サンスター、オーラルフレイルの地域ぐるみの多面的な啓発が住民の口腔保健行動変容を促すことを確認

サンスターグループ(以下、サンスター)は、東京大学高齢社会総合研究機構の飯島勝矢機構長らのグループとの共同研究により、産官学民の協働による特定地域への多面的なオーラルフレイル予防啓発が、地域全体のオーラルフレイル認知や予防意識の向上に貢献し、さらに新たにオーラルフレイルを認識した方の口腔保健行動が改善することを明らかにしました。この研究成果を「日本老年歯科医学会第35回学術大会」(2024年6月28日(金)~30日(日)、於:札幌コンベンションセンター)にて発表されました。

今回のような産官学民が一体となった地域ぐるみの啓発活動は、地域や行政主催のイベントに参加できない方も含めた地域全体に影響を及ぼし、健康行動を促進する効果的なアプローチの一つであると期待されます

◆研究の背景・目的

オーラルフレイルは口腔機能の軽微な衰えが重複した状態であり、全身のフレイルや要介護のリスクを高めるため、早期からの気づきと予防が重要です。また本年4月にオーラルフレイルのステートメントが発出され、国民啓発、多職種協働(地域、行政)の重要性が注目されています。一方で、オーラルフレイルの認知度はまだ十分とは言い難く、軽視されがちであることも課題です。そこで、日常生活を支えるさまざまなステークホルダーを巻き込み、地域ぐるみでオーラルフレイル予防に関する多面的な啓発を実施することで、地域全体のオーラルフレイル認知度、予防意識や健康行動への影響を検証しました。

◆研究概要

神奈川県平塚市にて、日常生活のさまざまな場所でオーラルフレイル啓発の情報発信を実施し、加えてオーラルフレイル予防・フレイル予防の自分事化を目的とした住民主体の「カムカム教室お口元気プラス」を実施しました(図1)。これらの取り組みは行政のみならず専門職(医師会、歯科医師会、薬剤師会)、地域住民、地域の店舗とも連携して実施したほか、サンスターも啓発物の制作やカムカム教室お口元気プラスでのオーラルケアコンテンツ提供などをおこないました(図2)。約半年間の集中啓発の前後で住民の質問票調査を実施し、オーラルフレイル認知や健康行動の変化について質問票を用いて調査しました。

(対象:神奈川県平塚市在住の40歳以上で、集中啓発期間前後の調査に回答した2,346名。事前調査で1,011名がオーラルフレイルを知らないと回答し、そのうち452名が啓発期間中に新たにオーラルフレイルを認知。)

図1. 平塚市内でのオーラルフレイルに関する集中啓発

図1. 平塚市内でのオーラルフレイルに関する集中啓発

図2. サンスター作成のオーラルフレイル啓発物

図2. サンスター作成のオーラルフレイル啓発物

参考)下記ウェブサイトにて一般向けオーラルフレイルリーフレット掲載。(上記は平塚市版)

https://www.club-sunstar-pro.jp/_var/articles/pdf/3346/for_patients_leaflet_oralfrailty_check_202403_20240329112037.pdf

◆研究結果

集中啓発期間の前後で、平塚市内でのオーラルフレイルの認知率は56.7%から73.7%に増加し、認知のきっかけとなった情報源は、「テレビ」「新聞」に加え、今回の集中啓発による情報源である「歯科医院」や「市の広報」、「配布冊子やサンプル」などでの認知も多く見受けられました。また、調査期間中にオーラルフレイルを新たに知った方の約8割がオーラルフレイルやフレイルを予防したい、という意識を持っていました(図3)。

図3. オーラルフレイルを新たに知った方のオーラルフレイルやフレイルの予防意識

図3. オーラルフレイルを新たに知った方のオーラルフレイルやフレイルの予防意識

健康行動の変化としては、オーラルフレイルを新たに知った人は、オーラルフレイルを知らないままの人に比べて、食事面や歯間清掃具の使用など新たな健康行動を開始する方が、有意に増加することが判明しました

