マックスマーラ 2023年春夏コレクション
2022年9月22日、 マックスマーラはミラノファッションウィークにて2023年春夏コレクションを発表しました。
青い水平線(THE BLUE HORIZON)
貴族階級の人々が邸宅の門を閉じる4月から9月にかけて、 リヴィエラには様々なボヘミアンたちが集いました。 F・スコット・フィッツジェラルド、 ピカソ、
ストラヴィンスキーなどの面々が肩を並べれば、 何かが起こるであろうことは明らかでした。 しかし、 ゼルダ・フィッツジェラルド、 ドラ・マール、
ブロニスラヴァ・ニジンスカ、 そして言うまでもなくドロシー・パーカー、 ジョセフィン・ベイカー、 イザドラ・ダンカンらがその仲間に加わると、
女性たちは確実にミューズからマエストロへの飛躍を遂げることになるのでした。
太陽が降り注ぐビーチでは、 名作が生まれ、 マニフェストが議論され、 タイムレスなリヴィエラ・スタイルが創り上げられました。
リヴィエラ・スタイルを最もよく着こなした人物といえば、 ルネ・ペルル(Renee Perle)をおいて他にはいないでしょう。
写真家ジャック=アンリ・ラルティーグのミューズであり恋人として、 ラルティーグの最も印象的な写真の被写体としてたびたび登場していたペルルですが、
歴史上はそれほど大きく注目されることはありませんでした。 しかし、 彼女はもっと評価されるべきなのです。 黒いアイシャドウで縁取られた目、
パーフェクトに描かれた上唇の輪郭、 フィンガーウェーブの髪、 これらすべてが彼女の大きな特徴でした。 背中の大きく開いたタンクトップ、
ボリュームのあるキャンバス地のセーラーパンツ、 柔らかいつば広の日よけ帽、 ヒップを包み込み裾に向かってふんだんにひだを寄せたスカートなど、
彼女の定番の装いが、 本コレクションのバックボーンとなっています。 彼女は何百枚ものシンプルな自画像を描きました。 美術史家たちは、
こうした自画像を駄作として気にも留めませんでした。 しかしそれらは、 彼女が驚くべき創造的才能を持っていたことを示すものでした。 彼女の自画像こそ、
彼女のイメージだったのです。
ルネ・ペルル(Renee Perle)が「ファッション」を擬人化したような人物であったなら、 アイリーン・グレイは「建築」を体現したような人物でした。
グレイは、 ロクブリュヌ=カップ=マルタンに、 自分と恋人のための海辺の別荘「E1027」を建てました。 「E1027」には、
モダニズムに対する彼女独自の女性らしいアプローチが表現されています。 「現代建築の貧しさは、 官能の萎縮からきている。
」グレイはかつてこのように語っていました。 男性の巨匠が好むマスキュリンで堅苦しい直線に挑戦するかのように、 グレイが設計するフロアプランには、
時として曲線が取り入れられています。 本コレクションでは、 彼女にならってしなやかなバイヤスカッティングを採用し、
ヴァナキュラーアートスタイルのフラワープリントを施した大きなオーガンザのリボンを通して、 勇敢で斬新なフェミニニテイを表現しています。
「E1027」にはハンドメイドの香りが漂い、 この家がマシンではなく女性と男性のための家であることを思い出させてくれます。
マックスマーラのそれぞれのアイテムはただ着るためだけでなく、 それを身に着けて生活することを念頭にデザインされています。 加工や染色を施していないリネン、
リノ・グレジッオ(lino greggio)を使ったトータルルックのシリーズでは、 切りっぱなしの裾フリンジがたびたびデザインに取り入れられています。
かっちりとした構造的なコートは、 太陽の光を浴びて色あせたビーチローブのような柔らかな魅力を放っています。 グレイが建てた「内なる暮らしのための建築」は、
心揺さぶる鮮やかな地中海ブルーがアクセントになっています。 本コレクションでは、
ウォッシュドコットンドリル素材のいわゆる「ブルー・ドゥ・トラヴァイユ」と呼ばれるワークジャケットを、 これと同じ色合いに仕上げました。
リヴィエラの常連たちは、 いずれも自らの年代記を綴っているような人物ばかりでした。 しかしペルルはラルティーグの写真以外では、 声もなく、
記録にはほとんど残っていません。 彼女とアイリーン・グレイは会ったことがあるでしょうか?恐らく、 二人は出会っていただろう、 とマックスマーラは思っています。
モダニティのビジョンを共有する二人の女性が、 「E1027」のテラスで朝の眩い光にまばたきをしながら、 顔を上げて輝く青い水平線を笑顔で見つめている、
そのような光景を想像しているのです。
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