一般的薬剤の投与がおよぼす腸内細菌叢への影響とは?

抗生物質の摂取は腸内フローラの多様性を阻害する可能性あり 世界で唯一、

遺伝子と腸内フローラの検査結果を統合したレポートを提供しているパーソナライズドヘルスソリューション企業、 Atlas Biomed(本社:英国 ロンドン、

CEO:セルゲイ・ムシエンコ、 子会社:アトラス日本合同会社(住所:東京都渋谷区、 代表者:セルゲイ・ミュシエンコ、 以下 Atlas Japan<

https://atlasbiomed.co.jp/>は、 Atlas Biomedに所属する、

人と微生物の関係を研究しているロス・カーヴァー・カーターが6月30日に執筆した「一般的薬剤の投与がおよぼす腸内細菌叢への影響」と題する考察レポート〈

https://atlasbiomed.com/blog/explained-how-proton-pump-inhibitors-and-metformin-interact-with-the-gut-microbiome/#met

〉の抄訳を発表しました。

抗生物質以外の一般的な薬剤が腸内フローラの構成を変化させる一方、 腸内フローラも薬物反応に影響を与えると言われています。 カーターは、

胃酸分泌を抑制する薬であるプロトンポンプ阻害薬や糖尿病治療薬メトホルミンなどの薬剤が腸内細菌叢にどのような影響を与え、

また逆にどのような影響を与えるのかを考察しました。

抗生物質が有益な腸内細菌を駆逐し有害細菌を増殖させる

抗生物質は、 全身の細菌感染症の治療に使用されます。 抗生物質は非常に効果的ですが、 有益な細菌と有害な細菌を区別することはできません。 その結果、

抗生物質はプロバイオティクス(腸内フローラのバランスを改善することにより人に有益な作用をもたらす生きた微生物)を巻き添えにし、

腸内細菌叢の多様性とバランスを崩壊させてしまいます。 抗生物質の使用が適切であれば、 腸内フローラはこうした混乱から立ち直ることができます。 しかし、

不用意に抗生物質を使用すると、 腸内細菌の異常が引き起こされ、 病原性を持つ種の割合が多くなり、 繁殖が進む可能性があります。

抗生物質は、 慢性的な下痢を引き起こす病原性細菌であるクロストリジウム・ディフィシル感染症の主な引き金となりえます。 抗生物質が有益な常在菌を駆逐すると、

そこに強力な有害細菌が増殖するスペースが広がるということです。

病原性のある腸内細菌に対する最善の防御策は、 多様でバランスの取れた腸内フローラと、 抗生物質の適切な使用です。

抗生物質を長期にわたって繰り返し服用する必要がある場合は、

ポストバイオティクス(エサとしてプレバイオティクスを食べるプロバイオティクスの副産物)を使用して腸内細菌叢を回復させることを検討してください。

腸内細菌叢は健康研究の新たなフロンティア

近年、 腸内フローラが人間の健康にとって重要な「臓器」として認識され始めました。 腸内細菌が免疫系を鍛え、 ビタミンを合成し、 腸の細胞にエネルギーを供給し、

炎症性疾患から守っていることが分かっています。 主に新しい配列決定技術の開発により、 20年程前から腸内細菌叢の重要性が認識されるようになりました。

抗生物質以外の薬剤が腸内細菌叢にどのような影響を及ぼすかについて、 研究者たちは調査を始めたところです。

多くの一般的な薬剤が意図せずに細菌株の増殖に影響を及ぼす可能性があることが示唆されています。

メトホルミン:微生物が介在する薬物療法

メトホルミンは、 2型糖尿病の第一選択薬であり、 肝臓でのブドウ糖の産生を抑え、 インスリン感受性を高めることで効果を発揮します。

健康なヒトを対象とした研究では、 この薬剤が、 プラセボと比較して腸内フローラ組成を大きく変化させることが実証されています。 <

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5960471/>メトホルミンは、 腸内の酪酸産生菌の量を増やし、

