長野県の診療所が日本初「国際出産イニシアティブ」認証を取得

菜の花マタニティクリニック内フリースタイル対応の分娩室

菜の花マタニティクリニック(長野県伊那市、鈴木昭久院長)は2024年9月、安全で快適な出産環境を広める国際的な取り組み「国際出産イニシアティブ(International

Childbirth

Initiative、以下「ICI」)」の第1段階に日本で初めて認証されました。助産師を主体とした周産期管理を実施し、母子と家族を尊重した安全なお産を実現してきたことが、国際出産イニシアティブ認証取得につながりました。

海外のICI施設や専門組織と互いに支え合いながら、女性と家族へのケア向上に励む所存です。国際出産イニシアティブとは国際産婦人科連合

(FIGO)、国際助産師連盟(ICM)、国際小児科学会(IPA)、国際母子出産組織(IMBCO)、ホワイトリボン連盟(WRA)の5団体が2018年に創設した国際的な枠組みです。世界保健機関(WHO)のガイドライン「ポジティブな出産体験のための分娩期ケア」(2018年)に沿って「母子・家族を尊重した安全なケアを実現する12のステップ」を発表しました。

「妊産婦を大切にする」「格差なくケアにアクセスできる」「エビデンスに基づくケア」「スタッフも尊重される環境」などで、出産ケアに必要な条件を言語化しました。妊産婦と家族の体験を大切にし、出産ケアの質を向上する目的でステップを設定しています。

国際出産イニシアティブ 12のステップ

現在、世界30か国以上で助産院から大病院まで100以上の出産施設がICIに参加しています。認証された施設では妊産婦や家族のフィードバックを取り入れながら自己評価し、目標を決めてケアの改善に取り組んでいます。

ICI本部ウェブサイト(英語):

http://icichildbirth.org/

ICI日本語事務局ウェブサイト:

http://sites.google.com/view/ici-japan/認証の背景

前世紀以来、世界の大多数の出産は医療施設で行われるようになりました(Johanson et

al,2002)。医療の普及により新生児・妊産婦の死亡率は大きく低減しましたが、同時に課題も生じました。

課題の一つが、妊産婦や赤ちゃんに対する施設での扱いです。米国では約17%の女性が出産中に不当な対応(mistreatment)を経験していると指摘する研究もあります(

Vedam et al, 2019

[]

)。例えば医療者にしかられたり、適切な対応をすぐにしてもらえなかったりといった経験は、病院や院内助産院などの施設で産む場合、また低学歴や貧困、有色人種など社会的に不利な立場にある場合や、医療者と考え方が合わない場合ほどその割合が高いと指摘されています。

施設での出産でも一人ひとりの女性と家族が何を望んでいるかを理解してもらい、自分と赤ちゃんが大切にされたと感じられ、自信がつくような出産体験を実現する必要性がICI創設の背景の一つにあります。

助産師外来日本と上伊那地域の現状日本では出産の99%が医療施設で行われており*1、合計特殊出生率は1.20(2023年)です*2。

伊那市の合計特殊出生率は2016年度に1.71ありましたが、2022年度は1.27に激減しました*3。長野県の合計特殊出生率も減少したとはいえ、1.59から1.43と0.16ポイント減にとどまっています*4。

伊那市を含む長野県の上伊那地域では2010年代、人手不足などにより周産期の医療施設が複数閉鎖しました。公立総合病院に患者が集中して分娩件数が増え、スタッフからは個別のニーズに対応することさえかなわないという声が聞かれました。

*1

https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?stat_infid=000040207122*2

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai23/dl/gaikyouR5.pdf

*3

https://www.inacity.jp/shisei/kakushuplanshiryo/kenko_fukushi_iryo/kenkoina21.files/R6_4_kenkoina.pdf

*4

https://www.pref.nagano.lg.jp/kenko-fukushi/kenko/kenko/toukei/hokeneisei/documents/02goukeitokusyu2022.xlsx

