「グローバルヘルス・アカデミー」第1回を開催 有志一同から NEC、塩野義製薬、SORA Technology が登壇
テクノロジーでグローバルヘルスを推進する新事業・技術を紹介 ネクストパンデミックおよび100日ミッションに対する各社のアクションやアイディアも発信
グローバルヘルスを応援するビジネスリーダー有志一同(以下、 有志一同)は、
グローバルヘルスに寄与するサービスや企業活動への理解促進・関心向上を目的としたプログラム「グローバルヘルス・アカデミー」 (以下、
アカデミー)」を開催してまいります。
第1回となるアカデミーでは、 有志一同からシブサワ・アンド・カンパニー株式会社と、 日本電気株式会社(NEC)、 塩野義製薬株式会社、 SORA
Technology株式会社の3社が登壇し「グローバルヘルス領域の日本企業のリーダーシップ ~テクノロジー編~」をテーマに開催しました。
グローバルヘルスに寄与するサービスや新たな活動に関するプレゼンテーションを実施したほか、
G7でも議題の1つである100日ミッションに関連するトークセッションも行いました。
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グローバルヘルスとは、地球上の連鎖的な健康リスクの低減に向け、国境を越え、あらゆる場所の保健医療水準を高めることです。昨今、新型コロナウイルス感染症やサル痘の感染拡大を筆頭に、グローバルヘルスに関する国際的な枠組みへの関心が高まっています。各国で政府のみならず、国際機関や官民パートナーシップなど様々な団体によって、課題解決に向けたアプローチがなされています。
* 有志コミュニティの思想と活動、アカデミー開催趣旨
シブサワ・アンド・カンパニー株式会社 代表取締役 渋澤健 氏
1つの産業だけではなく、様々なクロスセクターがともにグローバルヘルスへ取り組むことが、日本のユニークな部分であると考えています。有志一同はその特徴を活かして、政府と企業が連携し、多数のソリューションをグローバルヘルスの課題解決のために提供できるような、新しい開発協力の形を作っていくことを目指しています。そして来年開催される広島G7の議長国として、リーダーシップを発揮し、世界に対して果たすべき責任があると考えています。今後も有志一同は「誰もが必要な医療にアクセスでき、世界中の人々が健康である未来を創る」をパーパスに掲げ、民間企業からグローバルヘルスについてアプローチし、世界に向けて発信してまいります。
* 日本企業がグローバルヘルスにもたらすトランスフォーメーション
NEC 特別顧問 遠藤信博 氏
サステナブルな世界を作るには、様々な課題があり、その課題も複雑性を増しています。
有志一同は、民間企業の協働により全体最適型のソリューションを作り上げ、1社では解決できない複雑な課題を解いていくという共通認識のもと多様なセクターから集まっているプラットフォームです。
多様な機能を持った企業が集い、ソリューションを提供できる形になることは、日本が高い価値を安定的・継続的に提供できるシステムを持つということでもあります。
安定的かつ継続的に、グローバルへ高い価値を提供できる力を持たない限り、経済安全保障は成り立ちません。
その中で、医療という観点でのプラットフォームがここに築き上げられつつあるということは大きな進歩であると考えています。
製薬や医療機器、衛生用品の提供だけでなく、AIを使ったソリューションを活用することによって、グローバルヘルス分野へ全体最適型のソリューションを提供していきながら、より効率的に効果的な価値提供を可能にする社会へのトランスフォーメーションを行ってまいります。
* 有志企業3社による、テクノロジー起点のグローバルヘルス・アクション
1. NEC執行役員 北瀬聖光 氏
「最先端のAI技術を活用した感染症に対するユニバーサルワクチンの開発」
NECは創薬分野において、がんワクチン、塩野義製薬との連携によるB型肝炎ワクチン、CEPIとの連携による次世代ワクチン(ユニバーサルワクチン)の開発に取り組んでいます。NECが挑戦する“ユニバーサルワクチン”とは、広範なベータコロナウイルス属※に対応するワクチンを指しており、開発に向けた膨大なデータ分析および新しいワクチンの開発にはAIの活用が必須です。NECは、最先端のAI技術を活用して、短期間で多くのウイルスを分析することで、広範なベータウイルスに対応しうるワクチン設計を可能にしました。これには変異に強く、効果が長期間持続し、広範な白血球型に対応することで世界人口をカバーすることが期待されています。
