持続血糖測定を活用したスマートフォンアプリにより糖尿病予備群の体重と血糖値を改善
SOMPOひまわり生命保険株式会社(代表取締役社長CEO:大場 康弘
以下「当社」)、新潟大学大学院医歯学総合研究科血液・内分泌・代謝内科学研究室の北澤勝特任准教授、曽根博仁教授らの研究グループ、シンクヘルス株式会社(代表取締役:野本
祐司)は産学共同研究を行い、持続血糖測定(注1)を活用した新しい2型糖尿病予防のためのスマートフォンアプリを含むプログラムを開発しました。本アプリを使用した保健指導が、2型糖尿病予備群の方の血糖値や体重の改善に有効であることを明らかにしました。今後の2型糖尿病予防対策への活用が期待されます。
本研究成果は2024年3月15日に、国際専門誌「Journal of Clinical Endocrinology &
Metabolism(JCEM)」誌に掲載されました。
【本研究成果のポイント】
●持続測定血糖値と生活習慣との関係を記録でき、それに応じた個別化フィードバックメッセージ機能ならびに糖尿病専門医監修による糖尿病予防教育コンテンツ
を含む2型糖尿病予防のためのスマートフォンアプリを開発しました。
●臨床試験において本スマートフォンアプリの3か月の使用により、約1kgの体重減少が見られ、正常血糖範囲(70~140mg/dl)内に入っている時間が1日に33分増加しました。また、炭水化物摂取量も1日あたり18g減少しました。
1.研究の背景
当社は、お客さまの万が一の備えに加え、毎日の健康を応援する「健康応援企業」の確立をビジョンに掲げ、保険本来の機能(Insurance)に健康をサポートする機能(Healthcare)を加えた「Insurhealth(R)(インシュアヘルス)」を、新たな価値として提供しています。
2型糖尿病予防には、食生活・運動習慣の改善や、肥満者では体重減量が必要であり、そのためには、生活習慣記録と適切なフィードバックと
2型糖尿病に関する正しい知識を持つこと
が重要です。しかし実際には、健康診断などで糖尿病予備群と判定されても、本来行われるべき本格的な糖尿病への移行を予防するための保健指導は、医療者、本人の双方にとって多くの時間と労力を要するため、十分行われていないのが現状です。多くの人が持つスマートフォンのアプリに、糖尿病治療で使用される持続血糖測定や適切な教育コンテンツを組み込むことで、医療者、本人双方の時間と労力を節約しつつ、多くの人を対象とした効率的な2型糖尿病予防対策が可能になると考えられます。
2.研究の概要
本共同研究により、血糖値と生活習慣の関係を記録し、それに基づく個別化フィードバックメッセージ機能、ならびに糖尿病専門医監修による糖尿病予防のための教育コンテンツ
のスマートフォンアプリを含むプログラムを開発しました(図1)。
<図1 スマートフォンアプリの画面>
この2型糖尿病予防のためのスマートフォンアプリのプログラムの有効性を調べるために、3か月間のランダム化比較試験(注2)を行いました。本臨床試験には、糖尿病予備群(HbA1c5.6%~6.4%、空腹時血糖値110mg/dl~125mg/dl)で体重が多め(BMI
23Kg/m2以上)である179名が参加し、半数の方にのみこの新しい2型糖尿病予防・教育アプリを3か月間使用してもらい、使用しなかった残り半数の方と、血糖値、体重、食事摂取量、身体活動量などの改善度を比較しました。
3.研究の成果
本アプリを使用した群では、使用しなかった群と比較して、体重が0.93kg減少し、正常な血糖範囲(70~140mg/dl)に入っている時間が1日あたり33分増加(図2)し、炭水化物摂取量も1日あたり18g減少しました。これらはいずれも統計学的に有意でした。HbA1cがやや高め(5.9%以上)の人では治療効果が高い傾向にありました。また本アプリを使った群では、現行ガイドラインで糖尿病予防に有効とされる2kg以上の体重減少を達成した人が、使用しなかった群と比較して約2倍増加しました。
<図2 体重と血糖値の変化>
4.今後の展開
今回、持続血糖測定と教育コンテンツを組み込んだ新しい2型糖尿病予防のためのスマートフォンアプリを含むプログラムを活用した保健指導が食生活、体重、血糖値を改善させることが明らかになりました。ただし、このアプリの使用が実際に2型糖尿病の発症を予防できることを確認するには、より多くの人を対象にしたより長期の研究が必要です。また、どのような人に特に有効性が高いかなどについても検証が必要です。引き続き本プログラムの改良と実際の予防効果確認のための臨床研究を行っていく予定です。
今後も当社は、お客さまが健康になるための「毎日」に寄り添いお役に立てる存在「健康応援企業」として、新潟大学、シンクヘルス株式会社と協力し、本アプリの改良と実際の予防効果確認のための臨床研究を行ってまいります。
5.研究成果の公表
本研究成果は2024年3月15日に、国際専門誌「Journal of Clinical Endocrinology &
Metabolism(JCEM)」誌に掲載されました。
論文タイトル:Lifestyle Intervention with Smartphone app and isCGM for People at High
Risk of Type 2 Diabetes: Randomized Trial
著者 : Masaru Kitazawa, Yasunaga Takeda, Mariko Hatta, Chika Horikawa, Takaaki
Sato, Taeko Osawa, Masahiro Ishizawa, Hiroshi Suzuki, Yasuhiro Matsubayashi,
Kazuya Fujihara, Takaho Yamada, Hirohito Sone
Doi : 10.1210/clinem/dgad639
【用語解説】
(注1)持続血糖測定
コイン大の血糖測定用センサーを腕などに貼り付けることにより、一日中血糖値を測定します。従来は測定時の一点しか分からなかった血糖値が、本機では食前後の変化なども含め、一日中連続して測定可能です。
(注2)ランダム化比較試験
新しい治療法などの有効性を調べるための研究の方法です。研究参加者を、新しい治療法などを行うグループと従来の治療法を行うグループにくじ引きで分け、両グループ間で改善度などを統計的に比較します。
以上
~本件に関するお問い合わせ先~
新潟大学大学院医歯学総合研究科血液・内分泌・代謝内科学分野
教授 曽根 博仁(そね ひろひと)
TEL:025-368-9026
E-mail:[email protected]
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