イタリア政府観光局 夏の現地イベント・注目エリア情報を発表
余暇を意味する「バカンス」はイタリア語で「Vacanza(ヴァカンツァ)」。 語源はラテン語で「からっぽ」の意味だそうです。 仕事を忘れ、
とにかく何もしないということを実践するイタリアのヴァカンツァ・シーズンがいよいよ本番を迎える時期がやってきました。 今月のニュースレターでは、
そんなイタリアでこの時期催されるイベントや、 見どころについてご紹介します。 1.マルケ州内の珠玉の街々で開催される夏のイベント各種
Beautiful Cities in Marche and their Summer Events
イタリア中東部、 アドリア海に面するマルケ州は、 イタリア・ルネサンス時に花開いた芸術文化遺産や、 海と山の幸に恵まれた豊かな食文化など、
見どころ満載の州です。 今回は州内の魅惑的な街で開催される夏のイベントと、 それぞれの街のみどころをご紹介します。 * ウルビーノ Urbino
15世紀、 名君フェデリコ・ダ・モンテフェルトロ公がこの街をイタリア・ルネサンスの文化・芸術の中心地の一つとして確立し、 歴史上に名を残す芸術家、
ラファエッロやブラマンテを輩出したことでも知られる街、 ウルビーノ。 ルネサンス時代の歴史的建築物がほぼ完全な形で残っていることから、
1998年に街の中心部がユネスコの世界遺産に登録されています。
そんな古都、 ウルビーノでは毎年夏の時期、 7月には古代音楽祭(Festival di musica antica)、 8月は名君の公爵を祝うお祭り
フェスタ・デル・ドゥーカ(Festa del Duca)が開催されます。 16世紀当時の衣装を纏った人々が行列して街中を練り歩き、
音楽コンサートや美術展示会なども同時開催、 そして9月は凧祭り(Festa dell’Aquilone)と、 毎月魅力的なイベントが開催されます。巨匠ラッファエッロの故郷で世界遺産の街、
ウルビーノ(C)Regione Marche
巨匠ラッファエッロの故郷で世界遺産の街、 ウルビーノ(C)Regione Marche
街の一番のみどころといえるのが、 ウルビーノ公国の君主に即位したフェデリコ・ダ・モンテフェルトロ公が1444年に建設を命じたドゥカーレ宮殿。
外観の美しさや保存状態の良さだけでなく、 細部に至るまで美しい装飾が施されている内観も見逃せない観光スポットです。
ドゥカーレ宮殿は国立マルケ美術館としても運営されていて、 ウルビーノ出身の巨匠ラファエロの作品「黙っている女」をはじめ、
ルネッサンス絵画の輝かしいコレクションが保管されています。
それ以外にも、 ラファエッロの生家博物館、 19世紀の初めにかけて建て替えられたネオ・クラシック様式のウルビーノ大聖堂、
大聖堂に併設されているアルバーニ博物館など、 数多くの観光スポットが揃っています。
* マチェラータMacerata
アドリア海から約20キロ内側にある、 14世紀に作られた城壁に囲まれた街、 マチェラータ。 この街では1967年から毎年夏、
1823年に建造されたネオクラシック様式の美しい建造物、「スフェリステーリオ」を会場として野外オペラ祭、マチェラータ・オペラ・フェスティバル(
https://www.sferisterio.it/en/macerata-opera-festival-2022
)が開催されています(本年の開催は7月19日から8月21日まで)。 8月に同じくマルケ州の街、 ペーザロで開催されるロッシーニ・フェスティバル(
https://www.rossinioperafestival.it/en/
マチェラータ・オペラ・フェスティバルの会場 「スフェリステーリオ」(C)Regione Marche
マチェラータには、 ルネッサンスおよびバロック時代の建造物をはじめ、 価値あるモニュメント、 教会、 宮殿が数多く残っています。
