ブラジル産グリーンプロポリスが腸内細菌叢の乱れを改善しサルコペニア肥満を予防するメカニズムを解明
ブラジル産グリーンプロポリスが腸内細菌叢の乱れを改善しサルコペニア肥満を予防するメカニズムを解明 サルコペニア肥満の新たな治療法にも期待
株式会社山田養蜂場(所在地:岡山県苫田郡鏡野町、 代表:山田英生、 以下「山田養蜂場」)の自社研究所である、 みつばち健康科学研究所は、
京都府立医科大学大学院医学研究科 内分泌代謝内科学 岡村拓郎 病院助教、 濱口真英 講師、 福井道明 教授の研究グループおよび、
株式会社メタジェンの研究グループとの共同研究により、 プロポリスが腸内細菌叢を改善し、 サルコペニア肥満の発症を予防することを明らかにしました。
また、 本研究成果が、 科学雑誌 『Journal of Cachexia, Sarcopenia and Muscle』(2022 年
9月26日発行)に掲載されました。 【研究背景】
2型糖尿病に伴う合併症は、 患者の生活の質を低下させ、 医療経済にも大きな負担をかけます。
そのため、 その解決は健康増進における重要な課題の一つです。
加齢に伴う筋萎縮(サルコペニア)は、 糖尿病合併症の一つであると考えられています。
さらに、 サルコペニアに肥満が加わった状態(サルコペニア肥満)は生活習慣病と大きな関わりがあることが分かっています。
また、 サルコペニアやサルコペニア肥満は要介護や死亡のリスクを上昇させることが報告されています。
生活習慣病と腸内細菌叢は密接に関連し、 生活習慣病を有する患者では腸内細菌叢のバランスが乱れていることが最近の研究で明らかになってきています。
この現象はディスバイオーシスと呼ばれ、 腸内細菌叢の変化はさまざまな疾患に影響を与えることからも、 新たな治療のターゲットとして注目されている分野です。
プロポリスはミツバチが植物の新芽や樹脂から作り出す物質で脂質異常や肥満、 インスリン抵抗性に関する作用などが知られています。
本研究ではサルコペニア肥満を引き起こした糖尿病モデルマウス(以下、 糖尿病モデルマウス)にプロポリスを投与し、 プロポリスがサルコペニア肥満や糖尿病の病態、
腸内細菌叢に与える影響を評価しました。
【研究結果】
ブラジル産グリーンプロポリス(以下、 プロポリス)は、 腸内細菌叢の変容を介し、 サルコペニア肥満および糖尿病の病態を改善することが分かりました。
さらに、 プロポリスは、 筋萎縮を抑え、 サルコペニアの進行を抑制することが示されました。
●サルコペニア肥満を引き起こした糖尿病モデルマウスにプロポリスを投与した結果、 耐糖能障害や脂肪肝の改善が見られ、 握力及び骨格筋量の増加、
内臓脂肪量の減少が見られた。
●プロポリスの投与によって、 ディスバイオーシスが改善され、 抗肥満や腸管機能の亢進に関与する腸内細菌の割合が増加した。
●プロポリスを飽和脂肪酸により、 萎縮を誘発した筋細胞に添加した結果、 ミトコンドリアの機能不全から生じる
萎縮が抑制された。
●腸内を無菌化した糖尿病モデルマウスに対して、 プロポリスを投与した糖尿病モデルマウスの糞便を移植した
ところ、 プロポリス投与時と同様に糖尿病やサルコペニア肥満に対する改善作用が見られた。
【詳細結果】
<糖尿病及びサルコペニア肥満の評価>
〇プロポリスを投与したマウスは糖尿病による耐糖能障害の改善、 肝臓の繊維化や脂肪の蓄積が改善しました。
また、 握力および骨格筋量の増加がみられ、 内臓脂肪重量が減少しました。
このことから、 プロポリスは糖尿病モデルマウスのサルコペニアと肥満を改善することがわかりました。
〇骨格筋の萎縮や炎症に関わる遺伝子の発現はプロポリスの投与により低下しました。
また、 筋肉の合成に関わる骨格筋中のアミノ酸濃度も上昇しました。
〇筋萎縮を引き起こした細胞にプロポリスを添加した結果、 ミトコンドリアの機能不全による筋萎縮を抑制していることが示され、
この働きにはアルテピリンCとケンフェライドが関与していることがわかりました。
<腸内細菌叢・腸内代謝物質の評価>
〇プロポリス投与により血糖調節や慢性炎症の抑制に加え、 腸管バリア機能の維持に関わる短鎖脂肪酸(酢酸、 プロピオン酸、 酪酸)濃度が上昇しました。 また、
ディスバイオーシスの指標となるProteobacteria門の割合が減少し、
ヒトで肥満抑制の報告があるRuminococcaceae科のButyricicoccus属およびAcetivibrio属の腸内の割合が増加しました。
〇体内の飽和脂肪酸濃度はプロポリスの投与により減少したのに対し、 直腸便中の飽和脂肪酸濃度はプロポリス投与により増加したことから、
プロポリスが体内への飽和脂肪酸の吸収を阻害し、 排出を促進していることが明らかになりました。
〇プロポリスを投与した糖尿病モデルマウスの糞便を、 腸内を無菌化した糖尿病モデルマウスへ移植したところ、
プロポリスを投与したときと同様のサルコペニア肥満改善効果が認められました。
【今後について】
超高齢社会において、 サルコペニアの発症予防は重要な課題の一つです。
さらにサルコペニア肥満は糖尿病やメタボリックシンドロームなどの生活習慣病に深い関わりがあると考えられていることから、
本研究結果は本邦における健康増進に大きく寄与するものと考えられます。
山田養蜂場、 並びにみつばち健康科学研究所は、 プロポリスをはじめ、 ローヤルゼリーやミツバチ由来乳酸菌、
はちみつなどのミツバチ産品に関する有用性研究や素材開発を通し、 予防医学の観点から「アピセラピー」を追究することで、 お客様一人ひとりの健康寿命を延伸し、
社会に貢献してまいります。
<文献情報>
論文タイトル:Brazilian green propolis improves gut microbiota dysbiosis and protects
against sarcopenic obesity
著者:岡村 拓郎1、 濱口 真英1、 馬場 遼1、 中島 華子1、 芳村 悠太1、 木村智紀1、 橋本 善隆1、 間嶋 紗織1、 千丸 貴史1、 牛込 恵美1、
中西 尚子1、 浅野 麻衣1、 山崎 真裕1、 福井 道明1、 西本 悠一郎2、 山田 拓司2、 藤倉 千鶴3、 浅間孝志3、 奥村 暢章3、 高桑 裕史4、
佐々野 僚一5
所属:1 京都府立医科大学大学院医学研究科 内分泌代謝内科学、 2株式会社メタジェン、 3株式会社山田養蜂場、 4アジレント・テクノロジー株式会社、
5株式会社アイスティサイエンス
掲載誌:Journal of Cachexia, Sarcopenia and Muscle
掲載日:2022年9月26日、 DOI:10.1002/jcsm.13076
URL:
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.1002/jcsm.13076 当リリースの詳細について
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