腸内細胞を活性化する抗炎症性代謝産物である酪酸を増加させます。 また、

肥満や糖尿病との関連性があるといわれるアッカマンシア・ムシニフィラのレベルを増加させることが観察されています。 さらに、 動物およびヒトでの研究により、

腸内フローラが、 グルコース産生の減少など、 薬剤の有益な効果を媒介する可能性があることが示されています。

メトホルミンでよく報告される副作用の原因として、 腸内フローラが考えられます。 臨床研究によると、 メトホルミン服用者の3分の1の人が下痢、 腹部膨満感、

吐き気を経験していることが分かっています。 興味深いことに、 これらの症状はすべて、 酪酸産生菌によるガス代謝の増加に起因するものです。

メトホルミンと腸内フローラの相互関係は、 非抗生物質である薬剤が腸内細菌叢を形成しうることを示す強力な証拠です。

2型糖尿病患者は、 これまで病気の原因か結果か(あるいはその両方)であると考えられていたユニークな腸内フローラの特徴を持っています。 これらの知見は、

研究者が疾患状態の腸内フローラの特徴を評価する際に、 薬剤に関連した微生物の変化を考慮する必要性を浮き彫りにしています。 この発見を受け、

欧州分子生物学研究所の研究チームは、 1000種類以上の薬剤が40種類の細菌株に及ぼす影響について調査しました。 <

https://www.nature.com/articles/nature25979>調査した薬剤のうち、 835種類はヒトを対象としたもので、

抗菌薬ではありませんでした。 この論文は、 権威ある学術誌『ネイチャー』に掲載されました。 結果、 ヒトを対象とした薬剤の24%が、

試験管内試験で少なくとも1つの細菌株の増殖を阻害することが分かりました。

このような効果が認められた薬剤の中には、 メトホルミンと、 最も一般的なプロトンポンプ阻害剤の一つであるオメプラゾールが含まれていました。

細菌の増殖を抑制した230種類のヒト用医薬品のうち、 40種類が10種類以上に影響を及ぼしていた。 優勢な腸内細菌微生物相の1つであるローズヴィリア腸、

ユウバクテリウム・レクターレ、 バクテロイデス・ブルガータスなどの有益な種

https://www.gutmicrobiotaforhealth.com/new-study-profiles-interactions-range-non-antibiotic-drugs-human-gut-microbiota/

は、 薬剤阻害効果をより受けやすいことがわかりました。

化学療法薬、 カルシウム拮抗薬、 抗精神病薬は、 最も多くの腸内細菌を阻害することがわかりました下剤も腸内フローラ組成を変化させることが示されています。

プロトンポンプ阻害剤:無害な制酸剤か、 微生物の敵か?