後にパオロ三世となるアレッサンドロ・ファルネーゼ教皇特使の命により16世紀初頭、
建築家カッシアーノ・ダ・ファブリアーノとマッテオ・サバティーニにより建てられた、 リベルタ広場の「メルカンティの開廊」をはじめ、
1774年に貴族のための劇場として建造されたラウロ・ロッシ劇場(ラウロ・ロッシは、 マチェラータ出身の音楽家)や、 ベルタ広場の時計の塔はその一例にすぎません。
高さ65メートルを誇るベルタ広場の時計の塔は、 当時マチェラータが誇っていた権力と富の象徴とされ、 1663年に建てられました。
訪れる価値のある博物館も揃っており、 年代物自動車博物館市民博物館、 市立美術館、 20世紀のイタリア美術のコレクションが収蔵されている、
リッチ宮殿は特にお勧めのスポットです。
* アスコリ・ピチェーノAscoli Piceno
マルケ州の南に位置するアスコリ・ピチェーノ。 中世やルネッサンス時代の建築物が数多く残る街並みが印象的な街です。
古代ローマ以前に存在した民族「ピチェーノ族」によって築かれたこの歴史深い街は、 2つの川が合流し、
岩山の麓であるというロケーションが外敵からの防備に適していたことから、 古代ローマ帝国時代には植民都市としての役割を果たしました。
そんなアスコリ・ピチェーノでは、 毎年8月の第1日曜日、 中世騎士時代のシーンを再現する、 文化イベント、ジオストラ・デラ・クインターナが開催されています。
メインイベントは中世時代の自治区分である「セスティエーレ」毎に競う馬上競技レースで、 当時の騎士のコスチュームを纏った走者が、
八の字型に設定されたコースを馬に乗って疾走しながら、 「クインターナ」と呼ばれる的の人形を槍いて回転させると獲得できるポイントで勝敗を争うというものです。
レースの前には、 15世紀当時の貴族女性や騎士の艶やかな衣装に身を包んだ約1,200人が、 旧市街の街を練り歩く歴史的なパレードも開催されます。
アスコリ・ピチェーノのポポロ広場(C)Regione Marche
アスコリ・ピチェーノのポポロ広場(C)Regione Marche
街の中心部に残る歴史的建造物ほぼ全て、 大理石の一種であるトラバーチンで建てられており、 その芸術的かつ建築的な価値は高く評価されています。 また、
街の中には当時の大鐘楼が数多く残っており、 「百の塔の街」と評されることもしばしばです。
観光の拠点となるのは2つの広場で、 中心部にあるのがルネッサンス様式のポポロ広場。
13世紀に建造されたカピターニ宮殿やサンフランチェスコ教会などの歴史的な建造物が集まっています。 もうひとつがカテドラーレと市役所に面する、
街で最も歴史深い広場、 アッリンゴ広場となります。 カテドラーレの地下礼拝堂では、 11世紀中ごろに作成されたとされる美しいモザイク画を鑑賞いただけます。
* フェルモFermo
町の起源は紀元前10世紀以前の古代エトルリアまで遡る歴史深い街で、 美しい砂浜・海岸が魅力的な街です。 アスコリ・ピチェーノと同様、
ローマ時代以前に文明を持った「ピチェーニ族」の都市として栄えた後、 紀元前3世紀にローマの支配下に入り、
その時代に建造された城壁と塔が今もまだ部分的に残っています。
そんなフェルモで年間を通じてもっとも重要なイベントが、 毎年8月15日に開催される、「聖マリア・アスンタの饗宴」というイベントです。
午前中は住民が聖ミサの祭典に出席し、 午後は当時の貴族や騎士の衣装を纏った人々によるパレード、 さらには競馬祭「パリオ」も開催されます。
夜には街中に大きなテーブルが用意され、 賑やかな食事会が催されます。フェルモのポポロ広場(C)Regione Marche
フェルモのポポロ広場(C)Regione Marche
街の中心をなすのは、 ルネッサンス時代に築かれたポポロ広場です。 細長い長方形のこの広場は丘の頂上に近くに位置しており、 北側には16世紀に建造され、