(図4)。さらに口腔衛生行動の実施頻度についても調査したところ、オーラルフレイルを知らないままの人に比べてオーラルフレイルを新たに知ることで、歯科定期健診の受診頻度や洗口液や液体ハミガキの使用頻度などが向上し、それぞれの行動が定着化しつつある人が、有意に増加することが判明しました(図5)。

図4. オーラルフレイルを新たに知った方の健康行動の開始状況

図4. オーラルフレイルを新たに知った方の健康行動の開始状況

図5. オーラルフレイルを新たに知った方の口腔衛生行動の定着状況

図5. オーラルフレイルを新たに知った方の口腔衛生行動の定着状況

◆結論

本研究の結果より、産官学民協働による地域への多面的な啓発介入がオーラルフレイルの認知度向上や口腔保健行動の促進に寄与することが判明しました。さらに、地域住民の健康行動や予防意識をあげるためには、行政だけでなく地域のステークホルダーを巻き込んだ啓発活動が効果的であるとともに、理解を深めるイベントや医療専門職との関わりなど、人との交流が重要な要素であることがわかりました。サンスターは、これからも地域と連携したオーラルフレイル啓発のサポートを通じて、オーラルフレイルの認知及び理解を促進し、お口の健康を通じた健康寿命の延伸に貢献していきます。

【研究結果に関する専門家コメント】

東京大学高齢社会総合研究機構 飯島勝矢(いいじま かつや)機構長

オーラルフレイルは、高齢期に生じる複数の課題が重複して顕在化する“口の衰え”であり、早期に気づき対策を行うことにより、機能低下を緩やかにし、さらには改善する可能性がある概念であります。今年4月に、オーラルフレイルの問診による判定方法について、ステートメントとして発表され、住民自身がオーラルフレイルの状態に気づくことが可能となり、その啓発・認知の重要性がより高まっています。地域ぐるみでの多面的な啓発活動により、オーラルフレイルの認知が効果的に高まり、さらに口腔の健康維持につながる行動変容をもたらす、という結果は、オーラルフレイル予防の社会実装に向けての有益な事例の一つになると期待しています。

<学会タイトルと著者>

演題:地域ぐるみの多面的なフレイル予防啓発介入

-オーラルフレイルの認知・理解に与える影響と口腔保健行動変容との関連-

発表者:田子森順子1,2、田中友規1 、佐藤麻美1,3、澁谷奈菜子3、永谷美幸2、池田健太郎2、

溝口奈菜2、楠本奈央2、前田真理子2、飯島勝矢1, 4

1 東京大学高齢社会総合研究機構、2 サンスター株式会社、3 神奈川県平塚市役所、4 東京大学未来ビジョン研究センター

【サンスターグループについて】

サンスターグループは、持株会社サンスターSA(スイス・エトワ)を中心に、オーラルケア、健康食品、化粧品など消費者向けの製品・サービスをグローバルに統括するサンスター・スイスSA(スイス)と、自動車や建築向けの接着剤・シーリング材、オートバイや自動車向け金属加工部品などの産業向け製品・サービスをグローバルに統括するサンスター・シンガポールPte.Ltd.(シンガポール)を中核会社とする企業グループです。

100年mouth100年health

人生100年時代、サンスターが目指すのは、お口の健康を起点とした、全身の健康と豊かな人生。毎日習慣として行う歯みがきなどのオーラルケアは、お口の健康を守り、そして全身の健康を守ることにもつながっています。

100年食べ、100年しゃべり、笑う。一人ひとり、自分らしく輝いた人生、豊かな人生を送るためにも、お口のケアを大切にしていただきたいと考えています。今後もお口の健康を起点としながら全身の健康に寄与する情報・サービス・製品をお届けすることで、人々の健康寿命の延伸に寄与することを目指していきます。