医師偏在解消に向け、6つの取り組みを提言―日本医師会

日本医師会の松本吉郎会長は8月21日の会見で、現時点における医師偏在に対する日本医師会の考え方を公表。都道府県における議論とこれまでの取り組みは引き続き充実させていくことを前提として、6点の取り組み

(下掲参照)

を進めていくことを求めるとともに、日本医師会として、もう一段階ギアを上げて、医師偏在対策に主体的かつ積極的に取り組み、地域医療の強化につなげていく考えを示しました。

松本会長は医師の偏在について、「一つの手段で解決するような『魔法の杖』は存在せず、その解決のためには、あらゆる手段を駆使して複合的に対応していく必要があることから、年末に掛け丁寧な議論が必要である」と主張してきたことを説明。医師が不足している地域の声に耳を傾けるとともに、国による必要な財政支援、好事例の横展開、研修等で支えることを基本として、自主的な気運の醸成や働きやすい環境の整備等が必要であるとの考えの下に、日本医師会としても会内において議論を積み重ねてきたとしました。

その上で、医師の偏在解消は「国民皆保険制度を堅持し、フリーアクセスの下、必要な時に必要な医療を受けられる体制を確保するために必要不可欠な取り組みである」と強調。医師の偏在解消策を考えるに当たっては、その前提として、医師多数区域・少数区域といった全国一律の基準で物事を言うのではなく、行政、大学病院や派遣する病院、医師会、医療関係団体、住民の協議等を踏まえ、それぞれの地域で今何が足りないのか、どういったところが本当に必要なのかをまず議論すべきであるとしました。

また、今後については「未曽有の超高齢・人口減少社会を迎える中で、国民の生命と健康を守り適切な医療を引き続き提供していくため、日本医師会では、六つの柱からなる医師偏在対策を、国に対して、検討会等で要望・提言していきたい」と述べるとともに、政府与党へも所要の検討を求めました。

取り組みを進めるよう求めた6つの事項(1)公的・公立病院の管理者要件

「現在、2020年度に臨床研修を開始した医師から適用されている医師少数区域勤務経験を求める地域医療支援病院の管理者要件の対象病院を、今後医師免許を取得する医師のキャリア形成などに十分に配慮した上で、公的・公立病院にも拡大する」併せて、「臨床研修医への導入や、いわゆる後期研修医などの若手医師の研修で、医師少数地域での研修期間をのばすプログラムも検討する」

(キャリアを積める研修プログラムを工夫し、地方で勤務したいというモチベーションを持ってもらえるよう、環境を整えることが前提)(2)医師少数地域の開業支援等

「医師少数地域において新たに診療所を開設する医師に対して、開設から一定期間の資

金支援策を創設するとともに、医師少数地域で働く医師(勤務医・開業医)の確保・派遣を強化する」

(地方では診療所医師の高齢化による承継問題も生じており、承継面での支援も必要)(3)全国レベルの医師マッチング支援

「医師不足地域での勤務を希望する医師に対し、リカレント研修や現場体験を行いつつ、医師少数地域での勤務を全国的にマッチングする仕組みを創設する」

(具体的には、都道府県を越えた広域的なマッチングを行う仕組みとして、日本医師会が委託を受けている女性医師センターのノウハウの活用など)(4)保険診療実績要件

「保険医療機関の管理者として、卒後一定期間の保険診療実績の要件を加え、保険診療の質を高める」(5)地域医療貢献の枠組み推進

「現行の地域に必要とされる医療機能を担うことへの要請の枠組みを制度化し、地域で足りない医療機能を強化し、実績をフォローアップする仕組みを導入する」

(具体的には、現在ガイドラインで示されている「外来医師多数区域において新規開設を希望する者に、地域で不足する医療機能を担うことを要請すること」の制度化を挙げ、地域のニーズの例として「地域に根差した医師の活動」の資料を示した)

(6) 医師偏在対策基金の創設「医師偏在対策を5~10年で推進するための1,000億円規模の基金を国において創設する」・来年度予算編成での基金創設を要求

記者との質疑において松本会長は、「医師偏在の解消は一朝一夕にいくものではないが、若い医師にモチベーションをもってもらうことが大事であり、それを支えるためにも早期に基金を立ち上げ、経済的インセンティブをつけることが一番効果があるのではないか」と述べ、来年度の予算編成で基金を創設することを要求。また、管理者要件として、医師少数区域での勤務経験を全ての医療機関に広げることについては、ハレーションを起こす危険があり、今回の対応で経過を見るべきとして、慎重な姿勢を示しました。

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