現在は博物館が併設するデイ・プリオーリ宮や図書館、 東西にはポルティコ(アーケード)が連なる商店、 そして南側には市庁舎が立ち並びます。
フェルモにも数多くの歴史深い観光スポットがあり、 マルケ州内で18世紀に建造された絢爛豪華なアクイラ劇場、
1227年に作られたとされるロマネスク・ゴシック様式のファサードが見事に残されているフェルモ大聖堂、
ジュリアーノ・ダ・リミニによるフレスコ画が残っているサン・フランチェスコ教会などは見逃せません。
マルケ州の観光ウェブサイト(英語)
https://www.turismo.marche.it/en-us/
2.ヴァッレ・ダオスタ州で夏の「ワーケーションのすすめ」
Smart-Working in Valle d’Aosta
フランスおよびスイスと国境を接する、 北西イタリアにあるヴァッレ・ダオスタ州ではこのたび、 「スマートワーク(情報通信(IT)技術を活用した、
場所や時間に縛られない柔軟な働き方)」を実践するのに適した旅行地としてのプロモーションを開始しました。風光明媚な自然に囲まれながら、
高速インターネット接続環境も整っている同州では、 「スマートワーク」に相応しい滞在地などをリストアップしたウェブサイトを開設し、
世界中からの「デジタルノマド(IT技術を活用し国内外を旅しながら働く人々)」や「スマートワーカー」の集客を図ります。
このウェブサイトからは直接滞在先の予約することも出来るようになっています。
州都アオスタは古代遺跡も多い「アルプスのローマ」 @ Foto archivio Regione autonoma Valle dAosta
州都アオスタは古代遺跡も多い「アルプスのローマ」 @ Foto archivio Regione autonoma Valle dAosta
イタリア側から望むモンテ・ビアンコ(モンブラン)と「スカイウェイ・ロープウェイ」駅@Foto archivio Regione utonoma Valle dAosta
イタリア側から望むモンテ・ビアンコ(モンブラン)と「スカイウェイ・ロープウェイ」駅@Foto archivio Regione utonoma Valle
dAosta
モンテ・ビアンコ(モンブラン)、 モンテ・チェルヴィーノ(マッターホルン)、モンテ・ローザ、 グラン・パラディーゾなど、
ヨーロッパが誇る4千メートル級の名峰に囲まれるヴァッレ・ダオスタ州は、 イタリア国内で最も小さな州です。
クールマイユールやチェルヴィニアなどの世界的に有名なスキー場も揃っており、 冬はスキーに、 夏は登山やハイキングにと、
日本をはじめ世界中から毎年数多くの観光客が訪れます。 州の歴史は古代ローマ帝国時代に遡り、 初代皇帝アウグストゥスによって作られた州都アオスタには、
現在でも数多くのローマ遺跡が残されています。
ウェブサイトに掲載されている滞在先の中には近代的なホテルのみならず、 緑に囲まれたコテージのような宿泊施設などもあり、 仕事を効率的にこなしながら、
美しい自然景観や地元の住民との交流を楽しんでいただけます。
「スマートワーク」を実践いただくのにユニークなロケーションとしては、
山岳リゾート拠点のクールマユール最新式回転ロープウェイ「スカイウェイ・モンテ・ビアンコ」ケーブルカーの駅もおすすめです。 特に、
中間駅である「パヴィヨン(Pavillon、 標高2,173メートル)」と頂上駅の「プンタ・エルブロンネル(Punta Helbronner、
標高3,466メートル)」は、 人間と自然の関係性を高めるように設計されていて、 モンブランの圧巻の景観を慈しみながら仕事や勉強をするためのスペースを、
事前に予約することも可能です。
ヴァッレ・ダオスタ州「スマートワーク」のウェブサイト(英語、 イタリア語、 フランス語表記):
https://bookingvalledaosta.it/smartworking/
