚に関する知識と医療技術が十分であることを認められた皮膚科医。
4)Cutibacterium acnes (C.Acnes):アクネ桿菌、 アクネ菌。 皮膚常在菌であり、 ニキビ炎症の原因の一つ。
肌を弱酸性に保つ働きもする。
5)トラネキサム酸:trans-4-(aminomethyl)cyclohexanecarboxylic acid, Tranexamic acid。
抗炎症薬や美白化粧品に使われている成分。
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