菜の花マタニティクリニックの特徴

このような状況の中、2015年に菜の花マタニティクリニックは開院しました。ローリスク妊娠を中心に年間約350件の分娩を取り扱っています。

特色として、助産師外来の設定回数を増やすなど助産師と妊産婦のコミュニケーションを重視しています。産後の2週間健診、1か月健診に加え、2か月健診など独自のケアを実践し、妊娠中から産後へ支援提供をつなぐ体制を構築しています。

助産師を主体とした妊娠、分娩、産褥管理のほか、助産師外来での指導の充実や助産技術の向上に努めています(ICIステップ3に該当、以下同)。

また、医療アクセス確保のため長野県伊那市のオンライン診療専用車両「INA Health

Mobility」を利用した助産師外来を実施。必要時には、長野県内の周産期医療システムを運用して母体・新生児を搬送します(ステップ9)。

10人の助産師を主導するのが看護師長の赤羽洋子助産師です。赤羽助産師は看護大学教員時代に妊婦を対象としたフットマッサージの研究を行っていました。菜の花マタニティクリニック開院を機に臨床へ復帰し、「フットマッサージは産褥期にも不安軽減、入眠促進の効果が高い」というエビデンスに基づき(

Dominguez-Solis et al, 2021

[];

Owais et al, 2018

[]

)、産後の入院患者全員に毎日フットマッサージを施行しています(ステップ6)。

菜の花マタニティクリニックでは、スタッフによる患者へのフットマッサージを毎日実施

ICIのステップ1は、女性と赤ちゃんに尊敬と尊厳をもって接することを掲げています。そうしたケアを受けた女性は我が子にも愛を注ぐとの信念のもと、赤羽助産師はフットマッサージを導入しました。「基本にある考えは、妊娠生活における生活の質向上を図ることによって全ての女性が命を育む喜び、産み育てる楽しみを実感することです」と話します。

赤羽洋子助産師国際出産イニシアティブへの申請

国際協力事業への参画を通じてネパールでフットマッサージを実施した経験から、より良いケアを女性に届けたいと願う気持ちは万国共通の想いであることを肌で感じました。

当院では妊娠、出産、産褥と切れ目のないサポートをしています。女性が求めるケアと実際のサポートをすり合わせることが重要です。自分たちのしていることの意味を確認する過程でICIを知り、当院が大切に作り上げてきたことと非常に一致すると素直に感じました。ICIの12ステップに賛同し、ケアの質向上に取り組みたいと考える施設は、助産院から大病院までどなたでも申請できることを知り、私どものような診療所でも申請可能であることも動機となりました。

そしてICIを通じ、他の地域・国で実施されている取り組みを知り、互いに支え合いながら女性と家族へのケア向上に励みたいと考え申請しました。赤羽助産師は「他者からフィードバックを受けることは自分たちのケアの課題を整理する機会となるだけでなく、スタッフのモチベーションの向上やチーム力の向上につながっています」と受け止めています。

菜の花マタニティクリニック院長 鈴木昭久コメント

職員は人手不足の中、奉仕活動や新しい事業への協力を行ってきました。ICIの国際認証は職員の励みや支えになります。より良いケアを提供できるよう、助産師が主体的に活躍できる環境を引き続き整えたいと考えています。

ICI日本事務局 福澤利江子氏コメント

地域の人々のニーズに応えるためにさまざまな母子サービスを提供している菜の花マタニティクリニックが、国内初のICI施設として国際的に認証されたことをとてもうれしく感じています。これからも日本語の情報を増やし、多くの出産施設に参加していただくことで、日本の出産ケアの質をさらに良くするお手伝いができればと存じます。2024年7月から2025年6月まで、米国のNPO団体

AAUW

菜の花マタニティクリニック住所:〒396-0009 長野県伊那市日影380-1

ウェブサイト:

http://nano-mata.jp/

受付時間:9~16時

休診日:日曜、祝祭日

木曜、土曜午後は予約診療のみ 当リリースの詳細について

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000151684.html

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