3.スルモーナの馬上競技レース「ジオストラ・カヴァッレレスカ」が2年ぶりに開催
The “Giostra Cavalleresca” of Sulmona
イタリア中部に位置するアブルッツォ州にある町、 スルモーナでは毎年7月から8月にかけ、 中世ヨーロッパの騎士物語の1シーンを再現したような伝統的なイベント、ジオ
ストラ・カヴァッレレスカが開催されています。 新型コロナウィルス感染症の世界的な拡大で、 2020年から開催が見送られてきましたが、
本年は2年ぶりの開催が決定し、 イベントの中核をなすパレードと馬上競技レースが7月30日(土)と31日(日)に開催されます。
スルモーナの「ジオストラ・カヴァッレレスカ」の様子 @ photo-Associazione Culturale Giostra Cavalleresca
スルモーナの「ジオストラ・カヴァッレレスカ」の様子 @ photo-Associazione Culturale Giostra Cavalleresca
歴史上、ジオストラ・カヴァッレレスカに関する記述が残されているのは、 16世紀の後半にまで遡ります。 メインイベントは、
中世時代の自治区分である4つの地区と3つの村の代表者で競う馬上競技レースで、 角丸長方形のトラック形状のコースを疾走しながら、
ポールに吊るされた異なる直径(6、 8、 10 センチ)の小さなリングを槍で突き刺して集めるというものです。
獲得したリングの数とコースの完走時間で勝敗が決定し、 優勝選手にはスルモーナの金細工職人による、 それぞれの街の紋章が描かれたメダルが付いたネックレスが、
そして優勝選手を輩出した地区及び街には、 毎年異なるアーティストがデザインしたシルク織のバナー「パリオ」が景品として贈呈されます。
レースの前には、 盛期ルネッサンス時代(1450年~1520年)の貴族や軍人の衣装に身を包んだ約700名が街中を練り歩く壮麗なパレートが開催されます。
色鮮やかな旗を運ぶ人、 ドラムや中世の管楽器「キアリン」の奏者などがパレードに彩りを加え、 華やかな中世時代にタイムスリップしたような光景が繰り広げられます。
イベント両日ともに、 パレードは午後4時から午後5時半まで、 レースは午後5時半から午後8時まで開催される予定です。
また、ジオストラ・カヴァッレレスカの関連イベントは7月上旬からスタートしており、 美術展など様々な文化イベントが開催されています。
ユニークなところでは8月5日マナレスカ地区にて、 開催される中世の雰囲気たっぷりの晩餐会「パナルダ」。 スパゲッティーなどを使った郷土料理や、
地元の産物からなる伝統料理の晩餐が準備されるほか、 アルベリ・ソノーリ楽団の演奏、 ストリート・アーティストやミュージシャン、
旗手によるパフォーマンスなどが街の広場で繰り広げられます。
スルモーナの教会や歴史的モニュメントは、 何世紀にも渡り北イタリア地方の建築様式の影響を受けており、
同じく夏の時期に開催される馬上競技レース(パリオ)で有名なことから、 「アブルッツォ州のシエナ」(シエナはトスカーナ州)と表現されることもあります。
中世の面影を残す街並みや建造物が印象的なスルモーナには、 紀元前1~2世紀に作られたとされる「アリアンナの家」や、
紀元前4世紀に建造された「エルコール・キュリーノの聖域」など、 考古学的遺跡も数多く残っています。
また、 スルモーナは、 イタリアの結婚式や卒業式などお祝いの席で配られるアーモンドを砂糖でコーティングしたお菓子、 「コンフェッティ」でも大変有名で、
街のいたるところに「コンフェッティ」専門店が軒を並べるほか、 プチ・ミュージアムもあり、 イタリア中から結婚前の多くのカップルも訪れます。
ジオストラ・カヴァッレレスカの公式ウェブサイト(イタリア語表記):
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