NECは、パンデミック発生前の平時において、未知のウイルスに対応可能なユニバーサルワクチンを用意することでパンデミック発生時に速やかに臨床試験を完了し、100日以内に承認を得ることを目指す100日ミッションに貢献します。
今後、CEPIと共に最先端のAI技術を活用したユニバーサルワクチンの開発に臨み、2年間で非臨床試験までを実施、その後、臨床試験を経て、将来のパンデミック発生時における100日ミッションの達成を目指します。これには、パートナーとの連携が非常に重要であり、信用と信頼をもって、様々なパートナーと大きな社会価値を提供してまいります。
※ベータコロナウイルス属には、COVID-19、MERSや未知なるウイルス・変異型も含め100種以上あり。
2. 塩野義製薬株式会社 取締役副会長 澤田拓子 氏
「次のパンデミックに対する備えとしての下水疫学調査」
下水疫学調査は、世界では感染症の疫学の一部として取り入れられています。COVID-19
は、感染後発症するとは限らず、感染者が必ず検査を受けるわけではなく、また発症する前から人に移すこともあり、患者数を正確に把握することができません。また、大勢の人々をスクリーニングするには、時間もコストもかかるという課題もあります。流行の度合や関心の強さによって検査を実施する人数にもかなり相違が出てしまいますが、下水疫学調査であればマスで感染状況を捉えることができます。欧米などでは、下水からのデータと実際の感染者数把握データ両方をセットで開示しています。下水疫学調査は、先行指標としても扱うことができ、感染初期からウイルスの侵入が把握できます。
塩野義製薬は、北海道大学との共同研究による「COPMAN法」により、従来比100倍以上の感度でウイルスを検出することを可能にし、より短時間で対応できるようになりました。また、島津製作所と協業し、下水疫学を社会実装できている海外と同様、日本国内へ技術を導入させていき、更には下水疫学調査をグローバルの標準的な測定方法としていきたいと考えています。なお、他標的への適応可能性については、インフルエンザは既に適応が確認されており、RNAウイルスやDNAウイルス、細菌など糞中に排泄されるものであれば捉えることができます。
下水疫学調査は、早期段階においてその地域における脅威を把握するというアプローチにより100日ミッションへ貢献いたします。また、発症までの期間が長く、発症確率が高くないウイルスも含め、下水疫学調査は有効に使えると考えています。今後も塩野義製薬は、下水関係の事業を行っている企業や団体と協業し、グローバルの標準的な測定方法として下水疫学調査を根付かせていきたいと考えています。
3. SORA Technology株式会社 Founder兼CEO 金子洋介 氏
「ドローン解析技術と予測分析AIの開発が切り開く三大感染症へのアプローチ」
途上国には実際に困っている方が多く、リアルな社会ニーズが存在するため、社会実装までが早いという特徴があります。新しいサービスやテクノロジーを提供する企業は、この特徴を活かし、途上国における社会実装を先行的に進めることで、その結果を先進国に還元していくという形を取っています。
SORA
Technologyは、途上国において特に喫緊の社会問題を解決しようという目的のもと、まずはそのファーストステップとして、マラリア対策にフォーカスを当てています。従来のマラリア対策では成虫の退治方法や刺されないようにする方法など、表面的なアプローチがメインでしたが、マラリアを撲滅するには幼虫の頃(ボウフラ)から対応していく必要があります。しかし、LSM※は殺虫剤散布で発生する人件費や殺虫剤費のコストの高さから、あまり普及していないのが現状です。SORA
Technologyの調査では、現地のデータをAIで解析することにより、ドローンで水たまりの位置を把握するだけでなく、リスクの高い水たまりを特定することができます。私たちは、これらの技術を駆使してLSMのコスト削減に寄与するソリューションを提供しています。その上で、私たちは現地国との連携や人材育成にも注力しており、シエラレオネでは、現地大学と連携し、ドローンやAIの技術を学生たちに教育することを通して、現地の就業率の低さを改善するよう新しい産業づくりに取り組んでいます。