プロトンポンプ阻害剤(PPI)は、 世界で最も一般的な医薬品の一つで、 良好な安全性を誇り、

胃食道逆流症(GERD)などの治療に非常に効果的であることが証明されています。 近年、 PPIの使用量は急速に増加しており、

オランダをはじめとする欧州諸国では、 市販薬である一方、 英国では、 PPIは処方箋がなければ入手できませんが、 人口の12%もの人々がPPIを服用しています。

ところがこれらの薬の処方の70%は不必要であると推定され、 多くの人が消化不良や胸焼けに対処するために食事を変える代わりにPPIに頼っています。

PPIは、 特定の酵素に作用することにより、 胃粘膜での酸の産生を抑えます。 PPIは広く使用されているにもかかわらず、 腸内フローラの多様性を低下させ、

クロストリジウム・ディフィシル感染症のリスクを高めると言われています。 <

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5960471/

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5960471/>制酸作用の意図しない副産物として、

PPIは胃や腸に口腔内細菌を増加させる可能性があります。 これらの外来微生物が腸内のバランスを崩し、

腸内フローラの異常を引き起こす可能性があると考えられています。 <

https://www.sciencedirect.com/topics/medicine-and-dentistry/dysbiosis

ファーマコマイクロバイオミクス:腸内細菌は薬への反応を形成する

一般的な医薬品が腸内細菌叢を変化させその関係は双方向であることが分かっています。 腸内細菌とその遺伝子は、

投与された薬物(製剤)がどれだけ全身循環血中に到達し作用するか、 生物活性、 毒性にも影響を与えるかがわかっています。 例えば、

動物実験やヒトを対象とした研究から、 腸内細菌ががん免疫療法に対する反応に間接的に影響を与えることが明らかになっています。

ヒトでの観察では、 腸内細菌が免疫療法の効果を決定するという考えが支持されています。 ある研究では、 免疫療法の治療前、 治療中、

または治療後に抗生物質による治療を受けた患者さんは、 治療を受けなかった患者さんに比べて腫瘍の進行が大きくなったという結果が出ています。 先に述べたように、

抗生物質は腸内フローラを破壊し、 腸の生態系を狂わせることが知られています。

腸内細菌が薬物の構造を酵素的に変化させ、 その薬物の特性に影響を与えるという発見により、

ファーマコマイクロバイオミクス(腸内フローラの変動が体内動態や薬物・有害物質の反応に及ぼす影響についての研究)という新しい分野が生まれました。 これは、

薬理遺伝学(遺伝子と薬物反応の研究)と同様に、 腸内細菌が薬物反応(副作用や効能など)にどのような影響を与えるかを理解することが目的でした。 遺伝子とは異なり、

腸内細菌は動的であるため、 薬の効果を最適化し、 副作用を最小限に抑えるための取り組みが重要な分野となりました。

この分野はまだ始まったばかりですが、 ファーマコマイクロバイオミクスは、 薬物の副作用を最小限に抑え、 薬物の効果を向上させるために、

研究者に役立つ有望な学問分野です。 将来的には、 プレバイオティクス、 プロバイオティクス、 糞便移植などを通じて、 腸内フローラ組成を変化させることにより、

薬物反応を調整することも不可能ではないでしょう。

まとめ * 抗生物質は無差別に細菌を殺すため、 腸内フローラの多様性を乱す可能性があります。 抗生物質はさまざまな胃腸の問題を引き起こし、

クロストリジウム-ディフィシル感染症の主な原因と考えられています

* 研究により、 プロトンポンプ阻害剤、 抗糖尿病薬、 スタチンなど、 抗生物質以外の一般的な薬剤が腸内フローラの構成を変化させる可能性があります。

* 薬剤による腸内フローラの変化を分析することで、 一般的な薬剤の副作用や作用機序を部分的に説明できます。

* ヒトのゲノムとは異なり、 腸内細菌は変更可能であるため、 治療方法などの研究が進む可能性があります。

* ファーマコマイクロバイオミクスは、 腸内フローラの変化を通じて薬物反応を制御しようとする新しい分野です。 薬理遺伝学と並んで、

個別化医療を推進する可能性を持っています。

日々の健康を維持にとって腸内環境を正常に保つことが重要です。 Atlas Japan のAtlas 腸内フローラ検査を使うと、 腸内フローラの多様性、

プロバイオティクスと善玉菌の割合など、 腸内環境を可視化することができます。 食事やライフスタイルの見直しにも役に立ちます。

免責事項:この記事は情報提供のみを目的としたものです。 専門的な医学的アドバイス、 診断、 治療の代わりとなるものではありません。

「Atlas遺伝子検査」

ユーザーの唾液サンプルから遺伝子データを解析・解釈・可視化します。 予防・改善可能な疾患発症リスクにフォーカスした検査です。 この検査によって2型糖尿病、

クローン病、 パーキンソン病などの13の多因子疾患発症リスクを評価するとともに個人特性・形質を判定します。

科学的根拠に基づいたパーソナライズされた健康増進アドバイスを提供します。

「Atlas腸内フローラ検査」

ユーザーの糞便サンプルから微生物遺伝子を解析、 解釈、 可視化します。 この検査でユーザーの腸内フローラの酪酸・ビタミン合成能力、 食物繊維の分解能力、

腸内フローラの多様性、 プロバイオティクスと善⽟菌の状態を評価します。 さらに2型糖尿病、

クローン病などの5の疾患の発症リスクから腸内フローラがどの程度保護してくれているかを評価します。 さらに腸内フローラのタイプを判定し、 検査結果を基に、

パーソナライズされた食事に関するアドバイスを提供します。

ユーザーの唾液、 糞便サンプルはAtlas Biomedに送られ、 分析されます。 Atlas検査を受けたユーザーは、 Atlas

Biomedがオンラインで提供するパーソナルアカウントにアクセスし、 検査結果、

健康状態の改善に結びつくことが科学的に証明されているパーソナライズされたアドバイスやお勧めの食品を確認することができます。

Atlas Biomedについて

Atlas Biomedは、 2016年にイギリスで設立されたパーソナライズドヘルス企業です。 遺伝子および腸内フローラ領域の最先端技術と、 ユーザーの遺伝子、

腸内フローラ、 ライフスタイルデータを組み合わせることで、 健康状態を多面的に把握します。 それらをもとにパーソナライズされたアドバイスを提供し、

健康に関する意識向上及びデータに基づいた意思決定を支援します。 AtlasBiomedの検査キットは、 英国、 欧州16か国そして日本で提供しています。

アトラス合同会社はAtlasBiomedの日本の子会社です。

Atlas Japanは、 日本のユーザーに遺伝子や腸内フローラに関連する最新の情報やアトラスバイオメッドの研究者による考察を掲載する、 ブログページ

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