水素水の摂取により脳の神経細胞死を抑制できることが判明

日本獣医生命科学大学・獣医保健看護学科・生体機能学研究分野の袴田陽二教授の研究チームは、 株式会社ドクターズ・マン(神奈川県横浜市)との共同研究により、

スナネズミに水素水を投与した後の水素分子の血中動態と、 脳虚血負荷された大脳皮質神経細胞死の抑制効果を証明しました。

1. 研究の背景と概要

我々は、これまでに水素分子の摂取が降圧効果や過剰な免疫機能を抑制することを明らかにしてきましたが、摂取後の水素分子の血中動態については、体サイズの大きなブタでの報告のみで、研究に多用されている齧歯類での報告はありませんでした。今回、脳虚血研究に実績の高いスナネズミを用いて、水素分子の血中動態と脳虚血負荷に対する有効性を検証しました。その結果、繰り返し腹腔内投与された水素水中に含まれる水素分子は速やかに近傍の静脈に吸収されますが、動脈血中にはほとんど存在しないことが判明しました(図-1、2)。それにも関わらず、水素分子の投与は脳虚血後の大脳皮質の神経細胞のアポトーシスを抑制し、細胞死を軽減することを見出しました(図-3)。

2. 研究の成果と意義・今後の展開

現在、水素分子の摂取には水素ガスもしくは水素水による2つの方法がありますが、水素水による水素分子の摂取には特別な機器を必要としないため、多くの研究報告があります。しかしながら、水素分子の血中動態と病態に対する有効性を同時に比較した研究は殆どなく、本研究の意義は高いといえます。今回の研究においても、水素分子が脳虚血後の神経細胞死の抑制に貢献していることは明らかですが、脳に運ばれる動脈血中の水素濃度は予想以上に低レベルであることから、水素分子による神経細胞死の抑制には未だ解明されていないメカニズムが存在する可能性があります。今後、水素分子の別の効果も検証していく予定です。

3. 特記事項

本研究は、株式会社ドクターズ・マンからの支援によって行われました。

4. 論文

英文タイトル:Pharmacokinetics of hydrogen administered intraperitoneally as

hydrogen-rich saline and its effect on ischemic neuronal cell death in the brain

in gerbils

タイトル和訳:スナネズミへの水素水腹腔内投与後の血中動態と脳虚血性神経細胞死への効果

著者名:平野桃子、菅井和久、藤澤正彦、小林英司、勝俣良紀、袴田陽二、佐野元昭

掲載誌:PLOSONE

DOI:10.1371/journal.pone.0279410

Posted by owner