日本初のケタミンクリニックが名古屋で開始:治療抵抗性うつ病、PTSD、強迫性障害などが適応

治療抵抗性うつ病などのメンタル疾患に対して、海外で脚光を浴びているケタミンクリニックが日本で開始されることになりました。

(名古屋麻酔科クリニック所在地:愛知県名古屋市)

「ケタミン」という名前をどこか聞いたことがありませんか?

医療従事者の方なら全身麻酔の注射剤や、がんの痛みに使う点滴薬などと言われるかも知れませんが、一般の方なら有名人がたまに薬物使用で捕まってるときに聞く幻覚剤ではないかと。

その薬は同じものなのですが、いま海外ではメンタル疾患治療の画期的な薬として脚光を浴びています。ケタミンクリニックを知ってますか

ケタミンクリニックを知ってますか

ケタミンは、1960年代にミシガン大学の医師によって、処置のため鎮静させるための薬剤として開発され現在でも使われています

注目に値することは、過去数十年にわたる研究により、ケタミンが治療抵抗性うつ病の治療選択肢としての可能性が示されたことでした。

何が新しいかと言えば、従来の薬では、患者さんが症状の緩和を実感しはじめるまでには、内服から数週間かかると一般的には言われています。

それに対しケタミン療法では、うつ病や希死念慮の症状を迅速に緩和することが示されています。

ケタミンは治療抵抗性うつ病患者に投与して数時間後に抗うつ効果を示し、その効果は1週間以上持続することもあります。

さらに、ケタミンはうつ病患者の自殺願望、希死念慮も劇的に改善し、自殺予防という点からも注目されています。

米国などでは、10年以上前からケタミンクリニックというケタミン点滴を専門にするクリニック、部門があり、現在では各地に100か所程度あります。

また海外では、2019年にケタミンの製剤(エスケタミン:鼻腔スプレー)が承認され、治療抵抗性うつ病などに対して用いられています。

ケタミンは光学異性体で、S体とR体があります。

ケタミン注射薬はSとRの混在したラセミ体です。

エスケタミンは名前の通りS体です。

S体の評価としては、ラセミ体の注射薬のほうが良いのではないかとも言われています。

日本でもエスケタミンは治験されましたが、フェイズ2の段階で海外データとの相違があり不可となりました。

またR体に関しては、今後期待される薬剤でもあり、大塚製薬がアールケタミンとして治験をはじめています。

ただ、実用までにはまだ5年以上かかるという状況です。現在の治療に満足してますか

現在の治療に満足してますか

うつ病のケタミン点滴は、治療抵抗性のケースで非常に効果的です。

この健康状態への回復は、場合によっては何か月も、さらには何年も続く可能性もあり、抗うつ薬を服用する必要がなくなることも期待できます。

ほとんどの患者さんは、優れた緩和の質を報告しています。

治療は安全で、長期的な副作用はありません。

ケタミンは、患者に苦痛を与える思考パターンから精神的に解放されるような時間を提供するようだと、専門家は述べています。

精神科医でCambridge BioTherapies社の創設者であるDaniel

Brenner氏によれば、ケタミン治療中や治療後にネガティブな思考が静まり始めると、多くの患者は行動パターンの再構築が容易になるとのことです。

“感情を利用しやすくなる “とブレナー氏は言います。

“単なる抗うつ剤ではなく、恥や自己嫌悪、自分を傷つけたいという欲求を生じさせるような脳内の反報酬回路をシャットダウンする薬でもあるのです。"

マサチューセッツ州モルデンに住む32歳の獣医師、アリエル・ウルフは、ブレナーに治療を求め、6月からケタミンの静脈内注入を始めました。

6回の治療の後、20年間うつ病と不安に悩まされていたウルフは、料理、ハイキング、読書、仕事仲間とのおしゃべりを再開しました。

“私は最高の気分でした、私の人生の中でこれまでよりも良い。このように、私はいつもなりたいと思っていたのに、精神的に病んでいたためになれなかったのです。”

(出典 Ketamine for depression What it feels like and who it can help :By Rachel

Zimmerman, the Washington Post online)

心的外傷後ストレス障害(PTSD)に苦しむ患者さんは、従来の薬物療法や治療法よりもケタミン注入から多くの緩和を得る可能性があります。

ケタミン療法は、治療抵抗性の症例でも効果的に機能し、長期的な副作用はありません。

ケタミンは、他の従来の治療法とは異なり、脳機能を改善し、独自の方法で治癒を促進します。

神経科学に対するケタミンの効果のほとんどは、精神的健康状態を治療するためのまったく新しいアプローチです。

強迫性障害(OCD)、全般性不安障害、パニック障害、およびその他の形態の不安障害の患者さんは、ケタミン点滴療法によって効果的かつ迅速に治療されることが期待できます。

ケタミン治療は、より健康的な神経化学バランスの回復を助ける独自のプロセスを通じて、患者さんの神経系の落ち着きを促進するのに役立ちます。

一部の患者さんでは、従来の処方薬への依存の減少が見られることがあります。

多くのの患者さんは、自身と生活について、全体的に健康的な視点を持つことができ楽しい生活を送れるようになります。

ケタミン点滴は一般的に3~6回をセットとして2~3週間の短期間に行われます。

(1回で調子が良くなりその後の追加が必要なければそれで終了ですが。)

その後は月に1回程度の維持療法もしくは、調子の悪い時に行われます。

点滴時間は、その量や患者症状、副作用の有無などで一概ではありませんが、20分から40分ほどかかります。

その後しばらく、個人差もありますが1時間ほど安静の後、問題なければ帰宅となります。

危険性や副作用については、ケタミンという薬剤は50 年以上にわたって使用されており、非常に安全な薬であることが証明されています。

ケタミン注入療法の一般的な短期的な副作用としてじは、注入中の軽度の解離、注入中の軽度の吐き気、直後のめまいなどありますが、通常は数時間以内に完全に消失します。

また総じて、ケタミンによる長期的な悪影響は見られないと言われており、当院においても疼痛管理としてケタミン点滴を1000回以上行ってきましたが、とくに問題はありませんでした。

名古屋麻酔科クリニックとしては、”ケタミンクリニック in 名古屋麻酔科”

として、気分障害、強迫性障害、PTSDの治療を自由診療として2023年より開始することとなりました。日本ではじめてのケタミンクリニックです。

2010年以来の痛みに対するケタミン点滴経験をもとに、革新的でエビデンスに基づく思いやりのある方法を通じて、治療抵抗性の状態に苦しんでいる方々を支援していきます。

ケタミンクリニック in 名古屋麻酔科

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