現代の生活で増えがちな血中の糖(グルコース)が肌の弾力低下のリスク要因であることを発見
ポーラ・オルビスグループの研究・開発・生産を担うポーラ化成工業株式会社(本社:神奈川県横浜市、 社長:釘丸和也)は、
現代の様々な生活習慣で増えがちな血中の糖(グルコース)の肌への影響について研究を進め、 以下2点を発見しました。
1. グルコースが、 脂肪細胞から発せられるメッセージ物質を介して、 線維芽細胞における弾性線維の遺伝子発現を低下させること
2. シラカバ樹皮エキスが、 肌の弾力低下の原因となる脂肪細胞由来のメッセージ物質の遺伝子発現を低下させること
●現代の生活で起こりがちな血中グルコース濃度の上昇が肌に及ぼす影響に着目
現代人の生活で陥りがちなストレス過多・睡眠不足・運動不足などの状態は、血中グルコース(補足資料1)の濃度上昇を招くことが知られています。さらに、コロナ禍ではこれらの状態がますます悪化し、血中グルコース濃度はより上昇しやすい状態であると考えられます。
血中グルコース濃度の上昇は、脂肪細胞に働きかけて身体にさまざまな悪影響を及ぼすことが知られていますが、皮膚への影響はよくわかっていません。しかし、脂肪細胞は皮膚深部に存在し皮膚と相互作用していることから、グルコースが脂肪細胞を介して皮膚に影響を及ぼすのではないかと考え、検証を行いました。
●グルコースは脂肪細胞から線維芽細胞へのメッセージ物質を介して肌の弾力低下を招く
グルコースが脂肪細胞へ及ぼす影響を検証するために、高グルコース環境下で脂肪細胞を培養したところ、IGFBP2(※)というメッセージ物質の遺伝子発現が上昇することがわかりました(補足資料2)。さらに、IGFBP2が皮膚の線維芽細胞に及ぼす影響を検証したところ、IGFBP2を添加した線維芽細胞では、肌の弾力を維持するために必要な弾性線維の遺伝子発現を抑制することもわかりました(補足資料3)。これらの結果から、血中グルコース濃度の上昇は、脂肪細胞から線維芽細胞へのメッセージ物質の発現を介して、肌の弾力低下を招く要因であると考えられます(図1)。
※ IGFBP2:インスリン様成長因子結合タンパク質2。インスリン様成長因子に結合し作用を阻害するなどして、細胞に様々な影響を与える。
●肌の弾力低下の原因となるメッセージ物質を減らすエキスを発見
グルコースによる肌の弾力低下を食い止めるため、脂肪細胞のIGFBP2発現を抑制するエキスを探索した結果、シラカバ樹皮エキスにその作用があることを見出しました(図2、補足資料4)。本結果から、血中グルコース濃度の上昇が起こりにくくなるよう生活習慣を見直すことに加え、本エキスを活用することにより、現代の生活習慣を起因とした肌の弾力低下をケアできる可能性が示唆されました。
ポーラ化成工業は、今後もお客様のニーズに応える研究開発を進めます。
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【補足資料1】グルコースについて
グルコースは自然界に最も多く存在する糖の一つで、ブドウ糖とも呼ばれます。
炭水化物などの食べ物から摂取された糖質は、消化吸収を通してグルコースに分解されて血液に乗り、全身に運ばれます。
飲食により血中のグルコース濃度(血糖値)が上がると、インスリンの作用によりグルコースは細胞内に取り込まれ、エネルギー源として利用されます。
また、余分なグルコースは、形を変えて肝臓や筋肉、脂肪などに蓄えられますが、運動時などエネルギーが多く必要なときには、それらから血中へグルコースが供給されます。
このように、体には血中グルコース濃度が一定の範囲内に保たれる仕組みが備わっていますが、ストレス過多・睡眠不足・運動不足などにより、血中グルコース濃度が上昇してしまうことが分かっています。
これまでの研究で、血中グルコース濃度の上昇は、脂肪細胞の脂肪蓄積を促進して肥大化させたり、生理活性物質の分泌異常を引き起こして肥満や糖尿病、動脈硬化を招くなど、身体に様々な悪影響を及ぼすことが知られています。
【補足資料2】グルコースが脂肪細胞に与える影響
高濃度のグルコース環境下で培養した脂肪細胞は、低濃度のグルコース環境下で培養した脂肪細胞と比べ、IGFBP2の遺伝子発現が有意に高まりました(図3)。
【補足資料3】脂肪細胞からのメッセージ物質IGFBP2が線維芽細胞に与える影響
線維芽細胞にIGFBP2を添加すると、エラスチンおよびMFAP4(ミクロフィブリル結合タンパク質4)の遺伝子発現が有意に低下しました(図4)。エラスチンは弾性線維の主要な構成タンパクで、MFAP4はエラスチン分子同士を結合させ成熟した弾性線維を形成するために必要なタンパクです。つまり、IGFBP2はこれらの弾性線維構成タンパクの発現を低下させることにより、肌の弾力低下を招くと考えられます。
【補足資料4】メッセージ物質IGFBP2を減らすエキスの探索
脂肪細胞のIGFBP2発現を抑制するエキスを探索したところ、シラカバ樹皮エキスが有効であることがわかりました(図5)。
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