「50万語」を超えて 国語辞典の最高峰 30年ぶりの大改訂始動!『日本国語大辞典 第三版』

初版刊行から60年・小学館110周年となる2032年公開を目指して、改訂をスタート

長きにわたって文化は言葉で記され、国語辞典はそれを読み解く鍵でした。明治・大正時代に、古典世界を見通せる堅牢で信頼できる鍵を求めて松井簡治が日本初の大型国語辞典『大日本国語辞典』を編み、小学館は、戦後、孫の松井栄一とともに新しい日本語を考えるよすがとして『日本国語大辞典』『同

第二版』を作り上げました。

それから二十余年。情報技術と通信手段の高度化は未曾有のテキストコミュニケーション時代をもたらしつつあります。国語辞典は言語の変化・研究の進展に合わせて進化しつづけなければなりません。

私たちは、この時代にふさわしい辞書作りを目指します。どうか“日国”の二度目の新生を、見守ってください。【辞書の情報】『日本国語大辞典 第三版』

2032年完成予定/提供:小学館辞書・事典検索サイト「JapanKnowledge」を通じてデジタル版を提供特設ウェブサイト:

http://shogakukan.co.jp/pr/nikkoku3/

【日本国語大辞典 三つの特色】●日本唯一の大型国語辞典『日本国語大辞典

第二版』は日本最大にして唯一の大型国語辞典です。よく使われる『新選国語辞典』『現代国語例解辞典』など小型辞典の収録語数は5~10万語、『大辞泉』などの中型辞典はおおむね25~30万語が収録されており、一方で本辞書の収録語数は50万を誇ります。※販売中のものに限る。

●用例主義典拠として調べた文献の総数は約3万点。『日本国語大辞典

第二版』では『古事記』『日本書紀』から昭和の文学作品まで幅広く見渡し、100万の用例を採集しました。また文献の成立年(または刊行年)も表示することで、時代とともに移り変わる意味を的確にとらえます。これは『オックスフォード英語辞典』(OED)

など世界の代表的な辞典にも比肩しうる特徴であり、日本語と日本文化の総体がここにあります。●研究者による確かな知識

『日本国語大辞典』では国語学・国文学の専門家にとどまらず、歴史・仏教・漢籍・民俗などの各界の権威、経済・法律などの社会科学、および動物・植物など自然科学の研究者も招き、3000人以上にもおよぶ識者の力を得て40年以上の歳月を費やし、完成しました。

【日本国語大辞典の歴史】1972年 初版(全20巻)刊行

小学館は、松井栄一とともに国語学を牽引する第一線の研究者たちを招き、200名以上もの執筆者を集めて大型国語辞典を編纂。1972年に、収録後数45万語の初版を刊行しました。

2000年 第二版(全13巻+別巻)刊行

初版より今なお日本最大の国語辞典として知られる50万語100万用例の第二版を刊行。収録語数が増えたのに巻数が少なくなっているのは、当時の製本技術の限界に挑戦した結果です。

【第三版 三つの改訂軸】●デジタル版での公開/DX推進編集作業や辞書の利用において、かつてないDXに挑みます

第三版でも同じく数多くの専門家の協力を得て、基礎語、漢籍、方言、中世、近世、近現代、アクセントなど、さまざまな分野の編集部会を設置。日本中の研究者をつなぎ、各分野の情報を刷新します。また、クラウド上でのデータ共有や、編集支援システムの活用、自動組版の仕組みの構築など、新しい技術によって辞書の作り方を大きく変えます。そうして得られた成果は、インターネット(JapanKnowledge)を通じて段階的に公開していく予定です。

●より古く、より新しくより多くの用例を採集し、より新しい研究結果を反映します

第二版の刊行以降、多数の言語資料がデータ化され、さらに多くの用例を採集できるようになりました。日本国内のみならず、世界中の資料とつながることができるようにもなりました。「初出は江戸時代」だった言葉が、室町、鎌倉、平安と時代をさかのぼって存在があきらかになる可能性もあるでしょう。また、研究がすすみ、いままで信じられていた説がくつがえることもあります。さまざまな分野の知見を集約し、適宜最新で確かな研究成果を反映していきます。

●新項目を追加3~5万語の新項目立項を予定

第二版刊行後の言葉の変化を検証し、新たな項目を増補します。また古い言葉でも用例の見つかった場合は立項を検討。さらに、既存の項目も丹念に意味・用法の変遷を追い、必要に応じてその説明を書き換えます。5万語というのは成人の語彙量に相当し、小型辞典一冊にも匹敵しうる項目数です。「30年ぶり」にふさわしい大改訂を目指します。

【第三版編集委員(代表) コメント】

国語の転換点を見据えた新時代の大辞典へ

金水敏(きんすい・さとし)

国語は古代から現代にいたる連続と蓄積の上になりたっているが、いくつかの転換点で大きく相を変えてきたことも事実である。平安時代の仮名文芸の誕生、中世の和漢混淆文化の進展、江戸時代の儒学と町人文化の興隆、明治時代の言文一致の発展等、時代の大きな転換が国語語彙の中にたたみ込まれている。そして今、IT

