南京大虐殺プロパガンダのルーツ、「ベルギー大虐殺」を描いた残虐宣伝不朽の名著『是でも武士か』復刊。解説はジャーナリストの大高未貴氏。
「敵の卑劣な行為を曝露せよ」「中立国の人間に宣伝させよ」「敵国軍人の証言を材料とせよ」。本書はこれらの残虐宣伝の技法を理解するための教科書であり、プロパガンダの効果を減殺させる解毒剤である。
ジェームズ・ディーン主演の映画「エデンの東」の時代設定は、米国が第一次大戦に参戦する前後である。この映画の中で、ドイツ軍の残虐行為が市民に訴えられ、ドイツ系米国人が迫害を受けるシーンが出てくる。
第一次世界大戦中、英国は反独世論を高めるために、世界中で反独宣伝を展開した。米国参戦を促そうとする英国は特に米国での宣伝に力を入れた。「エデンの東」にはその状況が描かれている。
本書『是でも武士か』も、世界的な英国の反独宣伝の一環であり、英国が日本に向けて送り込んだ反独文書である。
全編を通じ、ドイツ軍によるベルギーの女・子供・聖職者等に対する残虐非道の数々が描かれている。『是でも武士か』というタイトルは、武士道精神を有する日本人は、武士道のかけらもないドイツ人をどう見るのか、と問うたものである。
大東亜戦争中、日本の対米謀略放送を指導した池田徳眞(十五代将軍徳川慶喜の孫)は、本書を「残虐宣伝の不朽の名著」と呼んだ。池田は本書を研究し、そこから進んだ英国の宣伝技術とプロパガンダの本質を学んだが、本書によって自身のドイツ人観が一生歪められてしまったという。ラマカースの不気味な風刺画を効果的に配置し、読者にドイツ人への心理的嫌悪感を与えるよう構成された本書の威力は、それほど凄まじいものであった。これらの反独宣伝の製作には、H・G・ウェルズ、アーサー・コナン・ドイル卿、ラドヤード・キップリングなどの著名な小説家、詩人、劇作家、学者らが多数関わっていたのだから、それも当然であろう。この英国の世界的宣伝が大戦の帰趨を決し、ドイツは敗北したとされる。
大成功を収めたこの残虐宣伝の技法は、その後、反日宣伝に利用されることになる。「南京大虐殺」プロパガンダは、中国国民党がその宣伝の技術を取り入れたものである。「レイプ・オブ・ベルギー」という言葉は、「レイプ・オブ・ナンキン」に置き換わり、赤ちゃんを銃剣で串刺しにするドイツ兵は、日本兵に置き換わった。日本は世界の非難を浴び、中国には同情が寄せられた。国民党は宣伝はその目的を十二分に達した。
第二次世界大戦後、GHQは日本人に贖罪意識を植え付け、日本の政治的コントロールを容易にするために、東京裁判の場でこの反日残虐プロパガンダを用いた。さらに国交回復後の共産中国や、韓国(北朝鮮)もそれを受け継いだ。「南京大虐殺」「捕虜虐待」「731部隊」「従軍慰安婦」「徴用工」等の反日宣伝により、日本軍の残虐性は世界に定着することになる。
本書は反日残虐プロパガンダの存在を可視化する上で、極めて貴重な文献であり、そのプロパガンダの効果を減殺させる働きもある。反日残虐プロパガンダの解毒剤としての効果が期待できる。
なお、原書の翻訳者は、民俗学者の柳田国男である。著者の英国人ロバートソン・スコットは日本の農村を研究するため来日していたが、駐日英国大使に反独親英の宣伝活動を依頼された。著者夫妻は当時貴族院書記官長だった柳田国男と親交が厚く、夫人から翻訳者の紹介を依頼された柳田は、匿名を条件に自ら翻訳を引き受けている。
・プロフィール
著者 J・W・ロバートソン・スコット
英国のジャーナリスト兼作家。農村研究を名目に1915年に来日、1916年3月に駐日英国大使ウィリアム・カニンガム・グリーンの要請で日本向けの反独親英宣伝要員となり、プロパガンダ文書である『日本、英国及世界』、『英語と英国気質の研究』、そして本書の著者となった。
画家 ルイ・ラマカース
オランダの風刺画家。ドイツ軍のベルギー侵攻後、新聞紙上でドイツ軍の残虐行為を生々しく描写し、ドイツ人を野蛮人の如く描いた。英国の戦争宣伝局はラマカースに接触、彼の作品を用いて反独プロパガンダの世界的展開を行った。米国では二千を超える新聞数億部に作品が掲載され、反独世論の形成に多大な影響を与えた。彼の作品の普及は、第一次世界大戦における最大のプロパガンダ活動とされる。
・書籍情報
書名:是でも武士か
著者:J・W・ロバートソン・スコット
挿画:ルイ・ラマカース
現代語訳:和中 光次
解説:大高 未貴
仕様:A5判 並製 336ページ
ISBN:978-4-8024-0175-3
発売:2024.04.02
本体:2,200円(税別)
発行:ハート出版
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