100日ミッションに対しては、途上国においても検知を行える体制をつくることが重要です。日本国内からでは把握することが難しい感染症の現地状況などについて、スタートアップならではの足回りの良さを活かし、最前線でのデータ採取およびデータ活用を通して貢献していきたいと考えています。SORA
Technologyは、安全で豊かな社会の実現に向けて、日本発の航空技術をアジアやアフリカの現場で活用し、テクノロジー分野からグローバルヘルスに貢献してまいります。
※LSM:蚊の幼虫の繁殖域となりうる水域に対して殺虫剤散布等を行うことによって、蚊の幼虫そのものの個体数を減らす方法
* トークセッション
「ネクストパンデミックへの備え ~100日ミッションの達成と日本企業のテクノロジー~」
モデレータ―:ビル&メリンダ・ゲイツ財団 柏倉美保子 氏
「国際感染症危機管理部隊(GHEC)とG7 100日ミッション」
2021年、イギリス政府が議長国となったG7において100日ミッションというメッセージが発信されました。ワクチンに限らず検査キットや治療薬などを100日以内に作ろうという取組みですが、この取組みにはあらゆるセクターが協力し合うことが必要です。各国政府が研究開発資金を投資し、100日以内に治療薬投与などを可能にする臨床試験までの法整備を行うこと、ワクチンの製造・流通においては低中所得国にも平等に届けていくために国際機関などさまざまなセクターと連携することが重要です。また、WHOでは国際感染症危機管理部隊(GHEC)の創設への議論が始まっており、感染症危機管理部隊を強化し、緊急時に派遣されるのではなく平時から常設専門部隊をつくっていく必要があると提唱しています。
国際感染症危機管理部隊(GHEC|Global Health Emergency Corps)とは
GHECは、全般的な病気の予防と対応のための保健システム強化とともに、将来的な流行・パンデミックを防止、封じ込め、対応するため、健康緊急事態の関係者・メカニズム・ネットワークを国・地域・世界間でつなぎ、促進する組織・部隊です。国・地域・世界レベルの公衆衛生リーダー、専門家およびチームが、健康緊急事態およびパンデミック対応中に、互いにより適切に協力するために必要なネットワークの構築し、トレーニングの実施および資金提供を目的とした、保健専門家のグローバルネットワークのコンセプト素案です。既存の国家保健イニシアチブと緊急オペレーションセンターを活用して、次の感染症の流行または世界的な健康緊急事態へのより効果的な対応促進を目指しています。
~ネクストパンデミック・100日ミッションに向けて日本企業のテクノロジー・有志一同ができること~
NEC 北瀬氏
CEPIと進めているトップクラスのAIを活用して、未知のウイルスによるパンデミックが発生した際に100日以内で対応できる“ユニバーサルワクチン”の開発を成し遂げることが重要だと考えています。また、NECはワクチンの開発だけでなく、生体認証によってワクチンを正確に効率よく届けるという活動においても社会に大きく貢献しています。バングラデシュでは、Gaviのプログラムのもと、幼児の指紋を認証して、ワクチンの普及率を高める取組みを行っていますが、このようにAIやデジタル分野で世界中に対して貢献できると考えています。
また、有志一同としてもできることは多くございます。有志メンバーでもある医療機関がもつ、これまでに蓄積した様々な経験や知恵をデジタルに変えることによって、多くの知見を今活躍する人に提供し、次の世代に繋げることができます。さらに政府、企業、アカデミア、現場など、それぞれが連携することが重要です。例えば、新たなワクチン開発には製薬会社だけでなく、アカデミアや政府との連携が必要になります。他にも道路未舗装地域における、ドローンを活用した医療物資の運搬などでも連携できると考えています。
塩野義製薬株式会社 澤田氏
ワクチン開発や治療薬の分野においても対応を進めていますが、特に下水疫学調査においては、次のパンデミック発生時に、より早い段階で「どの地域に感染が進んでいて、どのように阻止すべきか」という観点で下水疫学をどのように使っていくのか議論しています。検出方法がすべてのウイルスに使える汎用性の高い技術になっているため、さらに短時間で検出できるようになると、より下水疫学調査を広げられるのではないかと考えています。
COVID-19