やAIが大きく展開し、人びとがさまざまな多様性に心を開いていくこの時代は、まさにポスト近代の新たな国語の転換点と捉えられるだろう。『日本国語大辞典』が大きな改訂を迎える意味もそこにあると考えるのである。

プロフィール:

1956年大阪府生。大阪大学大学院名誉教授、放送大学特任教授。日本学士院会員。日本語文法学会会長、日本語学会会長を務める。専門は日本語史、役割語研究。『日本国語大辞典

第二版』の改訂にも関わる。日本語の未来を切り拓く辞典近藤泰弘(こんどう・やすひろ)

日本語の辞書の伝統は古い。平安時代の『倭名類聚抄』から江戸時代の節用集に至るまで、連綿と編纂されてきた。その中で『日本国語大辞典』は、最も信頼できる日本語の基本台帳であり、言葉を扱うすべての人の共通の財産として認められている。第三版では、日本語内部の多様性に、より光を当てることが期待される。さらには、辞書編集への自然言語処理技術の応用や、人工知能やモバイル機器との連携も必要とされている。第三版は日本語の未来を切り拓くものとなるだろう。編纂に携わる者として、可能性に胸を躍らせずにはいられない。

プロフィール:

1955年岐阜県生。青山学院大学名誉教授。博士(文学)。日本語学会会長を務める。専門は日本語文法理論、文法史、コーパス言語学、自然言語処理。『日本国語大辞典

第二版』の改訂にも関わる。【新たな「日本文化の礎」の始動によせて】未来の日本語を作りつづける足場アーサー・ビナード(詩人・翻訳家)

これからも日本語が千代に八千代につづくことを、ぼくは大前提に日々、詩を綴る。ただ、つづく保証はどこにもない。『日本国語大辞典』に分け入ると、この列島の言葉を産み出し、育ててきた力強い書き手たちと、ぼくはつながる。しかも、自分が使いたい単語を通して、先人の輝かしい表現をピンポイントでつかみとれる。用例がどんどん過去へと遡り、新語が増すことによって、ぼくの足場は一層豊かになる。未来の日本語を作りつづける足場だ。

言語発達分析のヒント今井むつみ(言語心理学者・慶應義塾大学教授)

さまざまな実験手法により乳幼児の言語発達や多言語比較の研究をしている私にとって、『日本国語大辞典』は一筋の光をくれる。「ことばの意味」とはなにか、「心の中の辞書」がどういうもので、ヒトはどのようにことばの意味を脳で記憶するか。そしてどう習得していくか。時代ごとの用例で、意味の移り変わりや増えていく意味を明らかにしている『日本国語大辞典』に、言語発達のヒントもある。第三版がどう進化するか楽しみだ。

日本語創作者の砦であり、庇護者でもある島田雅彦(作家・法政大学教授)

私の作家修行は中学時代の「辞書読み」から始まっている。国語辞典は日本語創作者の砦であり、庇護者でもある。誤用や勘違いは手痛いしっぺ返しを食らうので、辞典に相談し、万全の裏取りに努める。また創作家は新語や造語や別の意味をひねり出したりもするので、時に用例の提供者にもなり得る。新語を及び腰で使いながら、死語に郷愁をそそられる者には、古い用例や新語の充実が図られる第三版は必読の書となる。完成が待ち遠しい。

言の葉の芽生えや成長過程を示す俵万智(歌人)

とかく言葉の問題というと、正しいか正しくないかという視点で語られがちだ。けれど言葉は、時代や場所によって変化する。ジャッジしたりマウントとったりするのではなく、楽しく豊かにつかいたい。ジャングルのような言葉の森の案内人としての辞書は、心強い相棒だ。『日本国語大辞典』は、言の葉の意味や用い方だけでなく、その種子の芽生えや成長過程、すなわち最も古い用例や意味の変遷を示してくれるところが素晴らしい。言葉について語り合うなら、そこを踏まえたい。デジタルの強みも加わると聞き、今から楽しみにしている。

短歌や俳句など韻文の用例も豊富穂村弘(歌人)

『日本国語大辞典』は短歌や俳句など韻文の用例も豊富なのが嬉しいです。例えば、うない‐あそび[うなゐ‥] 【髫髪遊】〔名〕子供の遊び。

*竹の里歌〔一九〇四〕〈正岡子規〉明治三三年「たらちねのうなゐ遊びの古雛の紅あせて人老いにけり」

一つの言葉が標本的にではなく、詩歌の中で生きたまま保存されているところに惹かれます。作品の形で読むことによって、言葉の命を感じることができるように思います。

「美術」はいつから「美術」なのか山下裕二(美術史家・明治学院大学教授)

『日本国語大辞典』で、「美術」という項目を引いてみる。すると、もっとも古い明治五年(一八七二)の用例が示されている。そう、江戸時代以前には「美術」という言葉はなかった。明治になってから翻訳語として用いられるようになったことを知る。「日本画」もまたしかり。「洋画」が流入して以降、その対概念として「日本画」という言葉が一般化したのである。『日本国語大辞典』は、そういう言葉の起源を教えてくれる。私は大学の卒論ゼミの学生に、まずはこの辞典を引くように、と長年指導してきた。第三版を期待している。

当リリースの詳細について

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002741.000013640.html

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