を経験し、解決すべき社会課題がクリアであればいろんな企業が手を挙げ、支援者が現れることがわかりました。これらをグローバルで機能させられるようにしていくことが非常に重要ではないかと考えています。グローバルに貢献していくためにも、世界に向けて声を挙げて協働していくことが普通になればいいと考えています。
SORA Technology株式会社 金子氏
感染症の検知の部分で役立てるのではないかと考えています。マラリア対策をアフリカ現地で日常的に行うことにより、蚊の情報やほかの病原菌の情報について情報収集することができるため、その点で役立てるのではないかと考えています。
現地で集めているデータをより価値のあるものにするため、他分野の有志企業で活用していただけるようにしていきたいと考えています。社会的課題解決への思いが強いスタートアップこそ、大企業の皆様と連携することによってグローバルにサービスを届けられるようオールジャパンで1つになっていきたいです。
100日ミッション(100 days mission)とは
CEPIと英国政府が中心となり、国際的に懸念される公衆衛生上の非常事態が宣言されてから100日以内に、安全で有効なワクチン、診断及び治療を利用可能にする取組みです。未知なる感染症へ対応し得る国際連携体制を構築し、民間企業と国際保健機関のリーダーシップとの日常的な官民協働の実現を目標としています。
* 「グローバルヘルス・アクション」について
「グローバルヘルス・アクション」は、世界の保健医療水準を高める国際的な取り組みです。「誰もが必要な医療にアクセスでき、世界中の人々が健康である未来を創る」という大きな目標に向けて、パンデミックの経験を踏まえ、地球上の連鎖的な健康リスクにこれまで以上に目を向ける必要があります。人々の健康は、地球上のあらゆる保健医療と密接に関連しており、アフリカを含むすべての地域での出来事が身近な問題と捉えられます。日本発のイノベーションや官民連携の主体的な取り組みにより、日本は世界の健康を支えるリーダーシップを発揮することができると考えています。有志一同は、「グローバルヘルス・アクション」で3つのことを目指します。
1. 日本が世界の健康を支えるリーダーシップを発揮すること
2. 日本発のイノベーションで世界の健康課題に取り組むこと
3. 世界の課題への取り組みを通じて、日本の医療課題の解決につなげること
* グローバルヘルスを応援するビジネスリーダー有志一同について
渋澤 健(シブサワ・アンド・カンパニー株式会社
代表取締役CEO)を代表とする、グローバルヘルス(保健医療分野、特に公衆衛生分野、感染症対策分野での支援及び事業)へ貢献する日本企業等の有志団体です。製薬・医療機器をはじめとした保健医療分野のみならず、金融や商社、デジタル、サプライチェーン等多岐にわたる分野から構成され、大企業のみならず中小企業やスタートアップも含めた多様な企業の経営者が参画しています。
2022年11月14日 林外務大臣への要請
開発協力大綱の改定に対して、グローバルヘルスへの取組みを我が国ODA
の果たすべき主要な役割として明確にすべきであるとし、国際保健を新たな開発協力大綱の大きな柱の一つとして掲げることを要請
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000012.000076537.html
2022年4月22日 岸田首相への要請
「グローバルヘルスを応援するビジネスリーダー有志一同」が、世界の保健医療課題の解決に向け「新しい資本主義」を掲げる岸田首相に対し、「成長と分配の好循環のグローバルな展開」である国際保健の取組強化を要請
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000009.000076537.html
2021年4月27日 菅元首相への要請
新型コロナをはじめとする世界の保健医療課題解決に向け、「グローバルヘルスを応援するビジネスリーダー有志一同」が菅義偉首相に対し、民間企業の活力を発揮するグローバルヘルスの取り組みを更に強化するよう要請
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000008.000076537.html
2022年8月19日 有志企業がビル・ゲイツ氏と共に「グローバルヘルス・アクション」を発表した際の様子
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